~おまけ~
お泊まりと言えば……?お風呂シーン?
夕夏お嬢様の顔パスでホテルにチェックイン。夕夏と八乙女さんと僕は女子なので、(うん……、改めて″女子なので″って言うのも何だかなぁ~?)秋人達男子グループとは別の部屋へ。
因みに案内されたのはぶい・あい・ぴぃが泊まれる高級階層だった。
さすがは夕夏お嬢様……。
「芽吹ちゃん、もう一回″お嬢様″って言ったら、寝てる間の芽吹ちゃんを素っ裸にして秋人君に写メ送っちゃうから」
「……ご、ごめんなさい」
夕夏の笑顔が怖い……。
カードキーと同じ番号が書かれた部屋のドアの前で止まった。
「ここが今晩アタシ達が泊まる……」
夕夏がゆっくりとドアを開ける。
「ハーフスイートルームよ!」
「これっ……て」
「ふむ。夕夏の部屋とほぼそのまんまだな」
「だ、だよね」
「ピンポーン!さすが我が友よ。秋奈っちは当然として、芽吹ちゃんはアタシん家まだ一回しか来てないよね」
「うん」
夕夏の問いにポカンとしながら返事をする芽吹。
〔鳴海夕夏の部屋の詳細はシーズン1番外編(全身揉みしだきの刑)をご確認下さい〕
実際の夕夏の部屋と違うところに、今芽吹と八乙女さんは圧倒されていた。それは、海が一望出来る大きな全面窓と広々としたベランダ。まるで旅番組で見たことのあるようなオーシャンビュー。
「こういうの何て言ったっけ?オッパッピーみたいなやつ」
「芽吹ちゃん、オーシャンビューだよ。オッパッピーって何?」
夕夏と違って極々平凡な小市民の僕は、部屋のあちこちを物色したり、リモコンで自動開閉出来るカーテンや、ブラインドっていうやつを物珍しさで遊んでみた。
「ほほう。ふむふむ。これがあの『西部警察』で有名な裕次郎さんのワンシーンですか。チラ……」
「何やってんの芽吹ちゃん?」
ひとしきり部屋を楽しんだところで、
「ねぇねぇ、そろそろさ、夕食前にお風呂に行かない?」
夕夏が言った。
「そうだな。ビーチでは簡単にシャワーを浴びただけだからな。暖かいお風呂でゆっくり休みたいしな」
八乙女さんがちょっと気怠げに長い黒髪を掻き上げた。その何気ない動作に僕はこう思った。
うわぁ~ぉ。八乙女さんセクシー……。シャンプーのCMみたい。異性ならグッと来るよ絶対。ん?僕もグッと来てる?僕は異性?同性?僕の場合は両方かな?
一人勝手に悩み出す芽吹だった。
秋人達男子グループのことは忘れ、お風呂に向かった芽吹達。
前回の時は知る由も無かったことだが、高級階層には天空露天風呂なるものあるらしい。
さっきいた階からエレベーターで更に3階上へ。エレベーターを降りればそこが浴場フロア。右手に女湯。左手に男湯となっていた。
女体化してから一年半。心の方もかなり女の子になって来てはいると思いつつ、お風呂と分かってはいるものの、お互い全裸でという究極に目のやり場に困るこの状況は、未だに慣れない芽吹。しかし今回は幸いなことに、天空露天風呂という非日常的な響きにいつもの恥じらいはほとんど忘れていた。
いつもと違って躊躇いなく服を脱いだ芽吹は、チョロチョロと流れるお湯の音が響く浴室へと入って行った。
シャワーが5つと、5人くらいはゆったり浸かれそうな湯船。そして、ガラス張りのドアから外に出ると、なんとそこにはビーチを見下ろせるジャグジーのお風呂があったのだ。
芽吹達以外のお客さんはいないらしく、貸切同然のフリーダムだった。
ビーチで一度軽くシャワーを浴びただけの体をしっかり洗い、遂に、芽吹は人生初のジャグジーに入ることが出来たのだった。
「秋奈っちは相変わらず魅惑的な体してるよね~ン。ホレホレ、ちょっとおじさんに触らせんしゃい。ドゥフフッ!」
「きゃっ!き、キサマどこを触って、ひゃっ!コラ揉むな馬鹿者。えぇいこの倍返しだ!」
「あっ!ちょっと秋奈っち、アタシソコまで触ってない。ふはんっ!」
「だから倍返しと言ったのだ」
うら若き乙女二人のそんなじゃれ合いを見詰める芽吹は、
ラノベの中ではよく知ってる展開だけど、目の前でこんなリアル百合ユリを見ると……、母さんじゃないけど鼻血が出そう。
そんなことを考え呑気に眺めていたのが油断だった。
「ちょっと秋奈っち、あんたユリっぺでしょ。アタシばっかじゃなくて芽吹ちゃんにもやるべきでしょ!」
「ユリっぺ言うなぁー!」
「んじゃアタシが変わりに」
「へっ、ちょっやめ……、ふにゃぁんっ!」
「……ぅわお。敏感」
「ぅわおじゃないよ。もうバカぁ!」
この一瞬八乙女さんは、芽吹の予想外のあまりにエロい反応に、自制心を保つのに精一杯になったらしいのだが、そのことは誰にも知られることはなかった。
ところで、秋人、有馬京弥、出島太矢の男子グループはどうしているかというと……。
「おい出島、よせって。落ちるって。早くこっちに戻れ。マジで落ちたら死ぬぞ!」
「ぐぬぬぬぅぅ……。すぐ隣に乙女の裸があると知れば命懸けで見に行くのが真の勇者(漢)でござろう。秋人よ」
「いや、マジで止めとけって。八乙女さんに殺されるぞ。あと、ハルの裸見たら俺がお前をぶっ殺す」
「出島、止めとけ。秋人の顔はマジのやつだ。あと夕夏の裸を見たら俺もお前をぶっ殺す。だから言うことを聞け。相棒!」
「京さん……」
そこでようやく出島の動きが止まった。……かに思えたが、
「俺は男ダァァァ!ここは死んでも、秋奈ちゃんのナイスボデーが見たいんダァァァ!」
それがお前の本音かぁぁ!?
秋人と有馬は内心でそうツッコんだ。
と、その直後、
「それが貴様の本音か……。じゃあ私の裸の変わりに地獄を見せてやろう」
そんなセリフと共に、壁を超えて向こうから凄まじい冷気と殺気が押し寄せて来たのである。
今度こそ動き止まった出島。心臓も止まったのかと思えるほどに。
ほんの数秒の後、
「秋奈っち、へいパース!」
夕夏が八乙女さんに何かを投げて寄越した。すると、
「どうしたクソ虫、顔中凄い脂汗だぞ?どれ、私がキレイに洗ってやろう」
その直後。
「ぎゃああ目がぁっ!」
出島は悲鳴を上げた。と同時に目を押さえる為に、捕まっていた壁から手が……。
「目がァァァァァァァァァァ!」
腰にタオル一枚巻いただけの男子校生が一人、この世を去っていった。
後で聞いた話によると、夕夏が八乙女さんに渡したのはスゥスウするメントール入りのシャンプーで、それを八乙女さんは出島の目に直接塗り込んだのだ。
「もう~、京弥君。アタシの裸が見たいなら早く言ってくれれば……」
「別に見たくねぇから」
「なんかひどっ!」
「女湯を覗きたくなるその男心、僕にはよく分かるよ。分かるけど、ダメだよ秋人!」
「いや、俺何にもしてないだろ!?ってかお前の裸ぐらいその気になればいつでも見れるだろ!」
「……!!!!?」
芽吹の表情が固まる。
ボンッ!
「「ええええええ!?」」
一瞬の間……。
芽吹が真っ赤になって爆発した。それと同時に、秋人と芽吹以外のメンバーの驚愕の悲鳴がホテル中に響き渡ったのだった。
終わり
『芽吹と春夏秋冬』全シーン3まで。これにて完結とさせて頂きます。
2年目の文化祭やら修学旅行やらと、まだまだいろいろイベント事はあるんですが、それはまたいつか、気が向いたらということで。
有り難う御座いました。




