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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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♂♀⑩ 旅のお供はサイヤ人

 むかーしむかし、あるところに、絶世の美女と噂される姫君『かぐや姫』の婿になれることをひたすら信じ、その姫が出したクエストをクリアするため、単身旅に出た男がいた。名を『桃太郎』という。

 心優しく、世間の誰もが認めるイケメンな鬼を探す旅。滅茶苦茶張り切って旅立ったはいいが、今時『鬼』なんて、『地獄先生〇~べ~』か『鬼灯の〇徹』か伝六豆のCMキャラクターでしか見たことが無い存在。もしくは節分の日に家族から豆を投げつけられてる鬼役の可哀想なお父さんぐらいだろう。



 第三幕 #旅のお供はサイヤ人


 鬼がいるという情報も手掛かりも無く、何の当ても無くただ勢いと気分だけで旅を続ける桃太郎。町、村、山、浜辺。いろんな場所で鬼の情報を探して回った。町の人、観光客の外国人、その辺の猫や散歩中の犬。浜辺ではカモメや蟹。山では猿やら猪にも聞いて回ったりした。その内、気になる話が入って来た。

 とある町に、“クセのある訛りで喋るやたらと強い武闘家“がいるという。そこで桃太郎は考えた。鬼を見付けて、それでもし鬼と戦うようなことになったら……。強い仲間がいれば心強い。桃太郎はその“クセのある訛りで喋るやたらと強い武闘家“に会いに行ってみることにした。



「オラを探してるっちゅ~んはオメェかぁ?」


 早速見付かったらしい。確かに訛りのクセが強い。それに髪型のクセも独特すぎる。そしてやたらムキムキだ。これは相当な武闘家なんだろう。


「オメェ、鬼みてぇに強ぇ奴探してんだってな?オラぁ別に鬼じゃねぇけんど、強さなら誰にも負けねぇ自信あっぞ!」


 クセが……、訛りが……強い!


「ま、まず自己紹介させてくれ。俺の名前は桃太郎だ。簡単に言えば鬼退場に向かう旅の途中なんだ。強い仲間を集めてる」


 クセの強さに若干気圧されつつ、まずは冷静に挨拶を求める桃太郎。


「オス。オラ悟空!強ぇ奴と“ててけぇる“んなら喜んで仲間になっぞ!あと強くていい奴はオラ“でぇ好き“だ!」


 あれ……?桃太郎が仲間にする猿ってこっちのサルだっけ?サイヤ人だけど?……にしてもクセすげぇー!“ててけぇる“とか、“でぇ好き“って……、クセが強い。


 こうしてアッサリと最強の旅のお供が出来た桃太郎だったが、悟空はすぐに腹が減るうえに大食らいで、桃太郎の旅費と食費は一瞬で消えたのだった。


 悟空の桁外れな強さを利用して、食料はモンスターハンターよろしく現地調達、その場で実食というサバイバル。


「なんかトリコみてぇだな。こんな桃太郎知らねぇ」


 と、こんがり焼けた肉を骨から引き千切ながら呟く桃太郎だった。


 桃太郎の旅のお供が初っ端から最強のサル。っていうか宇宙一のサイヤ人か……。恐ろしくブッ飛んだおとぎ話だよな。桃太郎もう要らなくない?あとは、犬と雉か……。そんな不安とも期待ともつかない感情を抱えながら旅を続ける桃太郎。



 一面銀白の雪に覆われた平野を進も桃太郎とサイヤ人は、途中、とある看板が目に止まり、首を傾げた。


《おおかみ目撃例多数!注意!》

 その他にも。


《おおかみ男出没!注意!》


「おおかみ男!?なんじゃそりゃ?」 


 更に。

《美少年でも美少女でも、カワイイと思ったらそれがおおかみ男だ!気を付けろ!!》


「何、カワイイだと!?」


 変な看板だと思いほとんど信用も用心もしていなかった様子の桃太郎の表情に変化が現れた。


「美少年で?美少女で。カワイイ、おおかみ男……。カワイイ……」


「どうしたんだ?もしかしてそいつ強ぇんか?だったらオラ、ワァ~クワクして……」


「ケモミミキタアアアアアッ!!」


 出島桃太郎、ここに来てテンション急上昇。


「ウオッ!オメェも戦闘力自由に上げられぇんか!?オラもなんか燃えてきたぞ!」



 そして桃太郎は出会った。罠に掛かって捕まってしまっていることに気付かずに、檻の中で美味しそうにポテチを貪るケモミミな存在に。

 白銀に輝くフワフワの髪。その間からはピョコンと立ったフニフニの耳。大きくてキョロっとした純粋な瞳。可愛らしいプニっとした顔。その小柄な身体。お尻からはモフモフフリフリなしっぽ。何をどう注意しても警戒しても、これは抗えない。


「俺の白銀の天使!めぇ~ぶきちゅあ~ん!」


「へっ!?ちょっ、出島君、それ台本に無いよ!?イヤだっ、ほえーー!」


「させるかぁーー!」


「ちょっ、まっ……ぬべしっ!」


「檻に閉じ込められたか弱い無防備なケモミミ少女にいきなりルパンダイブをかまそうとする不当な不埒者め!風紀委員会の名に置いて貴様を拘束する!今すぐ退場しろ!」


「えっ、ちょ、桃太郎の話はどうすんだよ!?」


「そもそもタイトルがかぐや姫だ。何が旅のお供はサイヤ人だ。馬鹿め!」


「えー?でも台本には……!」


「黙れ!貴様は逮捕だ!」




 ~《劇団内部の不祥事により、一時公演を中断致します。お客様はしばし休憩をお取りください》~



 その後、配役が代わり、本来鬼の役だった秋人が桃太郎に。犬役は変わらず芽吹ちゃん。そしてサルとキジ役二役をミズキちゃんが一手に引き受けることになった。

 ……のだが。


「ところで、桃太郎が退場しに行く鬼ヶ島ってどこにあるの?」


「え……?」


 突然のミズキちゃんからの問に、芽吹の目が真ん丸になった。

 続けて、


「かぐや姫って結局最後どうなるの?」


「おいおい、マジか……?」


 脚本からシナリオ、そして監督もしていたはずのミズキちゃんからまさかの質問。


「て言うか桃太郎とおおかみ男ちゃんがの仲が見るからにラブラブなのはどうなのよ?」


 ジト目で秋人と芽吹を交互に見るミズキちゃん。


「べ、別にそ、そんなにラブラブじゃないもん。いつも通りだもん」


「いや、おいハル!いつも通りってのはボケツだぞ。つーかミズキ、お前のキャスティングだろこれ!」


「ミズキちゃん、かぐや姫はね、月からお迎えに来る人達に、月に連れてちゃうんだよ。だよね?」


 芽吹は念のため秋人や他のみんなに確認を求め、みんな頷いた。


「へぇー。そんなだね。よし。それじゃあ……」


 何かを納得したミズキちゃんは、監督としてみんなに号令を掛け、演劇が再開された。



 可愛すぎるおおかみ男を仲間にした桃太郎。そして、


「バニーガールちゃんでーっす!(涼宮ハルヒバージョン)?」


「なんのつもりだ?」


「う……、ミズキちゃん、目のやり場が……」


「え?かぐや姫の最後はうさぎが月から来るんでしょ?だからうさぎ」


「海月さん、そこは視聴者向けに今話題の『青春ブタ野郎』の桜島麻衣さんで設定した方がいいぞ」 


 突然のミズキちゃんの過激なバニーガール姿に、目のやり場に困る秋人と芽吹。それに真顔で説明をするミズキちゃん。更にそこに、ラノベのトレンドを織り込もうとしてくる

城ノ内要さんだった。


「「月から来るのはうさぎじゃないし、ましてやバニーガールでもない!」」


 秋人と八乙女さんがツッコミを入れる。


 今のミズキちゃんでギター持たせたら、もしかして涼宮ハルヒみたいになんないかな?


 芽吹は芽吹でアニオタ妄想がスパークしていた。

 舞台の上ではおとぎ話が混沌を極めている中、反対に舞台裏の裏方の生徒達は、


「これさぁ、結局……、なんの演劇なんだっけ?」


「本来はかぐや姫だったはず……」


「もうこれ、収拾つかねぇぞ。たぶん……」


 


続く……

 

 





次回は後夜祭です。

今回は内容がかなり混沌と暴走を極めてしまいましたので、次回はごくごく平凡な内容に。出来るかな……?

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