春α15 現在進行形で秋人とお付き合いしちゃってます。
また気紛れにゲストキャラ出しちゃいます。
部屋の鏡で一応の身だしなみをチェックっと。服装は無難にこんなんでいいでしょうっと。髪は……、しばらく切ってないから以前よりかは少し女の子っぽく見えるかな?
お化粧?そんなのしませんよぉ~。まだ高校生だし、そんなに気張るようなお出掛けでもないしね。でも、秋人と2人でのお出掛けだから、一応はプチデートと思ってもいいのかな?……なんちゃって!
「芽吹ちゃーん、秋人君が迎えに来てるわよー!」
「あ、今行くー!」
玄関から母菜花が呼びかける。それに答えてから程なくして、
「ごめん秋人。お待たせ!」
パタパタと階段を降りてきた芽吹は、すこし慌ただしそうにしつつも、どことなく楽しそうに真っ直ぐ玄関へと降りてきた。
「ちょっと芽吹、今日は秋人君と休日デートなんでしょ?なんでいつもの制服なのよ?」
「え、デ、デー……!?」
「ち、違うよもぉ!」
休日デートに学校の制服なんて有り得ませんとばかりに芽吹に不満の声を掛ける菜花に、そういうつもりではなかったのか、デートと聞いて戸惑いながらも軽く表情が緩む秋人。芽吹は芽吹で、否定したいけど否定しきれない内心とのギャップでツンデレの態度になってしまっていた。
「気をつけてねぇー。秋人君、芽吹ちゃんのことよろしくねぇー。ベッドインはまだ早いわよ~!ドゥフフ」
本人達がガチ赤面する様子を楽しみながら見送るエロハバァだった。
(作者、後に変死体で発見される)
「うわぁ~……。やべぇなぁ……」
家を出てから数分。さっきから秋人さんの様子が変なんですけど、これはまさかでしょうか?
僕は恥ずかしさと若干の苛立ちを込めて聞いてみた。
「あの、秋人さん?」
「うぉぉ、マジか……。ついに俺はハルと……」
「秋人さん、僕も元は男の子だったので今あなたが何を考えていらっしゃるのかはなんとなく分かります。でも今すぐその不抜けたようなえっちぃ顔を止めてくれないと、兄さんを呼びます」
すると、
「よし。今日は大人しく図書館でテスト勉強だ。ハル、分からない所があったらいつでも俺に言え。な」
けろっと態度が戻った。
秋人と彼氏彼女になれたのは嬉しいけど、もっとデートらしいデートもしてみたいし、彼女らしいこともしてみたい。でもやっぱり僕はまだ女子歴一年ちょっとのそれこそ小娘。いや、それ以下だから。夕夏みたいに有馬君にあんなイチャイチャ迫るとか僕には出来ないし。周りのカップルさんを見てもよく分からない。でも今はまだこれでいいんだよ。そう。
「ぐりぃーんだよ!」
「おい、どうしたいきなり!?」
「……な、なんでもないです」
最寄りのローカル線で二駅隣にある市立図書館に来た僕と秋人は、今日ここで図書館デーっ……テスト勉強をするのであります。
やってることは幼馴染みで親友だった時と変わらない。でもやっぱり違うのは僕の心が、僕が秋人のことを……。
この時芽吹は無意識に秋人の顔をじぃっと見つめていた。だからそれに気付いた秋人は、
チラッ……?
チラッ……?
二度見から、
「は、ハルはさ、……」 秋人が問いかける。
「ん?」
「ホントに勉強する気あるのか?」
「ほえ、なんで?」
「いっそ普通にデートってことにして、別んとこ行くか?」
うっ……。
まさかの秋人からのお誘い!?
僕は瞬間沸騰寸前の顔を隠す為に全力でそっぽを向いた。
グキッ!
「に゛ゃぐっ!?」
「うぉい、グキッて大丈夫か!?」
首が凄い音を立ててグリィンってなったせいで秋人に心配かけちゃって申し訳ないし、こういう時の秋人ってばやたら顔近いから恥ずかしいしで、僕今日秋人とのテスト勉強ちゃんとやれるのかなぁ~?もうやだぁ。いっそ友達感覚の方がいいのかも。心臓に悪いです。
「マジで大丈夫か?」
「秋人さん……?これ以上は僕フリーズしちゃうから、至近距離から見詰めないで下さい」
「……今なら一瞬だけキス出来るけど?」
「し、し、しません!秋人のえろぉ!アホぉ!もう、ほら早く。勉強の時間無くなるよ!」
開館からさほど時間は経っていないが、来館者と係員で数人はいる。その入り口でこんないちゃラブをやらかしてしまった芽吹と秋人。ようやく周りの視線に気付いた時には時既に遅しである。
館内に様々な感情が渦巻いた瞬間だった。
お昼―
さっきはちょっといろいろやらかしてしまったが、なんだかんだで大人しく勉強を進めていたらしい2人。
時刻は12時を回ったところ。
「秋人さぁ~ん、そろそろお昼にしてもいいと思うんですけどぉ~」
背もたれに体重を預け、お腹を押さえながらだらしなく座ってお昼休みを要求する芽吹。対して秋人は、
「すまん。もうちょっと。あと二問解いたら切りがいいから」
「うゎぁ、さすが優等生だねぇ~。サインコサインとかって将来絶対使わないと思うんですけど?」
真剣真面目に数学の問題集を解いていく秋人に、もう頭が回らないと言いたげにダレ始めている芽吹。
きゅぅ~るるるぅ。
ビクゥッッッ………!
図書館独特の静けさがこの謎の可愛い音によって和やかさが混じる静寂に変わった。
その空間の中心で、徐々に顔を沸騰させていく白銀の髪の少女。
「~~~~……」
足を水平にピーンと伸ばし、お腹を押さえた直角な姿勢で椅子の上で固まる芽吹。その顔はもう既に真っ赤っか。
「す、すまん。そ、そろそろ飯行くか」
芽吹のフリーズがまた発動するかと思い、少し焦った秋人は、一旦机の上を片付けてカバンと芽吹を連れて昼食へと向かった。
本館一階には別館へと繋がる渡り廊下があり、その別館が食堂フロアになっているのである。
入ってすぐに券売機があり、そこで好きなメニューの食券を買い、店員さんに渡す。芽吹達は学食で慣れているため、当然のように昼食タイムを取ることが出来るのである。
食券を店員さんに渡して、適当な席に着いたところで、券売機の前でなんか困っている女の子に気が付いた。小学校高学年か中学生くらいの見た目の子だった。
「ねぇね秋人、今券売機の前にいるあの子さ、もしかしてここ初めてなんじゃない?」
「ん?あぁ……そうだな。なんか迷ってる感じだな」
ということで、秋人がその子のもとに向かった。そして券売機の使い方を教え、店員さんに渡すところまで丁寧に教えててあげていた。すると、その子はすごく嬉しそうに秋人にガバッと頭を下げた。その直後だった。何やらいきなり秋人の懐に抱きついたのだ。
……へっ、ちょっ、ちょっと!?
その瞬間、僕は思わず勢いよくテーブルに手を突いて、というかほぼ叩いた感じで立ち上がった。その勢いで椅子も派手にひっくり返えり、気付いたら周りの注目を浴びている自分がいた。
秋人に抱きついているその子と、抱きつかれている秋人が丸い目をしてこっちを見ていた。
「……秋人の知り合い?」
「いや。全くしらねぇ」
「……」
「……」
僕と秋人はテーブルに向かい合って座り、秋人の隣の席。今は美味しそうに炒飯を食べているサイドテールの女の子を見詰めている訳なのですが……。
「もう一度聞きますけど、私の未来の旦那様とあなたはどういった関係なんですか?」
「にぁっ!?」
「未来の旦那様って……」
炒飯を食べ終えた僕の斜め向かいのサイドテールの女の子は再度とんでもない質問をぶつけて来たのだ。
なぜか今僕睨まれてるんですけど……?この子いったい何者?
この時芽吹自身はまだ気付いていないが、心の奥、芽吹の乙女心は焦りと怒りを感じ始めていた。恋のライバル的キャラの登場に。
「私、占い結構信じるタイプなんです。あと結構な確率で当たってますよ」
「は、はぁ……」
僕はなんの話をしているのかよく分からず、とりあえずそう返答した。
「今日の占いで、【行ったことのないところで初めてのことをしてみよう。そうすれば運命の人に出会える。ラッキーフードはチャーハン】って出てて、図書館なんて普通来ないし、まさか食堂があるんて予想外で。私食券の券売機?初めてで。分かんなくて困ってたら彼が……」
そこでモジモジと照れた上目使いで秋人を見詰める少女。
「ところで、君名前は?俺は柊秋人だ」
「あっ、すいません。私つい一方的に。えーっと、吾妻川 渚っていいます。小学校6年生です」
「えっ、マジ!?」
「ほぇ~……。大人っぽい。中学2、3年生かと思ってた」
「へっ、マジか!?俺は高校生だとばかり……」
芽吹と秋人はそろってこの少女をそう見ていたようだった。
「私そんな大人っぽく見えるんですか?やばっ、もしかして私、モテ期ってやつ来ました?」
一人勝手に浮かれ始める吾妻川さんだった。
「おっと、そう言えばすっかり忘れるところでした。私の未来の旦那様となる貴方のお名前を……」
またモジ照れ。
「俺か?あぁ、俺は柊秋人。現在進行形で高2だ。残念だけど未来の旦那様ってぇのは無いな」
「どうしてですか!」
この子いきなり近い!あとチワワの瞳はダメ!
内心で叫ぶ芽吹。
「俺には今、現在進行形で彼女がいる。それも幼少期からのなが~い付き合いの。だから残念だけど、俺は君の運命の旦那様ではない」
そう説明を終えた秋人が一瞬チラッと僕を見た。
ちょっと照れくさいなぁ。
すると、その動きに気付いたのか、吾妻川渚さんも僕を見てきた。ちょっと睨まれてる?
「むぅ~……。いわゆる幼馴染ラブってやつですか。先輩、失礼ですが名前を教えて下さい」
睨みながらは止めてほしいなぁ~……。
「ぼ、僕の名前は春風芽吹です。げ、現在進行形で秋人とお、お付き合いしちゃってます」
小学生相手に引きつり笑顔で自己紹介をする芽吹。現在進行形で緊張中かな?
「白銀の髪の美少女……。私はニャル子さんしか認めませんから。あと、僕っ子なんてリアルに存在するわけありません。美少女と言われる存在は恋愛禁止業界のアイドルにしか有り得ないんです!」
女体化が原因で白銀髪になった芽吹が、ここに来て初めて存在を否定されてしまっている。僕っ子も否定とは……。
「"私の占い"は当たるんです。秋人先輩は間違いなく私の未来の旦那様です!」
「"君の占い"じゃなくて、君が見たテレビの占いだよね?」
秋人が冷静にツッコんだ。すると、
「っ……!幼馴染みの恋愛なんて夢物語よ!トレンディードラマよ!私はこの出会いを諦めないんだからね!」
吾妻川渚さんは(≧∑≦)こんな顔をして食堂から出て行ってしまった。残された芽吹と秋人は、
「なんかすごい子と関わっちゃったね。秋人の彼女さんピンチだね」
「お前が他人事みたいにいうなよ。でもまぁ、まだ小学生だし?別に平気だ」
「…………」
この時芽吹は以前母菜花から聞いたことを考えていた。
女は生まれた時から恋に生きる乙女なんだと。小学4年生くらいにもなればもう恋のハンターなのだと。つまり、さっきの子吾妻川渚さんは小学6年生。中学も近い。もう恋のハンターランクは高いと見るべきなのかもしれない。
幼馴染み、親友感覚に戻ってもいいかもと思っていた芽吹の気持ちは今、どう動くのか……。
続く…
「ごめん秋人。お待たせ!」
階段からハルが降りてきた。今日は休日なのに制服かよ。まぁ休日に見るハルの制服姿も悪くはない。逆に新鮮?
今日は残念ながらデートじゃない。もうすぐ期末テストが始まるからその為の勉強会だ。今まではハルの部屋で一緒に勉強してたけど、カップル成立後は何かといろいろと……大人の階段登りそうだからと俺が判断したわけだ。
ハルとデート……。図書館デート……。いや、いっそこのまま普通にデートに。ネットカフェの個室でちょっとだけいい感じに……。
「その不抜けたえっちぃ顔をやめないと、兄さんを呼びます」
うん。今日は真面目にテスト勉強だな。




