多くの商品はお客様の為にあります 第二話
俺は3日間の研修を終え、平日は店長と二人で業務をすることになった。
清掃・品だしなどの業務の他に、常連さんへの対応も重要な業務なのだ。
顔を覚えるのはもちろんだが、その方に適した対応を求められるのだ。
そんな常連さんの中の1人の女性に俺は困っていた。
「いらっしゃいませ」
その女性は、身長が高く細身で、顔も整っている。
モデルかと見間違うその風貌は、多くの客の注目の的になる。
その美貌に見とれてしまう。
「いかん、レジ中だ」
俺は手にした商品のバーコードを再び読み取り始める。
「754円になります」
目の前のお客さんに気を配りながら、例の女性を気にする。
商品とお釣りを渡し、レジ業務がなくなったので、その女性に注目していたのだ。
しかし、彼女は何も買わずに店を出た。
『何だろう?』
そんな風に思っていると、店長が声をかけてきた。
「彼女も、常連さんだ」
「そうなんですか?」
「それも、少し変わった常連さんだ」
「どんな風に変わっているんですか?」
「完全に相良目当てだな」
「相良さんですか?」
俺はまだ相良さんと会ったことがない。
土曜日はバイト同士での勤務だが、相良さんは土曜日には用事があるのとのことで、俺と山本君が担当している。
「あの女性は、相良じゃないと買わないよ」
「そうなんですか?」
「間違っても、相良と入った時にはあの女性のレジやるなよ」
「分かりました」
俺は右手の拳を突き上げ反応する。
相良さんかぁ、女性を魅了する男性、どんな人なのだろうか?
いつか会ってみたいものだ。