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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春α19 あはっ!秋人の終わるの早い

二年目の海水浴ぅ~。

美少女達の水着ぃ~。

読者のご想像におまかせぇ~。

 どうしてこうなった?僕の夏休み。

 夏休みの定番その一。海水浴、水着。

 男の子の時は海パン一丁でも別に当たり前で恥ずかしいなんてことはなかった。でも、いきなり女の子になって、それで生活しなくちゃいけなくて、成り行きで仕方なく人生初の女の子の水着を着ることになって……。こんな下着同然のいろいろピチピチで、ヒタヒタペタペタ肌くっつけてくる夕夏とか夕夏とか夕夏とかカカカカカ……!お風呂で女の子になった自分の体洗うより恥ずかし……いや、同じかな?とにかく今僕はみんなと海水浴に来ていますっ!



 前回の話のラストを振り返ってみよう。

 渚ちゃんが秋人に出したとある条件。


「私と私の友達と海水浴に付き合ってくれること」

 だった。因みに、デートというシチュエーションではなく、あくまで友達の関係としてだった。この条件を呑んでくれれば、秋人は彼女のお婿さん候補からは外されるという話だった。

 そしてその日の夜。この話を聞いた夕夏は待ってましたとばかりの張り切りテンションで、即翌日の買い物の話をし始めたのである。


「ま、また新しい水着買いに行くの!?去年着たやつで充分だと思うんだけど?」

「あんたバカぁ?新しいカワイイ水着を着て、好きな男子のスケベ面をイジリ倒すのが楽しいんじゃない!」

「なんで急にアスカ?ってか何ですかそのドSな理由は!?ち、痴女だ!やっぱり夕夏は変態さんだ!」

「ち、痴女とは失礼な!そんなこと言って、芽吹ちゃんこそ、今内心で秋人君のリアクション妄想してたでしょ?」

「にゅっ……!しゅっ、してないしぃ~」

「今噛んだ。″しゅっ″って噛んだ。電話越しでも動揺丸分かりじゃん」


 回想はここまでにして――場面は足下の砂がアッチッチなビーチへ――



 夕夏と八乙女さんに何だかんだでうまく乗せられて、しかもお金持ち夕夏お嬢様のポケットマネーで強引に″奢ってもらう″?形で手に入れてしまったまさかのビキニ。しかも……ヒモのやつ。飾りじゃないやつ。もし解けたりしたらどうすんの!?

 てことで、僕は万が一への対策と、いろんな意味で耐性が無いので……。


「そろそろいい加減、春風芽吹先輩もパラソルの下から出て海水浴楽しんだ方がいいですよー!」

 意外とシンプルにブルーで統一された普通のビキニで、連れてきた友達と楽しそうにビーチバレーをしている渚ちゃん。

 そのフルネームで呼ぶのなんか馴れないんだけど。


「あのー……、ほら僕ビキニとか似合ってないし、いろいろお見苦しいだろうし……」

 僕の本心としては、口に出しては言えないけど、秋人の反応が見てみたいのもあるし、か、可愛いと言われたいのもちょっとあるわけで。で、でもほんのちょっとだけだから。ホントにマジで可愛いとか言われたら海に沈没したくなるから。でも何よりこの格好をみんなや周囲の知らない人達に見られる恥ずかしさの方が大きいわけですよ。

 今更だとか思われるかもしれないですけど、″元男の子″の僕にとって、みんなの前で″女の子″の格好をするのはそれはそれはもう並大抵の羞恥と勇気じゃないんです。

 ところが、そんな芽吹の複雑な心情などお構いなしに絡んで来るのはこの二人。


「夕夏がコーディネートした水着なんて在り来たりでたかがしれてんだろうけど……」

「ちょっとバカデジ、何よそれぇ!」

「しかーっし!そんな在り来たりコーデでも芽吹ちゃんが着ればたちまちみんなの予想の斜め上をゆくトップモデル級のビジュアルでぶぁっ……!」

 突然出島君が顔面から砂に突っ込んだ。


「フナムシが!芽吹ちゃんの半径10メートル以内に近付くな。キサマは黙って私らが使うバナナボートと、イルカさんボートを早く膨らませておけ」

「は、はい……。よろこん……で。……」

 八乙女さんに引きずられていく出島君。顔面が砂に擦れてるけど痛くないのかな?

 出島君と八乙女さんが去った後。夕夏が「ちょっと休憩~」と言って僕の横に座った。夕夏を見てふと思った。


「去年よりなんか大人っぽくなった……?」

 と。瞬間、声に出ていたと思い、思わず口元を抑えたけど、


「恋する乙女の身体は恋愛ホルモンによって男を惹きつける身体に成長するんだって」

「恋愛ホルモン……」

「『ホンマでっかTV』でそんなこと言ってたよ」

「へ、へぇ~……」


 恋する乙女って、僕はそんな乙女なんて綺麗な柄じゃないし。

 そう思いつつチラリと自分の体を覗いてみた芽吹。

 秋人から見て今の僕の格好ってどう見えてるだろう?

 隣に座る夕夏と、出島君に強制労働を強いる八乙女さんの堂々たる水着姿を眺めてから、秋人の姿を探す芽吹。ところが、


 あれ、秋人が……いない?と思ったら、


「ダァー、お前らもうやめろー!重いってぇ。渚ちゃん頼むもうやめて下さいィィ!」


 僕が気付かないうちに秋人は渚ちゃん達後輩女子達に、山のように砂をかけられて頭以外を砂に埋められていた。


「ッニャァァァ、渚ちゃん秋人になんてことしてんのォ!?」

 僕は飛び上がって秋人の側まで駆け寄った。


「このイケメン先輩は、ちょっと親切にしただけで女を妊娠させられる恐ろしい女っタラシです。野放しには出来ません!」

 渚ちゃんが憤然と訴える。それを聞いた芽吹は、


「えっ、そうだったの秋人!?」

「んな訳あるかっ!」



 砂の持つ熱と重みのせいでちょっと本気で危なかった秋人をみんなで助け出した後、夕夏と八乙女さんに本気で叱られてしまった渚ちゃんとその友達。

 渚ちゃん曰わく、

「美少女幼なじみという絶対的ヒロインをライバルにして当たり前のように敗北した悔しさからやってしまった」らしい。




 渚ちゃん達は叱られて凹み、叱った夕夏と八乙女さんもちょっと疲れた様子。秋人はグッタリ。出島君もバナナボートとイルカさんボート2つを膨らませてもうフラフラ。一応元気なのは僕と有馬君ぐらいだった。



「休憩ついでにその辺のお店とか見て回りませんか?」

「あ、そう言えばすぐそこにバナナシェイクがオススメって旗立ててるお店がありました!」

 

 渚ちゃん達後輩女子のそんな提案に、


「シェイクいいな」

「昼も近いし、そろそろひと休みにしましょ」

「だな」

「僕シェイクって飲んだことない。飲んでみたいなぁ」

「芽吹ちゃんマジ!?シェイク処女だ……!」

 出島の大失言だった。この瞬間。


「貴様という奴は……」

「出島君?」

「先輩、ゲス」

「最低ですね」


【死視抜魂】

 冷気と死の波動を伴った視線のみで対象者を死に至らしめる技。これを喰らった出島はこの後夏休みの半分を、生ける屍として過ごすことに……。




 海の家で昼食を取り、午後は出島君が苦労して膨らませたイルカさんやバナナボートで遊んだりした。因みにイルカさんボートは20分ぐらいで誰も使わなくなってた。誰が乗ってもすぐに転覆しちゃうから。あと出島君はずっと砂で何か作ってたなぁ。なんかブツブツ呟いて。


「これは夕夏の。こっちは芽吹ちゃんかな?そんでこっちが八乙女さんのおっぱ……っ」

「やめんかクソ虫がっ!」



 ジリジリと暑かった太陽が綺麗なオレンジ色の夕陽に変わる頃。まだ中学生の渚ちゃん達はそろそろ家に帰らなければいけないため、僕達とはここで解散することになった。

 ――その後。


「みんな去年のこと覚えてる?」

 みんな私服に着替え終わり、もう後は帰るだけという雰囲気になっていたところで、夕夏が言った。

 去年は確かホテルに泊まったんだよね。夕夏ん家が経営してるって言うビーチ近くのホテルに。

 そして今回も。今日芽吹達が来ているこのビーチは去年と同じビーチ。そして夕夏お嬢様がいてお泊まりとなれば当然泊まるホテルも同じだろう。

「え、もしかして今回もあのホテルで?」

「一応聞くけど、宿泊費とかって……?」

「とぉぉぉっぜん、全額アタシの顔パスでっ!」

 腰に手を当てて大きく胸を張るドヤ顔の夕夏。

 一瞬どうしようかとお互いに顔を見合わせた僕と秋人の横で一人。


「ヨッシャァァ。芽吹ちゃんとお泊まりだァ!ってことは、芽吹ちゃんと混浴ダァァッ!」

「えぇぇっ!?ちょっと待って出島君、混浴はダメだよ!」

「出島はもう引っ込め!」

「あぶぇっ!出島なのに……」

「お前も真に受けるなよハル」

「へ!?あっ、うん」




 言葉通り、夕夏お嬢様の当然のような顔パスでホテルにチェックイン出来た僕達。チェックイン直前、いつの間にか八乙女さんがメイド服に着替えて夕夏の侍女みたいに現れたのにはちょっとビックリしたり、カッコ可愛いと思ったり。


「にゃふぁ~!八乙女さんカッコカワイイ!

「っっ……!へ、変なん誉め方は……。出来ればどっちかに……」

「カワイイ!」

 かぶせ気味に即答。すると八乙女さんの顔はみるみる赤くなり、


「っっ……!あ、ありがとう」

 八乙女さんがめちゃくちゃ可愛くデレた。その後ろで壊れて暴走寸前の出島君を必死に押さえている有馬君。


「ウオォーー、八乙女さんがぁ、秋奈ちゃんがデレたぁぁぁ!離せ京さん、俺は今猛烈に感動しているんだぁぁぁ!」

「分かったって!分かったからお前は八乙女さんに触るな!」


 なんかラノベみたいで楽しいなぁ~。

 と、呑気に思う芽吹だった。




 みんなそれぞれお風呂にも入り、(少々事件は起きたが)その後みんなで一つの部屋に集まり、夕夏お嬢様の顔パスを使って人生初のルームサービスで食事をした芽吹達。


 なんかいいなぁ、こういうの。修学旅行みたいで。まあ、修学旅行の宿泊でルームサービスは絶対有り得ないだろうけど。

 海水浴の疲れと満腹感でダラダラのんびりくつろいでいるみんなを眺めながら、幸せな日常を楽しむ芽吹。

 そんな時、芽吹の携帯の着信音が響いた。


「それ、サマーウォーズか?なんか忙しないし、懐かしいな」

「一瞬ビックリするけどなんかテンション上がるでしょ。……はい、もしもし芽吹です」


 電話に出ると、


〈もしもし、こちら海月冬耶ですが〉




 ………………………



 今日の海水浴には参加出来なかった海月ちゃんからの電話の内容は……。


「夜のビーチで花火なんて素敵過ぎるよ海月ちゃん!わざわざ花火も買って来てくれるなんて」

「そんな誉めすぎですって。私としてもみんなとの海水浴に参加したかったんですけど、どうしても時間がなくて。せめて何かしたいなと思って急遽花火を」


 まん丸満月とまではいかいまでも、藍色の夜空にぽっかりと浮かぶ月明かりが海と地上を優しく静かに照らし、空と海からプラチナ色の光が幻想的に広がっていた。その月明かりの下。


「海月ちゃんナイス!」

「月明かりの下で花火とは、神秘的でなかなかいいな」

 夕夏は有馬君と小さく噴射する手持ち花火で火を移し合って、誰が見てもラブラブな雰囲気だね。

 出島君はちょっと離れたところで一人、手持ちの打ち上げ花火やら噴火系で派手にはしゃいでいた。


「手持ちシャトル6本持ちぃぃ、着火ぁぁっ!」

 片手に3本づつ持った細い筒状の手持ち花火を太い円柱状の噴火系で一気に着火。更に、


「芽吹ちゃん、海月ちゃん、秋人、残り3つも着火頼むぜ!」

「火とんの術!」

「だってばよ!」

「お前ら二人してナ○トかよ」

 もう3つの噴火系花火にも着火。


 バシュン!バシュン!

 ゴシャアアア!パチパチパチ!


「ヒャッホー!出島君スゴイ。なんかウルトラソー!って感じだね」

「Bzのライブかよ」


 海月ちゃんが買ってきてくれたいろんな花火で、みんな思い思いに楽しんでいた。


「出島、お前一人で一気にやり過ぎだぞ」

「あっ、悪い。あとどれ残ってる?」

 僕と海月ちゃんで使い終わったゴミをまとめて、秋人が残りの花火を確認していた。


「これでラストっぽいな」

 月明かりに照らされたその花火のシルエットは……。




「やっぱりシメの花火は」

 有馬君。

「これだよね」

 夕夏。

「みんなで輪になってさ」

 僕。

「しゃがんで静かに」

 秋人。

「先っちょチリチリ線香花火」

 海月ちゃん。

「いやいや、シメっつったらやっぱドカンとデカイやつだろ?」

 出島君。

「それを一人で派手にやってしまったのは貴様だろうが。このアホ虫が!」

 八乙女さん。


 みんなでこじんまりと静かに囲んでやる線香花火は、ジュッと落ちてしまっても全然寂しくなかった。


「げっ、もう落ちた!」

「あはっ!秋人の終わるの早い」

「マジか。ハルの方が先に火着いてたのに」

「秋人と違って僕は普段の行いが良いからじゃない?」

「補習授業喰らってるお前が?」

「うぐぅぅ……。秋人のアホ!夏休みの宿題でこき使ってやるぅ!」

「何だそりゃ!ってか、宿題手伝わせる気満々かよ!?」

「宿題手伝わないと今度の夏祭り、浴衣着てやんないぞ!」

「うっ……、そ、それはなしだろハル」


 バカップルのこの可愛らしいやり取りに、もう線香花火そっちのけで笑うみんなの笑い声が、月明かりに満ちた夜空に吸い込まれていった。




「祭りの日、チョコバナナとかたこ焼きとか、何でも奢るから。だから浴衣を頼む!」


 そこまでお願いされるのもなんか恥ずかしいんですけど……。


「そ、そんなに僕の浴衣……見たいの?」

「……お、おう」

「じゃあ着る。ってか、食べ物とか奢りだからとかじゃないからね!」


 秋人の喜ぶ顔が見たいから。……なんちゃって!






…完

これにて今シーズン本編ラスト終了で~っす!

公共の夜のビーチで未成年だけで花火ってどうなの?

良い子は真似しちゃいけないよ。

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