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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
87/104

♂♀①なんで今更……?

芽吹ちゃんに新展開!

まさか遂に芽吹ちゃんが……!?

「秋人、僕男の子に戻っちゃった。どうしよう……」


 病院に駆けつけた秋人に、僕は正直に告白した。

 いつか秋人は言った。

 僕が"元男の女"でも、いつかもし男に戻ったとしても、秋人は僕のことが好きだって。その気持ちは変わらないって。秋人と男同士に戻って恋人関係じゃ無くなっても、秋人はずっと僕の側にいるって。

 秋人はそう僕に言った。言ってくれた。だから……、


 大丈夫だと、僕は勝手にそう安心していた。


「……!」


 男の子の体に戻ったことを告白した芽吹の姿を一瞬驚きの表情で見詰めた秋人。そして次第に冷静さを取り戻してゆく。だがその表情は徐々に変わっていく。

 眉間に皺を寄せ思い詰めたような表情から、何かを諦めたようなどこか冷めたような笑みへ。


「……俺は可愛い女の方のハルが良かったんだけどなぁ」


 えっ……!?


「男に戻っちゃったんなら俺達もう恋人関係は無理だな」


 え、あ、秋人……!?


「前みたいな友達関係もちょっとキツいよな」


 なんでそんな……。


 初めて見た秋人の冷たい表情。今まで考えたこともなかった僕に何の興味も無さそうな態度。


 秋人が僕から離れてっっちゃう……。


 芽吹はあまりのショックと不安と絶望感に体が動かなくなった。


「ハル、悪いけど俺はもうお前とは……」


 ……っ!






「嫌だっ!」

「うぶっ!?」


 そう叫んで必死に秋人に向かって伸ばした手が妙な何かにぶつかった。何か変な呻き声も聞こえた!?



 今僕は自分の部屋のベッドの上にいる。

 母さんの話によると、今日僕は四時間目の終わり直前に気を失ってしまったらしかった。学校から電話を受けた母さんが飛んで来て僕はそのままとりあえず早退となった。


「ごめん父さん。だ、大丈夫?」

「ああ、大丈夫大丈夫。軽い猫パンチみたいなもんだったからね」


 さっき、芽吹がうなされ始めたのを父風吹が心配して見ていたところ、突然芽吹が腕を突き出して飛び起きたものだから、風吹の顔面に張り手を食らわせてしまったのだった。

「貴方の顔面のことはたいした事ないからいいとして……」

「菜花さんひどっ!?」

「それよりも今何よりも重大な問題が起きてるわ」

「……そうだね」


 母菜花の真剣な言葉に風吹も真剣な顔で頷いた。二人とも芽吹を見詰める。


「え……何。僕、何かした?」


 いつもセクハラな言動ばっかりの両親が真剣な表情で僕を見つめてくる。


「芽吹ちゃん、あなた今……」

「な、何……?」

「体が男の子に戻ってることに気付いてる?」

「……?」


 一瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかった。意味を理解すると僕の目と頭は自然と首から下を見ようする。

 僕は自分の体を見下ろした。ここ一年程で少しづつ膨らみが増してきていた胸の二つ丘。(夕夏が羨む程度には大きくなった?)その二つ丘が今は……無い。「なんで?」と考える。次に意識と手が行ったのは髪。うなじから耳の辺りに手をやると、髪はある。というより長いままだった。

 ただ無表情に自分の体の状態を確かめている芽吹に、母菜花は芽吹の机から鏡を持って来て渡してみた。


「見た目は今までの芽吹ちゃんと変わらないわ」

「ああ。超絶的に可愛い」


 芽吹は渡された鏡に自分の顔を写して、両親の言葉に納得した。


 父さんの言葉に対してはなんとも言えないけど……。


 そして、最後にもう一カ所。絶対に確かめなければならない場所がまだ残っている。芽吹は一瞬だけ意識をソコに向け、直ぐに両親の方に顔を向けた。

 ちょっと言いづらいけど、今は一旦部屋から出てってもらわないと。


「あのー、ちょっとだけ……、少しの間だけ……、出てって……、一人にしてくれない?」


 変に勘ぐられても嫌だから、僕は言葉を選びながら控え目に言ってみた。すると、


「ま、まさか芽吹……、よせ。早まるんじゃないぞ!お前を、可愛い可愛い我が子を一人になんかさせるか!父さんと母さんが付いてる。だからっ……イデッ!」

「貴方バカ?察しなさい。あとは芽吹ちゃん自身のデリケートな問題よ。いくら親でも今は私達の出番じゃないわ」


 母さんは取り乱す父さんを軽くひっぱたき、意味有りげな視線を僕に向けながら父さんを引きずって部屋から出ていった。

 さてと……。今僕の身に「何が起きているのか」という問題の答えはなんとなく解ってる。あとは答え合わせだ。今この部屋には僕一人。誰にも見られてない。確認するなら今だ。今しかない。最後の答え合わせの為に履いているスカート越しに恐る恐る股に手を添えてみる。そこに"何か"がある予感?感触?そっ……と手に触れた感触に、本能的及び潜在的な意味では安心感と懐かしさを覚えた。でも……。

 高校入学直前から突然女の子の身体になって今日まで一年半。お風呂もトイレももう流石に慣れました。下着も。小さくても良く伸びる女の子の下着は今ではもはや安心感しかない。下がスースーして気になりまくってたスカートも。み、水着も……。浴衣も。あれから僕はなんだかんだと言いながらも女の子の身体に慣れて来ていた。だから……。


「なんで……?なんで今更……?」


 身体だけが女の子だった訳じゃない。心も同じだった。だから出来た。今の僕には友達以上幼馴染み以上の大事な人が出来た。なのに……。


「なのに今更……。これじゃ……彼女じゃないじゃん……」




 翌日。僕が女体化してしまった当初から事情を知る病院で検査などを受ける為に学校は休むことになった。

 見た目はほとんど変わってないって母さんは言ってるけど、胸と下を見れば明らかに女子の体じゃない。トイレは大丈夫だろうけど、体育の着替えとかは絶対まずい。それに……、秋人と接するのが恐い。今までは、元男の子だったってことがバレるかもとか、女子更衣室とか身体測定とかどうしようかなんて心配してた。でも身体が紛れもなく女子だからそれで問題なかった。今度は逆に男の子の身体であることを隠して女子として過ごさなくちゃいけなくなる訳で。バレたらそれこそ大変なことになる。



♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀





 病院から帰って来た僕は両親の慰めの視線も言葉もそこそこに、逃げるように部屋に向かった。 静かにドアを閉めてふと気付く。今息してなかったかも……?と。

 全身から力を抜くようにボスンッとベッドに座る。


 これからどうしよう……。外見が今までと変わらずで、中身(服の中)が男だなんて、厄介過ぎる。なんでこうなったのかな?

 そうしていろいろなことを考え込んでいる間に外は、太陽が傾き、僅かに夕陽に変わりつつあった。そんな頃だった。



 ピンポーン!


 玄関のインターフォンが鳴り、母菜花がパタパタとスリッパを鳴らしながら応対に向かう。


「はいはーい!どちら様……あらっ!」

「あの、ハルは……具合どうですか?」





続く……

芽吹ちゃんは秋人に真実を告白するのか!?それとも今は秘密にするのか?

厄介な展開にしてしまったものだ。作者も悩んでおります。

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