多くの商品はお客様の為にあります 第百十八話
コンビニのバックヤードでは、様々なドラマが繰り広げられている。
前回、俺は、山本にカラオケの話をしたが、その後の山本の追及に
俺は精も根も尽き果てるのだった。
「ありがとうございました」
レジを終え、俺が横を向くと、山本がいて驚いてしまった。
うつろな目で俺を見つめている。
おいおい、その無表情……怖いぞ。
「うぉっ、何だよ」
「……何で、歌海に行ったんですか」
「もう、いいじゃねぇかよ」
俺は、レジを離れ、バックヤードに商品を取りに行った。
「確か、歯ブラシが少なかったよな~」
バックヤードで歯ブラシを探し、店内に戻ろうとと振り向くと……
そこには、誰かが立っていた。
暗いところから明るいところを見ているので、顔が見えない。
しかし、シルエットから誰だか分かった。
「かぁさん……」
「山本……」
「何で、歌海に行ったんですか」
「もういいだろ」
俺は山本の体をはねのけ、店内に戻る。
店内で、歯ブラシを補充しレジに戻ろうと横を見ると
冷めた目で山本が立っていた。
「ほらっ、もういいだろ」
押しのけてレジに戻る。
山本の攻撃は止まらない。
「かぁさん、どうして……」
トイレから出ようとすると、扉の前に立っていたり……
「ねぇ、どうして歌海に行ったの」
レジを空けると山本がいたり……
一晩中、山本の攻撃は続いた。
やっと、勤務時間が終わり、日勤者がやってきた。
よかった~
俺は、ヘトヘトになりながら、バックヤードで着替えていると、
いつもの日曜バイトの女の子が声をかけてきた。
「唐松田さん、ちょっと待ってください」
「えっ」
「白髪が……」
「嘘!!」
彼女は俺の白髪を抜いて見せてくれた。
昨日、白髪何てあったか?
あまりチェックしてなかったが……
もしかして山本の攻撃で白髪ができてしまったか
そうしたら、恐るべし、山本!!
しばらくは、俺も奴をいじるのはやめよう。