mags
私が職員室に入っていくと、先生たちが何やら相談をしている。先生たちの喋り方は、甲高っく高圧的で偽善の匂いがする。
「そっちから本当に出られないのか確かめなくてはいけないだろう」
「そうですね」
「そうですかね」
「どっちにしても」
それを尻目に、私は玄関脇の廊下に赴き、非常用のテストボタンを押してみる。そうすると、玄関ドアのシャッターが下り、窓ガラスには横からレバーが出てきて開けられない状態となった。
「やっぱり表からはダメですね」
「じゃあ運動場に出るしかないのか」
「そうでしょう」
廊下にはたくさんの人々が列をなしていて、その中から初老の女性が、入ってきた。
「先生、これを届けに来ました」
私はそれを受け取って確かめてみる。書類封筒で、切手が貼ってあり、K市の消印があった。宛名は校長で、差出人の名前はなく、封筒のメーカーだろうかアルファベット四文字の刻印があった。
「これ」と言って私は、教務主任の先生に手渡した。
「ああ、ありがとう」
そこへ二階から若い男の教師が降りてきて、デスクに向かっている先輩教師のところへやってくる。
「これどうですかね」
「うーん」
彼が見せているのは、入塾試験の答案だった。私が横からそれを覗き込んで、訊ねた。
「中三?」
「そうです」
「ダメだね」
「やっぱそうでっすか」
そう言って彼が二階に戻っていくのへ、少し遅れて私も階段を上がっていった。二回は広いホールのようになっていて、椅子やホワイトボードが雑然と並び、数名の生徒たちがいた。
「どこのテスト問題使ってるの」
デスクの上に置かれたダンボール箱には、まだたくさんのプリントが入っていて、箱には「mags」と印字されていた。聞いたことのない教材会社だな、と思った。
ジャーナリストの女性が迎えに来てくれたので、彼女の車で移動した。すると、ある工場のような建物のロゴが、やはりアルファベット四文字だったが、さっきまでの整然とした活字ではなく、踊り文字でpなのかaなのか判別が難しかった。ピンと来たので、彼女に言った。
「エムアンドエイ・ガスステーション。これだよ。直接文句を言ってやるって言ってたじゃないか」
しかしなぜだか彼女は躊躇って、ぼんやりとしているばかりなのだった。