表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
99/104

♂♀⑬出島暗殺計画

明けましておめでとう。

言いたいことはそれだけだ……。

 夕陽ヶ丘高校の修学旅行を約2週間後の12月3日に控えた芽吹達。行き先は大阪を中心に奈良、京都である。学校が決めた主なメインは、奈良、京都ときたら鹿公園、金閣寺、清水寺などの神社仏閣。そして、ユニバーサルスタジオ・ジャパンがお約束。あと生徒が考えるべきは自主研修だけである。




「という訳で、今日から約2週間、6時間目をホームルームにして、修学旅行の自主研修についていろいろ決めていくよ!ってことで、ここからは学級委員長、あとよろしくね!」


 担任の美城雪花先生が委員長と書記にバトンを渡して、教室の後ろに移動した。


「えー!先生今回超久々の登場じゃん。出番そこだけでいいの?」


「先生にとっては修学旅行中はデスマーチのブラックワークなの。今だけでも楽させてもらうわ」


 頭痛を抑える仕草でそう言う美城先生。


「どういう意味?」


 芽吹は秋人に聞いてみた。


「朝から晩まで、それこそ24時間、俺ら生徒が何か問題起こしてもすぐに対処出来るように監督するのが教師の仕事。気が休まる時間なんて無いって意味」


「ほえぇ~……。先生は旅行気分は味わってられないんだ。仕事なんだね」


 僕は先生に同情の念とエールを送った。


「先生、僕、先生も旅行気分味わえるように先生にも何かお土産買ってあげる!」


 そんな芽吹の慈悲深い心遣いに、美城先生は、まるで極上至福のスイーツを味わうかの様な笑顔でため息を吐いた。


「芽吹ちゃん、あなたのその底無しの純真さは、私には逆に毒だわ」


「ほぇ……。は、はあ……」


「多忙な先生への気遣いは立派だし、有難いが、一つ言っておくぞ」


 芽吹から放たれた慈悲のオーラに軽く毒され身悶えしていたのから一変。キリッと態度を正す美城先生。


「修学旅行は遊びじゃないぞ。あくまで課外授業だからな。帰って来たらレポートを出してもらうからな」


「ええええ、マジかよ!?」


 教室中をブーイングが飛び交う。


「先生、俺先生に縁結びと恋愛成就の御守り買ってあげるから、それでレポートは免除で!」


「却下だ。小野、それは気遣いとは言わない。余計なお世話というやつだ。覚えておけ」


「オーノー!」


 見事速攻で返り討ちに会い、撃沈された男子生徒の駄洒落的なリアクションに、爆笑と失笑が起こる。



 自主研のグループ分けは公平を期すため、色別の付箋のおみくじで決められる。

 1パーティーを5~6人として、クラスの人数と割る。芽吹のいるクラスは26人。1パーティーを5人として割ると五組に分割されて一人が余る計算になる。そしてその一人も色別のおみくじで色分けされるので、一組だけ6人パーティーになる。これで芽吹達のクラスは5組のパーティーに分けられる。

 付箋の色は赤、青、緑、黄色、ピンク。まるで戦隊ヒーローである。


「てことはさぁ、自主研のメンバーって男女混合ってこと?」


「げ、マジで……!?」


 女子陣から僅かに嫌そうな空気が漂い始めた。


「バカな男子と組むの?ちょっと有り得ないかも」


「おいコラ吉澤テメェ、何勝手なこと言ってんだぁ!?」


「人を見下して団体行動の秩序を乱す“輩“が女子の中に若干名と」


「はあ?誰が“輩“ですって!?」


 男女混合パーティーというシステムに対して何やら不穏な空気が……。早速問題発生である。

 面倒くさい時は我感ぜずとばかりに、頬杖をついて寝ようする者や、気配を消す者。委員長はオロオロ。書記は呑気に黒板に落書きをし始めていた。しかも何気に上手い。(ネコバスを呼ぶ時のでっかく口を開けた時のトトロだ)


「バカだ、男子だ、女子だって騒いで、そんなに自分が偉いかな?女子のプライドだか思春期だか知らないけど。いいから兎に角くじ引けば」


 この騒ぎの発端の女子数名をギリリと睨んでそう言い放ったのは、城内要さんだった。彼女は男女の別の観点が他人とは違うということもあってか、男女混合という問題を全く問題視してなかった。

 嫌な沈黙と微かな火花が散る気配。美城先生は敢えて動かず。

 その沈黙を破ったのは、


「そろそろ落ち着かねぇと、委員長と芽吹ちゃんが泣きそうな顔になってんぞ。どうすんだ?」


 出島だった。さすがはムードブレイカー。フザケてる時も真面目な時も、空気を壊せるのはこの男だった。

 それが切っ掛けとなり、美城先生がようやく動いた。


「はいはい。あんまり時間ないんだから、みんな順番にちゃっちゃとくじ引いてって。組分け決まらなかったら居残りだからね!」


 

 組分けを速やかに済ませるため、委員長がくじの箱を持って廊下側の列からみんなの席を回り、くじを引かせて行った。


「俺はぁ……?ホイッ。……青だ!」


「ヨイショっと。……ピンクか」


「……私、緑」


「……青だ。……ってお前とパーティーかよぉ!」


「嫌そうなリアクションすんなコラァ!」


 たった五色なので、テンポ良くメンバーが決まっていく様子は、これから引く人も、引き終わった人もドキドキである。


 そして順番は芽吹へ。


「はい、芽吹ちゃん。引いて下さい」


「よ、よし」


 何色だろう?誰と一緒になるかな?


「ん~……、ん?これ!」


 芽吹が掴んだ付箋の色は……。


「赤だ」


 僕は自分が引いた赤い付箋を見てから、他に赤を引いた人が誰かと、周りを見渡してみた。


「ほぉ!」


 彼女もこちらを見た。無表情だが赤い付箋をヒラヒラと振っていた。


「城内さんと一緒だ。よろしくぅ~!」


 引き続き順番にくじが引かれてゆく。

 芽吹ちゃんと同じグループになろうと興奮する者。また、その希望が叶わず後悔の奇声を上げるを者が続出。或いは、


「ウォッシャアアアアア!!」


「マジかクソっ。なんで寄りによって出島なんだ!?」


「来たぜこれ、俺様時代ぃ!芽吹ちゃんの心のお友は俺しかいねぇべ!」


「てめぇ出島ぁ!」


「何かな、愚民共よ?」


「旅行中せいぜい背中に気を付けろよ」


「京都太秦で首を洗って待っていろ!」


「池田屋事件だっけ?」


「俺は龍馬か!」


「あっ、僕も新撰組やりたい!沖田さん役がやりたいな」


「ウソ、芽吹も暗殺役側!?でも芽吹ちゃんに斬られるならむしろ本望?」


「おい……!」 




 くじ引きによる自主権メンバー決めは無事終わった。

 芽吹ちゃんのパーティは、芽吹、城内要、吉澤唯、出島、府川涼太、藤田真広の6人パーティで決まった。因みに、いつも芽吹と一緒だった秋人は、有馬京弥と一緒になったのだった。




続く……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ