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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春α17 俺はハル以外の女に興味ねぇよ

 随分時間が経ってしまいましたが、ようやく投稿出来ました。

「芽吹ぃー、ちゃんと日焼け止め塗ったの?」

「塗ったよ」

「首筋とかにも忘れてない?大丈夫?」

「大丈夫だってば」

「リップグロスは?」

「学校行くのにそんなんいらないでしょ!」

「あら、登校中に秋人くんとベタベタチュパチュパしないの!?ダメじゃない!」

「いや……『常識でしょ!?』みたいな風に言ってるけど、それダメでしょ。主に親の立場的意味で。朝から何言ってんの母さん!?」


 秋人とのそういうのを一瞬でも想像してしまった僕は、顔が沸騰しそうになった。今母さんに顔を見られたら嫌だから、僕はさっさと玄関を出ることにした。

 後ろでにドアを閉めて、大きくため息を吐いた芽吹。


 全くもうぉ~……。


 母さんは何でああいうセクハラ発言を躊躇いも無く……。

 母菜花の卑猥な言動に憤慨の湯気を上げているように見える芽吹だが、実際は頭の中では秋人に優しく抱き寄せられ、頭を撫でられる様子を想像して別の湯気を上げていたのだった。

 玄関の前でにへらぁ~とトロけ顔になる芽吹。と、丁度そこへ、


「おやおや?茹だるような暑さに思わず猫背になってしまいそうな夏の日差しの下で、茹だるどころかもはやトロけそうになっている美少女が一人いるではありませんか」

「へ……?はっ、海月ちゃんっ!?」


 突然の海月冬耶の出現とトロけ顔を見られてしまった焦りからか、


「び、美少女なんて言われたって嬉しくなんかねぇぞ。こ、コノヤロがぁ!」


 は、は、恥ずかしいぃぃ~……。余計に尚一層恥ずかしいんですけどぉ~!

 恥ずかしさを誤魔化そうとしたが、逆に自ら大火傷を負ってしまった芽吹であった。




 夏休みの学校というのは普段の雰囲気とは一味違う気がするのだ。勿論それは生徒の登校数の影響が大きいだろう。あともう一つは……、


「スポーツ万能な男子はどこへ行っても光ってみえますねぇ」


 校門から昇降口までの道の途中。手前にサッカー部のグランドがあって、今サッカー部が複数のグループに別れて様々なトレーニングをしていた。

 それを眺める僕と海月ちゃん。


「あ、あそこにいるの出島君と有馬君だ!」


「出島くーん、有馬くーんファイトー!」

 と、言うつもりだったんだけど、ほんのちょっと手を上げた瞬間、


「ウッヒョオー。めぇぶきちゅあんおっはよぉー!」


 ズバババーーン!


 リフティングの最中だった出島君が僕に気付いて、もうダッシュで駆け寄って来たのである。その際、適当に蹴り飛ばしたボールがトレーニング中だった他の部員達をボーリングのピンよろしく跳ね飛ばしていた。

周囲から悲鳴と非難の怒号が飛んでくる中、出島君は、


「部活が終わったら一緒にジェラート食べに行こうぜぇーい!ムチュゥ~」

 一切気にする風は無く、タコさんマウスで近寄って来た。悲鳴を上げる芽吹。そこへボールが一つ。ポーンと飛んで来たのだ。

 それを見上げた芽吹。


「芽吹ちゃん、ジャンプアタックです」

 横で海月ちゃんがそう呟いたので何となく言われた通りに動いてみた。

 ジャンプからの振りかぶって……、アタァック!


「ていっ!」


 バシンッ!


「おぶっ!」


 見事出島の顔面に直撃した。しかし同時に、


「にぎゃっ!?」


 出島の顔面でバウンドしたボールはなんということか芽吹の顔面に跳ね返り、芽吹はまさかの自滅であった。



 補習授業二時間目の終わり。

 ジュースを買いに自販機コーナー来ていた芽吹。


「海月ちゃんは紅茶家伝で、城野内さんがおしるこっと。僕は何にしようかなぁ~っと」


 二人分を先に購入し、自分の分で何を飲むか迷っていた。そんな時だった。


 自販機コーナーの前を通る二人の男子と目があった。ジャージに練習用のゼッケンを付けた、多分バスケ部かな?一人は名前は知らないけど多分三年生だろうか。そしてもう片方は……、


「お?ようハル!」

「あれ、秋人!?」


 一瞬だけ間が開いた。


「さっすが幼馴染み。絆が深いねぇ。バッタリ会うのは必然的?」

「いやいや先輩、俺達同じ学校の生徒ッスから。そんな必然も何も無いですって」


 茶化す先輩に苦笑いでツッコむ秋人。

 二人をよく見ると、秋人が先輩の肩を借りて右足だけ庇って立っていることに気付いた。


「えっ、秋人怪我してるの!?」

「あ?あぁ、ちょっとな。でも全然大した怪我じゃないねぇから」

 口で言ってる割にそんなに軽いようには見えない。


 後で先輩から聞いたことだけど、どの部活にも入っていない秋人だけど(僕もね)、運動神経が抜群に良いのを買われて、夏休みの練習時限定で助っ人に呼ばれていたらしかった。因みに今日はバスケ部らしい。日替わりで他の部にも行くらしい。



「心配だから僕も保健室着いてく。僕も肩貸すから。さあ行こう秋人。先輩」

「大丈夫だっつーの!ってかお前の身長だと逆に歩きずらいって」


 先輩の前だからか、それとも怪我をしたのが恥ずかしいのかな?秋人は断るけど、僕は何だかんだと理由を付けてついて行くことにした。


「じゃあ保健室のドアとか開けるからさ」



 保健医不在の保健室にて―


 痛めた足を庇うようにとりあえずベッドに座った秋人。先輩は部活に戻ると言いながら変な気を使って出て行ってしまった。


「じゃあ俺は行くわ。悪いね春風さん。大事な彼に怪我させちまって。秋人、カワイイナースちゃんとよろしくやれよっ!」

「先輩、言い方がなんか卑猥ッス」

「″カワイイナースちゃん″って、今時そこは看護士では?」

「ツッコむ所そこかよ!」



 夏休みに入って三日目から補習が始まった芽吹。そして秋人は夏休み初日からスポーツ部の助っ人に呼ばれていた。

 あの日、芽吹が……いや、海月冬耶が秋人に提案した『吾妻川渚と試しに付き合ってみる』という話。その後も芽吹が直接提案してみたが、秋人は、


「そんなの試しだろうが冗談でも無しだ。誠実じゃない。ハル、お前がそれを本気に言ってるんだったら……」

 そこで深く息を吸う秋人。沈黙の中で深い溜め息が漏れた。


「恋人関係は解消だな。俺はハル以外の″女″に興味ねぇよ」


 静かだったけど、その声と言葉には深刻さと憤りが含まれていた。長い付き合いの芽吹でも、こんな秋人は見たことがなかった。それは芽吹にとってとてもショックだった。だが同時に予想出来た反応でもあった。秋人の方が余程ショックなはず。お互い好きでいつだっていつも一緒だった相手から、「たまには離れよう」。「他の人とでもうまくやってよ」と言われたようなものなのだ。芽吹にはそんなつもりはなかった。しかし、


 ″コンビ解散″

 もっと極端に言うと

 ″別居宣告″


 相方。パートナーは芽吹以外には有り得ないと考える秋人にとってはそういうレベルの話だったのである。

 二人だけの保健室に思い沈黙が流れる。久し振りの会話だった。先輩をクッション代わりしていたおかげでなんとなくいつも通りに接していた二人だったが……。



 その頃……。


「飲み物を買いに行ったっきり帰って来ないとは、初めてのお使いじゃあるまいし。芽吹ちゃんはいったいどこまで飲み物を買いにいったんでしょう?」


 既に休憩時間は過ぎ、補習授業の続きが始まってしまっている時間。それなのに帰ってこない芽吹を探して校内を歩いているのは海月冬耶である。

 一階、グランド側の廊下から窓の外を見た海月は何か気付き、そして、

「今日は久々に春風芽吹のワタワタした可愛い表情が見れる予感かのぉ?」

 欲しいおもちゃが手に入ると確信した時の子供のごとく、肩を踊らせる海月冬耶だった。





「私の未来の旦那様は何処かしら?グランドにはいなかったみたいだけど、体育館かな?」






続く…

 あと2話で、このシーズンを以て完結させる予定です。ここらで予告しておきます。どういう展開になるのか、作者自身全くプロットが出来ていません。

 未計画!行き当たりばったり!気分次第!

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