多くの商品はお客様の為にあります 第三話
毎週土曜日。
店長の唯一の休日だ。
この日は、バイト同士での業務になる。
相良さんが土曜日がNGなので、山本君と一緒のことがほとんどだ。
彼は、少し身長が低く、細身だ。
陽気で、子供っぽいところが、まだ高校生という感じがする。
俺に仕事を教えてくれた先輩でもあるが、毎回くだらない話にはうんざりさせられていた。
「この前、道路を歩いていたらですね」
調理器具を洗って、塩素液につけ終わった山本君が声をかけてきた。
また、くだらない話が始まった。
「犬が運転席にいたんですよ」
「ほぅ、そんなことがあるのか?」
俺は売れ残った新聞紙をまとめながら応えた。
「犬が運転していると思いますよね」
「話を聞く限り、そう思うな」
「そうですよね」
「俺、びっくりして、腰ぬかしちゃいましたよ」
「それは、驚きすぎだろ」
「まぁ、脚色しすぎましたけど。
驚いたのは事実です」
大げさに言うのも彼の特徴のひとつだ。
「通り過ぎていく車を、、、」
「この出来事は、通過している車の設定だったのか?
それにしては、話長すぎないか?」
「通過していく車を、俺なりに表現しているんですよ。
それで、その車を改めてみてみたんですが、そしたら」
「そしたら、、、?」
「外車でした」
「、、、それで」
「左ハンドルで、女性が運転していました」
「へぇ~、すごいなぁ~」
俺は棒読みで反応してやる。
「何ですかぁ~、その薄い反応は~」
山本君が俺の体を揺すってくる。
今日も山本君のくだらない話に辟易するのだった。