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合宿最終日

 通用門からぞろぞろと学校のグラウンドに入っていく生徒たちに混じって、ぼくも登校した。門を入ったところで、友人の一人の顔を見たので「おはよう」と挨拶をしたのだけれど、無視された。どうしてだろう。ぼくが昨日休んだことと何か関係があるんだろうか。すこししょんぼりしながら、グラウンドを横切って、校舎ではなく、合宿所に向かった。大広間のような部屋に入ると、数人の生徒たちが、慌ただしく教科書などを持って、授業に行こうとしていた。ぼくは、その合間を縫って、部屋の奥まで行き、壁の曲がり釘に引っ掛けられた鍵を取った。

 鍵は、三個かかっていたが、全て大きさが違ったのですぐに見分けがついた。小さいのがぼくが要るものだった。その鍵を持って、部屋の右奥にある小部屋へと向かった。鍵を開けて中に入ると、一段下がっていて、そこには既にまとめられた、ボストンバッグや紙袋のたぐいが整然と並べられていて、その隙間を身体を斜めにして歩かなければならなかった。合宿はきょうまでなので、今日の授業後、持って帰ることになるのだった。ぼくも荷物をまとめなければならない。奥の方に休憩所があって、古びてくたびれた革製のソファがあり、そこに座ってテレビをつけた。ちょうど、毎週録画してみているアニメをやっていた。それを、ちょっと見てから行こうと思った。ところが見ているうちに、一時間目の終わりの時間に近づいていた。録画してあるから、後から見ればいいものを、ついつい夢中になってみてしまった。あと数分で一時間目が終わる。もう間に合わないなら、二時間目から出ようと思った。

 アニメを見終わって、合宿の部屋に戻ると、当たり前のことながら、もう誰もいなかった。合宿所を出て、そこから渡り廊下を通って校舎に向かった。その途中で、いとこに出くわした。

「これからでかけるんだけど、一緒に来ないか」と誘うので、そのまま駐車場までついて行って、車に乗った。いとこの運転する車で、出かけた。

「村松さんちにお使い物なんだけど、この道で良かったっけ」

 見慣れた道を走っていた。

「合ってるよ」

「このへん詳しいんだね」と、同乗しているいとこの知り合いが言った。

「六年間毎日歩いたからね」

 小学校のときの通学路だった。そうこうしているうちに、いとこが車を止めた。まだ、村松さんの家ではなく、お寺の前だった。

「先に参拝していこう。よく知ってるんなら案内してくれよ」

 その寺も、毎年二年参りに来るところだったのでよく知っていた。まず手前の小殿で、お参りをする。それから、本殿の前の参拝所へと向かう。

「ご本尊はどれだ」

「この奥だよ。でも、ご本尊は秘仏だから見れないよ」

「年に一回くらいは公開するんだろ」

「うん。ぼくも見たことあるよ。でもそのときだって、柵越しに見れるだけだった」

 すのこの上に上がり、そこから上の段に懸垂の要領で登っていった。ぼくが靴を脱ぎ忘れている間にいとこはどんどん進んでいった。ちょっとここをよじ登るのはしんどいなと思って、脇の階段から上がっていくことにした。そっちのほうが早く着くかも知れない。拝殿の中には、古代の衣装をまとった子どもたちがたくさんいて、踊ったり、立ち位置の確認などをしていた。本殿の手前で、いとこと合流することができた。

「今日は子どもミュージカルがあるんだよ」

 ぼくは同じミュージカルの大人版を見たことがあった。

「どんなミュージカルなんだ」

「最初の天皇の即位の話だよ。周りの豪族たちを平らげていくんだ」

「ふーん。そんなものをここでやるのか。不思議な感じがするな」

 確かにその通りだと思った。

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