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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春α16 え、僕メインヒロインだったの!?

 ゲストキャラストーリー!ゲストキャラ吾妻川渚ちゃんは左サイドテールの小学5年生です。女子から見れば小学生。男子から見るともうチョイ上?不思議な子ですね。僕も分かりません。

 吾妻川渚あづまがわなぎさちゃんという女の子が、秋人のことを「私の将来の旦那様なんだから!」と、僕に敵意剥き出しで言い放って来た図書館でのあの理不尽な事件から一週間が過ぎていた。

 あの日の翌日から学校はテスト準備期間に入った。部活動も委員会活動も、放課後校内にいてはいけない期間。先生方が僕達のために頑張って期末テストの問題用紙を作成している期間。

 生徒達はホームルームの終わりと同時に学校から勢いよく吐き出される。真っ直ぐ家に帰ってテスト勉強をしようという人や、誰かの家に集まって勉強会をしようと考えているグループ。余裕なのか或いは開き直りか、早速今から遊びに行く約束を交わす者もいる。

 そんな中芽吹達はというと……?


「今からアタシんちで勉強会しませんか?」

 夕夏だ。

 夕夏の家は豪華ホテルとビーチ、その他幾つかの宿泊施設を運営しているお金持ちの家なのだ。外観は純和風の豪邸。僕の第一印象は「極道屋敷!」だった。でもそれを言うと夕夏の部下のヤクザさんが日本刀を持って現れるのだ。


「アタシんちにそんな恐い部下いないっつーの!」

 あと、八乙女さんがとある事情て夕夏の家に住み込みでメイド業をやってるって事はここだけの話だからね。内緒だよ。Top Secret!


「ハルがまあまあな発音で英語を喋った……!?こりゃ今に夕立が来るぞ」

「こら秋人、高校二年生の僕をなめるなぁ!」

 二人は仲良く鬼ごっこ。それを見守るように優しく見詰めていた八乙女さん。


「芽吹ちゃんの成長ぶりはやはり目覚ましいものがあるな」

「秋奈っち、いくらなんでもそれは過保護過ぎ。芽吹ちゃんへのハードル低過ぎでしょ。ってかもう土に埋まってる感じ?」



 ……………。


「……あれ、もしかして芽吹ちゃん達あのまま帰っちゃった?勉強会の話は?」

「……霧散したな」

「……あのバカップル」

「キサマには言われたくないと思うが?」


 ぼそりと正論を言った八乙女さんを、ジト目で睨む夕夏。それを意に返さない様子の八乙女さんだった。




 午前のみで3日間続く一学期末テストが始まった。その頃からだろうか、登下校中に妙に人の視線を感じるようになったのは。

 女体化してしまっていきなり今日から女の子として暮らさなければならないとなった時は周囲の視線に対する耐性なんて無くて、精神的消耗はひどいものだったのを憶えている。でも今更になんで感じるんだろう?今もなんか見られてる……?


「ハル?難しい顔してどうした?」


 秋人は気付いてないみたい?僕の考え過ぎかな?

 最初はそう思ってそれ以上神経質にならないようにしていた。でもやっぱり……。

 テスト最終日の朝も。その日の帰りも。やっぱり視線を感じた。秋人は何も感じてないみたいだけど、一応心配してそれなりにボディガード的な結界を張りながら一緒に帰った。

 翌日の帰り。

 万が一を考えて僕はここに来て最高に頼もしいボディガードを依頼した。八乙女さんを筆頭に、秋人、有馬君、出島君。あと夕夏んちの極道さん。


「だぁからアタシんちはそういう人いないから!仕舞いにはおっかないメイド長呼んじゃうよ!」




 学校を出てとりあえず駅前まで着いた芽吹達。いつもなら夕夏達電車組は芽吹、秋人とここで別れるのだが……。


「どうだハル、今も変な視線感じるか?」

「うん……。かなりの至近距離から見られてると思う」



 じぃぃ~……………。


 今僕の目の前には駅周辺の案内地図の看板があります。そしてその下から僕を見詰める者が。


「海月ちゃん、そのお面なんか不気味だからあんまりジッと見ないでもらいたいんだけど……」


 じぃぃぃ~……。


 看板の下でしゃがんで芽吹を見詰める土偶顔の海月冬耶。


 じぃぃ~……。


「あの……海月ちゃん……?」

 すると、土偶のお面の中からくぐもった声で、


「芽吹ちゃんを見詰めているのは私じゃないですよ。ほら、あそこ」

「ほぇ?」


 海月ちゃんはぎゅりんっと首の向きを変えて、人差し指でどこかを指し示した。僕と秋人、夕夏達もその方向を見てみる。すると、


「ん?……あ!」

「あ……!」


 そう声に出たのは僕と秋人だった。他の4人は揃って首を傾げるだけ。

 僕達が気付いたことに気付いた彼女は、慌てているのかしばし挙動不審な動きをしていた。


 ………………………



「彼は私が認めた未来の旦那様なんだから。たかが幼馴染みの女なんかに秋人さんは渡さないわ!」


「名前呼び!?誰この子?」

「見たところ年頃は小学校5、6年だろうか」

 夕夏はムッとした表情で。八乙女さんは冷静に分析。


「えっ、あれで小学生だってのか?」

「まあ、見た感じそのくらいだろ」

 出島君は驚き、有馬君は予想通りという感じ。


「ところで……」

 八乙女さんがぼそりと切り出した。





 不審者的且つ唐突に秋人の許嫁宣言して来た少女、吾妻川渚ちゃん。僕と秋人はこの前の図書館での出来事をみんなに説明した。


「と、いうことでして……」

「俺も説得したんだけど……」


 秋人は苦笑しながら手を握って来る彼女に視線を落とした。


「私が信じた占いはよく当たるんです。だからその日に秋人さんと出会ったのは絶対運命なんです!」

 渚ちゃんは嬉しそうに自信たっぷりに話す。秋人の腕に抱きついて。


 うぅ~……僕の秋人から離れて欲しい……。って、僕の秋人ってなんですかぁ!?

 自分でノリツッコミをしてジタバタする芽吹。そんな芽吹の心情を知ってか知らずか……。


「チョイチョイチョイ、さっきっから聞いてりゃあこのポッと出のトンチンカン小娘ぇ、なぁにウチらの可愛い芽吹ちゃんの彼氏に手ぇ出してんの?アンタこの作品のタイトル分かってる?芽吹ちゃんが主役なのよ?メインヒロインなのよ?しかも何ウチらのいない場面で秋人を口説いてんのよ?」


 え、僕メインヒロインだったの!?……じゃなくて、夕夏、小学生にそんな乱暴な……。

 そう言おうとしたところで。


「うるさいギャルばばぁ!同じ未成年に小娘言われたくないっつーの!」

「ギャルばばっ……!?」

 ピシッという効果音付きで瞬時に石化してしまった夕夏。


「ガキは生意気で丁度いいもんだけど、ガキの社会にも上下ルールはあるんだ。女子の先輩として忠告しておく」

 眼孔鋭く冷徹な表情で渚ちゃんに歩み寄る八乙女さん。妙にドスが利いているせいか渚ちゃんの表情が強張った。


「好きな先輩の前でその友達にナメた態度を取ってたんじゃあ……」

 そこで八乙女さんは彼女と目線を合わせるように顔を近づけた。にこやかに微笑む能面のような表情で。

 若干怯え始める彼女。


 八乙女さんは周りに聞こえない声で、


「柊秋人という男を口説くなんてまず無理だ。私が許さん」

 さすが八乙女さんだなぁ。なんか大人の対応って感じ?夕夏みたいに興奮してないし。彼女になんて言って説得してくれてるのか分からないけど。

 芽吹の位置からは、軽く身をかがめた八乙女さんのお尻しか見えていない。八乙女さんの威圧に耐えている吾妻川渚の表情など見えていなかった。




 家の玄関前まで来た僕と秋人。……と、なぜか海月ちゃん。

 八乙女さんの説得の後、


「私の占いは絶対当たるんです!だから、諦めません!」

 多くの人が行き交う駅前で、渚ちゃんはまたそう叫んで走って帰って行った。

 強い子だのぉ~。

 芽吹はまるで他人事のように感心していた。半面、一つ、ある考えめあった。これは秋人次第ではあるのだが。




「秋人?」

「ん?」

 玄関前まで来たところでいつもの「じゃあ、また明日」と言う所。僕は秋人に提案してみることにした。


「あのさ、一つ提案……というか、試し……というか……」

 言おうとしてやっぱりなんかちょっとだけ怖くなってきた。

 言いよどむ芽吹に、訝しみながらも黙って芽吹を見詰める秋人。


「あの、吾妻川、渚ちゃんの事だけど……」

「ああ、あの子か。あれは参ったなぁ。でも心配するな。俺は年下趣味じゃないし、ハル以外の女に言い寄られても俺のATフィールドは無敵だ!」

「うん……。分かってるよ。でもそうじゃなくてさ……、試し秋人……」

 と、僕がそこまで言いかけたところで、


「吾妻川渚ちゃんとやらと付き合ってみてはどうですかね?」

「にゃっ……!?ちょっ、海月ちゃんそれ今僕が言おうと……!」

「ハァ!?ちょっ、いきなり何言ってんだ!?」


 そんな提案を現彼女である芽吹と、どこぞのアニメのネコみたいな破壊神のお面を付けた転校生に言われ、予想外の展開に同様する秋人だった。




続く…

 芽吹ちゃんの恋のライバル。海月ちゃんが何やらいろいろ仕掛ける予感?ラブコメ的ドタバタになるか……?

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