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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春α10 秋人、僕に興奮しないの?

 今回、フェロモンハザードは前回ほど学園描写はありません。その変わりに……?

 僕は今必死に走っています。僕が原因で引き起こした、出島君命名『フェロモンハザード』自分でこのタイトルを口に出すと自己嫌悪で泣きたくなるんですけど……。

 みんなに庇われ逃げ出してから、もうどれくらいの時間が経ったのか。

突然の夕夏の思い付きの作戦内容に、温厚を自負する僕でもさすがに、怒りを覚えた。その忌々しき作戦内容とは、


『男子達の徒競走脚力強化に芽吹ちゃんを追わせよう!』


「嫌だよっ!」

 僕。

「馬鹿者っ!」

 八乙女さん。

「おまっ、ふざけんな!」

 秋人。本気で怒ってくれてる。

 秋人と八乙女さんと、八乙女さんを支持している武闘派女子数十名の猛烈な反対を受けて凹んだ夕夏だったけど、どのみち逃げないと、走らないと僕の貞操的なものが危ういということで、僕は意を決した。貞操の危機と今回の体育祭の我ら白組の勝利を賭けて……。




 あれから2時間……。


「……あいつ、今何周目だ?」

「あ~、たぶんねぇ……分かんない。30周ぐらいかな?」

「……マジか!?」


 芽吹は白組優勝の為に自らを犠牲にして、フェロモンハザードにかかった男子全員を引き連れて、エンドレスダッシュを引き受けたのだった。ランニングでもマラソンでもなく、ダッシュだ。

 芽吹の無駄に強い決意の闘志を垣間見た秋人と夕夏は、万が一に備えて校庭の隅にあるベンチから見ていた。秋人は初めこそ心配ともどかしさに珍しく目を回して動揺していたが、予想外の2時間越えのエンドレスに、安堵半分、呆れ半分になっていた。夕夏ももう飽きてきている。


 2時間程前なら――



「やっぱり怖いぃぃぃ!みんなの顔怖いぃぃぃ!

秋人ぉ、八乙女さぁん助けてぇぇぇ!」

「ったく、見てらんねぇ。やっぱハルを家に帰すぞ!」

「こんなやり方で体育祭の練習などありえん!」

 秋人と八乙女がたまらず助けに動く。


「芽吹ちゅあ~ん!俺の白銀の女神ぃ~!俺と結婚しちゃお~!」


 ピクッ!


「柊は君に、全然愛情を示さないじゃないかぁ~!俺は芽吹ちゃんのことちょ~愛してるぜぇ!」


 ピクッ!


「我が名は出島太矢!柊秋人という魔王の手から我が愛する芽吹ちゃんを救う為に参じょ……っ!」


 ブチッ!


「「惨状しやがれブタ野郎ォォオ!!」」


「ぴぎぃぃぃぃ!」


 泣きながら必死に走る芽吹の数メートル後方で男子達が悲鳴を上げて弾け飛んだ。

 八乙女はお約束だが、秋人も珍しく心中穏やかではいられなかったようだ。

 結局この後芽吹は、クタクタのへろへろ状態で保健室の天海先生の車で早退となったのだった。

 秋人、夕夏、八乙女は、芽吹がいなくなったことで正気を取り戻した男子生徒達の"後片付け"に追われることになった。




 気絶寸前の状態で天海先生に家まで送られ、ついでに、貞操の危機の可能性が大いにあった無茶苦茶な自殺行為だったと、先生と母さんからダブルで叱られてしまった。

 とりあえず制服から部屋着に着替えたけど……さあどうしようか……。 母さんが、「今日は安静に。寝てなさい」と、ホットココアを持ってきてくれた。ココアを飲んでだいぶ気分が落ち着いてくると、今度はだるさと睡魔が攻めてきて、僕は抵抗せずにそれに従った。頭がボゥ~ッとしてやたらポカポカする。風邪で熱を出した時と同じ感覚かな。目蓋は重いし、全身もだるい。ベッドに軽く横になると、いつの間にか僕は意識を手放していた。



 ふと意識が微かに戻り始める目覚める手前。こういうのを"まどろみ"って言うのかな。夢と現実の間。

 今何時なんだろう?

 目は開けていないが、部屋が暗いと僕の意識は勝手に判断していた。寝付いた時間はたしかお昼過ぎだったかなと記憶を辿る。部屋が暗いってことはもう夕飯時か、或いは時計をグルッと回してもう深夜か。

 徐々に意識が覚醒してゆき、自然と目蓋が開く。グロウランプの小さなオレンジ色が暗い室内を控え目に照らしていた。

 時間を確認しようと体勢を変える。そこで足の辺りに違和感を感じた。掛け布団が何かに引っ掛かっているような、突っ張った感じ。足元に視線を持って行ったら、違和感の原因に僕は驚きで急激に息を吸ってしまい咽せ込んでしまった。

 秋人……なんで!?

 秋人は下に座ったままベッドに突っ伏した格好で眠っていた。制服のままだ。下校してそのまま家に来てくれたみたい。秋人ん家すぐそこなのに。

 部屋の壁掛け時計を見てみると、夜中の2時を回ったところだった。ココアを飲んだ当たりの記憶から辿ると、あれからずっと寝たまんまだったのだと気付く。秋人が来たことを全く知らない。秋人も僕が起きないように気を使ったこともあるだろうけど。


 薄暗い部屋。グロウランプの微かなオレンジ色が、秋人の寝顔をほんのりと赤く染める。そんな秋人の寝顔を見詰める芽吹の表情はどこか切なげに曇っていた。

 この時、今まで芽吹の中で静かに小さく眠っていた本能のような感情が、ユラユラと煙のように、表の理性と感情を覆い隠し、侵蝕していた。


 ん……。なんだろう?なんか落ち着かないなぁ。秋人を見てるとお腹の辺りがモヤモヤする。なんか、今すごく……秋人にキスしたい……。

 でも、そんなことしたら……、ダメだ。お腹がムズムズする。

 まだ僅かに残る理性、意識の中で僕は、この感覚、感情が何なのか分かっていた。今更もう無視は出来ない。いや、したくないかもしれない。だって僕と秋人はもう恋人同士なんだから。ただの幼馴染みじゃない。男同士でも男友達でもない。だからこれは当然の感情。


 僕の身体で秋人は興奮してくれるかな……?えっちぃことしてくれるかな……?あ、それとも逆に僕の方から秋人に……。

 お風呂で軽くのぼせた時みたいな全身の火照りに気付いて、僕は普通に制服を脱いでいった。すぐ目の前に秋人がいるのに、僕は当たり前のように下着姿になった。身体が熱い……。



〈秋人サイド〉

 ふと妙な感覚に触れて意識が浮上していくのを感じた。

 俺、いつの間にか寝てたのか。……ってか、そういやぁここ、ハルん家!

 そのことを思い出しつつゆっくりと目を開ける。薄暗い部屋。突っ伏した体勢の自分の腕と、柔らかい布団の感触。

 ハルの匂いがする……。やべぇ……、寝起きで早速ご起立かよ俺の俺!寄りによってハルの部屋でってのは……。

 ふと、また妙な感覚が。嗅覚に引っ掛かるというか、腹の辺りと下半身に沸き立つあの落ち着かない感覚が、俺の思考を揺らす。少し眉間に皺を寄せたくなる軽い目眩。

 これってまさか、ハルのアレか!?

 直ぐにそうだと確信した自分の思考に少し驚きつつ、俺は寝ているハルの方を見た。

 ……!!……っっ!?

 ハルは起きていた。というか、なんて表現すればいいんだこの表情は?更に言うとハルは下着姿だった。

 何してんだこいつ!?

 端からみれば今俺は微動だにしていないだろうが、頭の中では大慌てだ。右往左往という言葉を使っておこう。たぶん正しいはずだ。



 薄暗い室内。ベッドの上で下着姿でぺたんと女の子座りをして秋人を見詰める芽吹。その表情と放つ雰囲気には強烈なエロスを纏っていた。おそらく秋人以外の並みの男子、男性では間違いなく大事件に直結するだろう。対して芽吹限定で耐性があるはずの秋人ですら今回、そして今現在の芽吹に対してはかなり分が悪かった。芽吹の高濃度フェロモンが充満した芽吹の部屋。言わば芽吹の本丸。更に、薄暗い室内でグロウランプの明かりが芽吹の下着姿を艶めかしく魅せていた。

 秋人は腹の奥底からドクドクと沸き上がってくる感情。目の前の幼馴染みを押し倒して本能のままに……という衝動を押し止めながら、目の前の下着姿の幼馴染みを見詰める。


「したい……」

 切なげに潤んだ瞳で秋人を見詰め、そう呟く芽吹。


「え……?」

 秋人の表情が固まる。


「してみたい。しても……いい?」

 ぺたんとお尻はベッドに座ったまま、上半身だけ前に倒して秋人と同じ目線になってきた芽吹。猫のように背中を逸らし、秋人を見詰める瞳は上目づかいになった。そして秋人から"魅える景色"は、グラビア雑誌なんかで見たことのあるエロいポーズそのものだった。


「っっっ……!!」


 顔が、頭が一気に熱を持つのが分かった。



〈芽吹サイド〉

 昔よく秋人ん家に遊びに行ってた時は、秋人の机の引き出しの奥とかゲームソフトの棚の奥とかからえっちぃ本出して、たしかこんな感じの格好の女の子の写真見たんだよねぇ。今、秋人興奮してくれてるのかな?なんか顔が怖いけど……。


「秋人、僕に興奮しないの?」

「……へ!?」

 秋人声裏返ってるよ?


「去年の夏、一緒にお風呂入ったよね?忘れた?前にキスもしたよね?もっと恋人らしいことしないの?」

「いっ……いい、のか?」

 ふふっ。秋人顔真っ赤だ。僕も真っ赤かな?



 やっと搾り出したような秋人のそんな問いに芽吹は、焦らす意味で少し間を置いた。

 芽吹はそっと秋人の手を握り、遅れて秋人も芽吹の手を握り返す。


「僕、女の子になれるかな……?」

 その言葉の意味を秋人は理解してしまった。その瞬間、秋人の理性は限界を迎えてしまった。


「ハルすまん!」

「うにゅっ!」


 ぼすん……っ!




 急に押し倒された芽吹から可愛らしい小さな呻き声が漏れた。


「ごめん。痛かったか?」

「大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。……くふふっ」

 芽吹は小さく笑った。

 なんだろ?焦った顔の秋人が可愛く見える。それに今も、僕が笑ったことにハテナ顔してる感じもなんか可愛いかも。


「ハル、今俺のこと馬鹿にしたろ?」

「……うん。したかもね。秋人って意外と……」

「意外と、なんだよ?」

「僕にえっちぃ事するの怖いでしょ」

 芽吹は秋人を試すような口調で言い、対して秋人は、一瞬片眉をピクッとさせて少し不機嫌な表情になった。


「襲うぞ?いいのか?」

 今度は逆に芽吹が試される番になった。


「僕のこと、今なら好きにして……いいんじゃない?」

 が、逆に試し返されてしまった秋人。


「あぁもうどうにでもなれぇ!」

 今度こそ2人の理性は崩壊……。


「んっ……!」

 ………………………






続く…

 その変わりに……ちょっとだけ艶めかすぃ~な感じで描いてみました。

さてこの展開。次回は如何に?

作者、あまり濃厚なエロスは描けません(-.-;)

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