三賢人
玄関のドアが開けっ放しになっていた。私はそのことに気がついて文句を言い始める。
「猫が逃げてしまうではないか」
すると職人が、「大丈夫だ」と指さした玄関先に、軽乗用車が駐車されていて、そこから紐が伸びて、猫のからだに丸い服のようにつながっていた。夕暮れどき、お手伝いの女性が、そこでなにか片付けをしている。通りかかった近所の人が声をかけてくる。
「ああ、これ購入したんだけど、普通の家では使えないって、ここは何か事業所」
「そうですよ」
「それなら代わりに買ってくれないかしら。三件セットで、二万円ちょっと」
「いきなりは迷惑だよ」と、その人の連れがたしなめる。
「そうかい。ちょっと考えといてくださいね」
かれらが立ち去ったあと、ドアを閉めようとするが締まらない。ドア側ではなく、ドアを止める側が天井から外れてしまっていて、ゆるゆるになっているのだった。
「なんとかしてよ」と職人にいい、職人が何やら工作していたが、結局治らなかった。そこで職人は二階に上がって、その広々とした片隅にシャッターで閉じたあかずの間があって、その前でひれ伏して「助けたまえ」と懇願した。すると、なかには白衣をつけた三賢人のようなトリオがいて、何やら実験をしたり議論をしたりしているのだった。
「そんな下界のことに関わっている暇はない」と最初渋ったが、そのひとりがなんとか立ち上がって、二階の玄関のちょうど上あたりにやってきて、そこから杖のようなものを付いて、下へ向けて力を放った。
「そこじゃなくて下だから」と私は思ったが、「これで大丈夫」というので、下に降りてみると、確かにゆるゆるだった部分はしっかりとしていた。でもまだ完全に止まっていなかったので、見るとネジが一本抜けていた。そこのところを指摘すると、職人は「ネジならある」といって工具箱の中を探し始めた。
二階に戻って寝る支度をしていると、お手伝いが何やらバタバタやっていた。加湿器だか空気清浄機だかの位置を取り替えていたのだった。
「前のままでよかったのに」というと、慌てて戻そうとするけれど、よけいにこんがらがって、コンセントから電線が宙にいくつも浮くようだった。私はそれが気に入らなくて、すべて抜いてやった。奥の間の布団の上に、お手伝いの娘がいたので、「娘さんにやってもらいなよ。彼女ならできるから」といって、その場を去った。
広間では夕食の準備が始まっていた。私が上座に座ると、脇の部屋から議員の男が一人お椀を持ってやってきた。
「これがこの土地のお祝いのもんだから」
やけに大きな椀で、おそらくこの中に何もかも入っているのだろうと思われた。魚とかならいいけど、練り物だったりするとちょっと嫌だな、と考えながら席に着いた。
倉庫のようなところで、食料品などの買い物をした。安いものを選んでレジに持っていくと、老人といってもいい男がチェックしてくれた。商品をかごに詰め替えたのを、運んで奥へ行くと、別の店員がレシートを持ってきて「八万円です」という。いや、そんな買ってるはずがないから。八百円ならわかるけど。
レシートを見ると「土地」と印字してあって、なにかの打ち間違いらしい。




