猫たちのように
どうやら夢の中では何もかも二重になっているようです。
夜、うちの方から外を眺めていると、向かいの角に建つ建物へ、ひとりの少女が入っていったのが見えた。最初はコンクリートの外階段を上がっていったのが見えた。そこに住んでいる少女だと思った。二階まで行くと、そこから内側の階段を上がって行き、三階まで行った。三階は壁がところどころなく、駐車場のようなところに、何台もの大きな箱が有り、それぞれに車輪が付いているようで、いわゆるトレーラーハウスの趣なのだった。その一室に少女の姿が消えた。
私も外に出た。「千と千尋の神隠し」に出てくるような、神様のための料理屋のような屋台に灯が点っていたが、怖くて近寄れずにぐるっと迂回するように歩いた。そうしてたどり着いたのが、知り合いのやっている学習塾の事務室だった。そういえば今夜私はここで臨時に授業をすることになっていた。「手が足りないから手伝ってよ」と言われていたのだ。
空いている事務机の前に座り、時間割表を探した。何時間目に授業をするのかは聞いていたけれど、なんの教科か聞いていなかったからだ。机上に大きめの古封筒があったので、破って近場のゴミ箱に捨てたところ、隣に座っていた教師から注意を受けた。「もったいない。字の書いてないところは切り取ってカードに出来るでしょう」
仕方ないから、ペン差しに入っていたハサミを手に取って、ジョキジョキと切り始めた。
「ここは切りにくいな」
「切りにくいところなんてあるのかな」
「あるんだよ」たぶん、二重に糊付けされている部分なので硬いのだろう。端っこまで来て、封筒の底の部分を切り始めたら、今度は軽い。
「ここは切りやすい」
風景が変わって、野原の土手の上に立っている。丸太の上に、黒糖パンの塊をおいて、それを薄切りにしている。下の道を、ハイキングの客達が歩いていうる。段々にできた畑の主が、彼らを誘っている。観光客たちは喜んでそこへ行き、そこで作物を分けてもらった。それから私たちのところに近づいてきて、私からパンの切れ端をもらいに来る。子供たちが、手のひらいっぱいに持った木苺を、パンの上に置く。私は一瞬嫌だなあと思ったけれど、そのまま放置した。
私は野原に佇んだ。猫たちが上がってきた。その中にうちの猫もいて、「白くなったなあ」と思う。
「普通は茶色くなるんだよ」と誰かが言う。姉か、さっきの少女かわからない。現に茶色くなっている猫もいた。元は三毛猫だったようだ。
「こらから茶色くなるのかなあ」その前に死ぬという可能性は考えていない。
小学生くらいの男の子が、老爺のオムツを替えてやっている。睾丸は白髪だらけだった。私のすぐそばには、少女が横たわっている。私もそれに寄り添うように横たわっているが、もうひとつ性的な気分にならない。ようやく思い立って、彼女の胴回りに手を回したら、少女ではなく、年取った伯母になっている。私は伯母をエスコートして、路地裏の家に連れて行こうとする。そこへ、向こうの辻から馬が走ってきて、曲がり角で一頭目はかろうじて曲がりきるが、二頭目は曲がりきれずに、商店のガラス戸に激突してしまう。さらに三頭目がそこへぶつかって倒れる。
私はスマホで、オリンピック委員会を呼び出して、報告する。
それから駅に行って、特急列車に乗る。出発間際で仕方がないので切符を買わないで、空いている席に座った。それからスマホでチケット予約をしようとするのが、操作がうまくできないで時間がかかってしまう。乗客が増えてきて、いつの間にか若い男が、私と窓との間に細長くなって座っている。




