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別館の二階

 班に分かれて、学習させられていた。ひとりが前に出て、教卓の端末に入力するとスクリーンに映し出されたモニターに解答が表示される。田中が前に出てその作業をやっていた。ぼくたちは問題を一所懸命に考えて、田中に指示して入力してもらっていた。ところが、田中が途中で切り上げて、別の画面に別の作業をやり始めた。

「おい何してるんだよ」

「だってこっちもやらなきゃ」

 それは、ビックリマンのようなキャラクターに名前をつけるという課題だった。しかし田中はそれも途中で終わらせて、教壇を降りてしまった。たしかにもうすぐ終業の時刻だった。

 ぼくたいは、解答を見つけるために班の列の右端にあった便器を取り外していた。

「汚れてるなあ」

「洗おうか」

「洗おうと思っていたんだけど、指に怪我をしていて」と、ぼくが言った。「ちょうどいい古い歯ブラシがあるんだけど」

 今使っているのと、それほど古くないものと、もっと古いものの三本が、ぼくの席にはあった。その最初のと二つ目を見比べているうちに、どちらがどちらかわからなくなりそうになったので慌てて、元に戻した。

 そのあいだに、何人かが脇の洗い場に便器を持って行っていた。

「時間ありますか」と、割と地味目の女子生徒がぼくに聞いた。

「もちろんあるよ」

「だったら『デザネイム』のノートを持ってきてくれませんか、わたしの」

「いいけど、なんで」

「まだ写してなかったんで」

「そんなのだれもやってないよ」

「でも、やんなきゃ」

「おい、田中、おまえが消してしまうからだろう。おまえがつけたんだから、覚えてないか」

 ぼくは、脱いだ靴下の置き場に困っていた。洗濯物用のかごが見当たらなかったのだ。

「洗濯物どうしよう」

「持っとけよ。靴下だけなんだろう」

「自分用のかごが見当たらないんだ」

「洗濯ってどこでするんですか」さっきの女子生徒が聴いた。ぼくは彼女のことが好きになっていた。

「一階に洗濯機があるよ」

「別館の廊下のところにね」

「あ、わたしいいです」

「なんで」

「大騒ぎしたときにわたしもいて、出入り禁止のはず」

「そんなのないよ」

「そもそも別館になんて誰もいないことのほうが多い」

「たまに、おれらが飯食ってたりするんだけど」

「きょうは、弁当持ってきてるよ」と、ぼくはリュックっから、コンビニで買ってきた惣菜の類を出して見せた。

「このところ全然飲み会やってないな」

「そうだね」と友人のKが答える。

「今夜やろうか、Kちゃん」

「それがいいね」

「じゃあ、別館の二階で今から飲もう」

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