多くの商品はお客様の為にあります 第百十四話
俺は、勝木の家で、秋の味覚を堪能していたが……
「そろそろ、腹が……」
「大和、何、言っているんだ。
まだまだ、これからだ」
「次は……」
醤油が少し焦げた香ばしい臭いが、部屋を支配する。
目の前に、夏の土用の丑の日に食べるあれが置かれた。
「秋が旬のうなぎでございます」
勝木が両手を広げ、おおげさに紹介する。
「そっか、土用の丑の日のイメージが強いけど、旬は秋なんだな。
うーん、うまい」
俺はそんな感想を述べ、食べるが、やはり、そろそろお腹が一杯だぞ。
うなぎだけでいいのに、ごはんまでついてきている。
うーん。
その後も……
以下、勝木のコメントとそれに対する俺の感想で省略させて頂く。
「秋が旬のお吸い物、松茸と鱧の椀」
ここで味の薄いものは助かるなぁ。
「それにゴマをかけて……」
ゴマも秋の味覚のひとつか……
「故郷の川に帰ってきた魚をひとつかみ、鮭」
表現がえぐいぞ。
それにしても、鮭の身が柔らかくすぐにほぐれて食感がとてもいいぞ。
旬、最高!!
「リンゴ」
これで、9品目目か
と続いていった。
おいおい、1日で秋の味覚を堪能するのに、こんなに苦労するなんて
思ってもいなかったぞ。