多くの商品はお客様の為にあります 第百二十八話
田舎のコンビニ。
お客はほとんど来ない。
店内には、DJのお姉さんのトークや曲がいつもに増して大きく聞こえる。
音量は変わっていないはずなんだがな。
『まだ2時か。
何するかな』
休憩が終わり、レジ方向に向かっていた時だった。
ガタンっ。
何か、店内のレジとは反対方向のトイレの方で、物音がした。
『山本か?』
そう思った時だった。
「かぁさん……」
俺の後ろの方から、山本が声をかけてきた。
『あれっ、お客さんいたか』
店内の監視カメラを覗いてみると、誰かいるようだ。
レジに行き、店内を見回してみるが、
『あれっ、人の気配はするけど……』
姿が見えないような気がする。
何か寒気がしてきた……
DJの声も心なしか不気味に聞こえる様な気がする……
前もこんなことがあったような気がするが……
山本もレジにやってきた。
こいつも、異様さに気づいたのか、少し顔が青ざめている。
俺たちは顔を見合わせる。
店内を何者かが徘徊している。
そして、
「カゴが!!」
宙を浮いていた。
誰もいないぞ。
「おいっ、どんなイリュージョンだよ」
俺は山本に
「かぁさん……」
俺たちがこそこそ話していると、
ドスンっ
そのカゴは、レジに置かれた。
俺は、恐る恐る、カゴに手を伸ばす。
サプリメント(カルシウム)……
幽霊も、健康に気をつかうんだな。
骨……、あるのかな?
ヨーグルト……
腸の健康は大切だよな。
腸……、調子悪いのかな?
栄養ドリンク……
せいをつけたいのか?
祝儀袋……
何で、祝儀袋?
一体、何があるというんだ?
冠婚葬祭のスピーチ方法……
雑学本?
幽霊の世界も大変なんだな(涙)
泣けてくるぜ。
いつだか分からないが、過去にもこんな事あったような気がする。
俺は、震える手で、商品のスキャンを終えると、どこからともなく、
お金が現れる。
お釣りをテーブルの上に置くと、どこかにおつりと商品が消える。
なってこった。
こんな怪奇現象が目の前で起こるとは……。
想像もしていなかったぞ。