多くの商品はお客様の為にあります 第百十六話
コンビニのバックヤードでは数々のドラマが繰り広げられている。
店長とのシフトの討論、何を仕入れるかで論争している店長と奥さん、
そして、バイト同士の恋愛など、様々な出来事が起こっている。
そして、ここでも、そんな一幕が切って落とされようとしていた。
「この前ですね……」
「あぁー、はいはい。
くだらない話始まりました~。
拍手!!」
俺の拍手の音がバックヤードに響いた。
「かぁさんおおげさですよ」
「まんざらでもないじゃんか……」
「えっ、えぇ、まぁ、悪い気分ではないですよね」
山本が頭をかきながら照れる。
「それで、山本、なんの話だ」
「あっ、何でしたっけ?」
「俺は知らんぞ」
「そうだっ。
この前ですね、切符で電車に乗ったんですよ」
「今時、切符かよ」
「調べたら、切符の方が安い区間だったんですよ~」
「そんな事があるのか?」
「あるんですよ。
運賃がちょうど上がる区間だと発生しやすいみたいですね……
まぁ、それで、帰りに切符買うの面倒だったので、先に帰りの分の切符を買って
ポケットに入れておいたんですけど、濡れちゃったんですね」
「おもらししたのか?」
「違いますよ。
ちょうど雨の日で、体ごとずぶぬれになっちゃったんです」
「傘は差してなかったのか」
「さしてましたけど、横からの雨でしたからね。
それで、用事が終わって帰ろうと思ったんですが、さすがにこのまま
改札機に入れられないと思って、ふぅーふぅーしてある程度乾かしたんです」
「駅で、ふぅーふぅーするなよ」
「でも、案の定、改札機で詰まりました」
「迷惑な話だな」
「駅員さん、結構取り出すの大変そうでした」
「結局、その切符はどうなったんだ」
「ある程度原型はとどめていたので、そこにハンコ押してくれて、
改札出るときは、駅員さんに見せました」
「よかったな。
切符無駄にならなくて」
「そうですね。
でも、今後は、切符濡れないようにしようと決心したんです」
「よき心がけだ。
その調子で、店内掃除頑張ってくれ」
「えっ、今日はかぁさんの番じゃ……」
「お前の話で疲れた。
俺は、レジ番しているぞ」
「ズルい!!」
こうして、山本のくだらない話は終わった。
コンビニには幾多のくだらない……失礼、面白い話がある。
皆さんもぜひ、コンビニで働いてみてはいかがだろうか。