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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春α14 胸のバウンド具合

 朝の登校時間。昇降口では今日も怒号の混じった検問が張られていた。


「コラァテメェこの男子、Yシャツはしっかりインだろーが!」


「ハイハーイ君君、ツケマとネイルはやり過ぎ。これからキャバのバイト?って思っちゃうよ」


「一年生の分際でテメェなにワックス付けて来てんだぁ?」


「おいそこ、中にシャツぐらい着やがれ!テメェの胸元なんか見てもときめく女はここにはいねぇぞ!」


「ジュンちゃん、もっと優しく正してあげないと駄目だよ」


「ったく、どいつもこいつもチャラチャラしやがって!」


 昇降口まであと20~30メートルはあるでしょうか。よく聞こえます。僕とあまり変わらない小柄な先輩、堀川真純さん。今日も相変わらず恐いです。


「風紀委員長堀川先輩、今日も相変わらず厳しい検問だな」

「同感」


 次々登校してくるほとんどの生徒が(主に男子だが)「うへぇ~」という顔に変わる。ベルトコンベアーで流れてくる人形の顔が、入り口から数メートル離れた地点でキュポンッと瞬間取り替えされるようなちょっと不気味な光景である。

 対して女子の反応は、下半身と脊髄でしか行動出来ない猿男子と違って、男気、清潔感、さり気ない美貌を兼ね備えた2人の先輩のオーラに思わず頬を紅潮させる者多数。


「堀川先輩の厳しいスキンシップ。尻蹴られたい。対して須藤先輩のやんわりと諭すようなマリアの微笑み。

頭ヨシヨシしてほしい。風紀委員名コンビ"ポリス"。飴と鞭たまんねぇ!」

「朝から変態出島節。また八乙女にシメられるぞ」


 後ろの方からそんな会話が聞こえて来た。出島君と有馬君のだろう。


 "変態出島節"……。


 クスッ……!


 じめっと蒸し暑い梅雨でも出島君のキャラは相変わらずブレず清々しいなぁと思う芽吹だった。

 堀川先輩はやっぱり僕を睨んでくるし、須藤先輩もいつも通りクスクスと笑っている。僕がいったい何をしたというんでしょうか?




 天気予報の梅雨入り宣言から数日が経ち、毎日雨と蒸し暑さがダラダラと続いていた。そんなとある日のこと。

 今日も天気は朝からしとしとと雨が降り、校庭はびしょびしょ。だからどこかの学年、クラスが体育の授業で体育館を共同で使う確率が高くなる。


 四時間目の体育は体育館で―


 一時間目直前。その日の日直が黒板に白いチョークでカッカッカと乱暴に書きなぐった。


「毎日雨でグラウドがぐちゃぐちゃなんだから、体育の授業があれば体育館しかないの分かりきってるし」

 長っダルい梅雨で若干やさぐれ気味な生徒がぼやいたりして。



 三時間目が終わってすぐにみんなジャージが入った鞄を持って体育館へと向かう。更衣室は体育館の入り口手前にある。女子は女子同士。男子は男子同士で。

 女子歴二年生にもなれば僕だってさすがに女子更衣室も慣れたもんなんです。えっへん!などと思っていると、


「なっ、なんで二年生のお前達がここにいるんだ!?」

「ほえ?」

「え、先輩聞いてないんですか?今日はウチら二年生と体育館共用ですよ」

「あぁ、二年生って芽吹ちゃん達のクラスだったんだね。じゃあ今日はいつも以上に楽しい体育になりそうだね」


 僕らが入って来たことに気付いた堀川先輩。何故か怒られた。須藤先輩はすぐに分かってくれたみたいだけど、その笑顔にはなんとなく嫌ぁ~な予感がするんですけど……?




 校庭の広さには敵わないが体育館もなかなかの広さを持つ夕陽ヶ丘高校の体育館。

 現在芽吹達のクラスと、三年生堀川真純、須藤真琴のクラスで合同体育が行われている。バスケコートとバレーボールコートに分け、体育館を半分づつ使用している。人数が多いため、なるべくチーム人数の多い競技で外野を減らしたのである。因みにチームはバランスを考えて二年、三年混合で行っている。

 芽吹は身長が小さい代わりに俊敏性が高いからとバレーボールチームに駆り出された。


「よいしょっと!」


 スパンッ!


「きゃあっ!」


「もう~、須藤先輩手加減してくださいよぉ~!」


「いやいや、ほんの軽く打ったって」


 相手チームの先輩からの容赦の無い鋭いスパイク。ずば抜けた身体能力と長身を誇る笑顔の先輩。須藤真琴である。


 あの人すごいキラキラ笑顔でめっちゃ危険なスパイク打ってくる……!?

 芽吹は後悔していた。バスケなら例え須藤先輩が敵側の同じパターンでも、あんな殺人的スパイクを食らうことはまず有り得なかっただろうと。

 実は試合開始から今まででほんの15分程度だが、須藤先輩の殺人的スパイクの直撃で交代した選手は5人。8人チームで5人も倒れているのだ。その内まだ無事なのが芽吹と三年生2人。

 これまた実のところ、スパイクを食らって倒れた者達は皆芽吹の身代わりに直撃を食らっていたのだった。しかし芽吹本人はその行為には全く気付いていなかった。

 また一人須藤先輩のスパイクの餌食になり、メンバーがまた代わる。

 外野に弾かれたボールを拾いに行った芽吹は隣のバスケのコートの方を見てみた。


「シャンヌァラァァ!」

「ぶぉほぁっ!?」


 ツンツン頭のあの人が何やら凄まじい覇気を纏いながら自分よりも身長の高い敵ディフェンスの人を踏み台にゴール目掛けて跳躍した。


「にょぇ……!?」


 ドスの利いたその掛け声と破天荒なプレイに思わずそんな声が漏れた芽吹。

 その直後、


 ファサッ!


 派手なシュートだったのに何故か綺麗な音が体育館に響いていた。

 そして直ぐにプレイ再開。堀川真純の独走プレイは止まらなかった。とにかくファールか、ファールギリギリの攻撃的なプレイの連続なのである。

 今日の体育なんか危険度高いよ!?主に風紀委員の先輩2人がやたら強いよ!?

 隣のバスケコートの様子が気になりつつも、こっちのバレーボールも気が抜けず、意識が散漫になる芽吹だった。

 しかし……。


「芽吹ちゃんなんか凄くない……!?」

「隣のコートの堀川さんに意識持ってかれてる感じなのに……」

「何気に須藤さんの殺人的スパイクをレシーブで返してる……」


 外野からそんな驚きと賞賛の声が囁かれていた。


「男子チームでよかったわ」

「……俺も同感」

「さすが白銀の姫芽吹ちゃん。不思議系チートヒロインだぜ!胸が揺れないのは芽吹ちゃんだからご愛嬌、的な?女子バスケとバレーボール。胸のバウンド具合これ重要!うんうん。あとお尻のグラインド?」 


「八乙女さーん、ちょっと」


 この後、約数人からよってたかって投球リンチに合う出島だった。

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