103/145
多くの商品はお客様の為にあります 第百二話
今度は、かつさんがやってきた。
「いらっしゃいませ」
彼女は、時々やってきては、カレーを食べていく。
俺が迂闊にもかつさんに、俺が原付免許を取得したことを
なぜ知っているのかをショートメールをしてしまった。
まぁ、あの日会った似た人のうち、かつさんだけが本物だったというのが
オチだったのだが、その時、ここでバイトしていることを教えたら、
気に入ったのか、定期的に食べにくるようになった。
彼女は、いつも、野菜カレーとホットコーヒーを注文する。
「はい、野菜カレーです。
ごゆっくりどうぞ」
俺は、他のお客さんの注文、レジ、片付けなどをしながら、
かつさんのコーヒーを出すタイミングを確認しながら、
業務をしていたのだが、
『し、視線が……』
かつさんが、何かを請うような目で見てくる。
そんなに見つめても、相良さんの連絡先は教えられませんよ。
さて、そろそろコーヒーを出そうか。
「ホットコーヒーです」
彼女は、俺の目をじっとみつめる。
そんなに見つめると恥ずかしいわ。
結局、かつさんは、俺を見つめて帰っていった。
何か、精神的に疲れたぞ。
もう、早く、バイト終わってくれ。