表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/30

三賢人

玄関のドアが開けっ放しになっていた。私はそのことに気がついて文句を言い始める。

「猫が逃げてしまうではないか」

 すると職人が、「大丈夫だ」と指さした玄関先に、軽乗用車が駐車されていて、そこから紐が伸びて、猫のからだに丸い服のようにつながっていた。夕暮れどき、お手伝いの女性が、そこでなにか片付けをしている。通りかかった近所の人が声をかけてくる。

「ああ、これ購入したんだけど、普通の家では使えないって、ここは何か事業所」

「そうですよ」

「それなら代わりに買ってくれないかしら。三件セットで、二万円ちょっと」

「いきなりは迷惑だよ」と、その人の連れがたしなめる。

「そうかい。ちょっと考えといてくださいね」

 かれらが立ち去ったあと、ドアを閉めようとするが締まらない。ドア側ではなく、ドアを止める側が天井から外れてしまっていて、ゆるゆるになっているのだった。

「なんとかしてよ」と職人にいい、職人が何やら工作していたが、結局治らなかった。そこで職人は二階に上がって、その広々とした片隅にシャッターで閉じたあかずの間があって、その前でひれ伏して「助けたまえ」と懇願した。すると、なかには白衣をつけた三賢人のようなトリオがいて、何やら実験をしたり議論をしたりしているのだった。

「そんな下界のことに関わっている暇はない」と最初渋ったが、そのひとりがなんとか立ち上がって、二階の玄関のちょうど上あたりにやってきて、そこから杖のようなものを付いて、下へ向けて力を放った。

「そこじゃなくて下だから」と私は思ったが、「これで大丈夫」というので、下に降りてみると、確かにゆるゆるだった部分はしっかりとしていた。でもまだ完全に止まっていなかったので、見るとネジが一本抜けていた。そこのところを指摘すると、職人は「ネジならある」といって工具箱の中を探し始めた。


 二階に戻って寝る支度をしていると、お手伝いが何やらバタバタやっていた。加湿器だか空気清浄機だかの位置を取り替えていたのだった。

「前のままでよかったのに」というと、慌てて戻そうとするけれど、よけいにこんがらがって、コンセントから電線が宙にいくつも浮くようだった。私はそれが気に入らなくて、すべて抜いてやった。奥の間の布団の上に、お手伝いの娘がいたので、「娘さんにやってもらいなよ。彼女ならできるから」といって、その場を去った。

 広間では夕食の準備が始まっていた。私が上座に座ると、脇の部屋から議員の男が一人お椀を持ってやってきた。

「これがこの土地のお祝いのもんだから」

 やけに大きな椀で、おそらくこの中に何もかも入っているのだろうと思われた。魚とかならいいけど、練り物だったりするとちょっと嫌だな、と考えながら席に着いた。


 倉庫のようなところで、食料品などの買い物をした。安いものを選んでレジに持っていくと、老人といってもいい男がチェックしてくれた。商品をかごに詰め替えたのを、運んで奥へ行くと、別の店員がレシートを持ってきて「八万円です」という。いや、そんな買ってるはずがないから。八百円ならわかるけど。

 レシートを見ると「土地から」と印字してあって、なにかの打ち間違いらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ