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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春五番 お昼食べるとやっぱり眠くなる

日常のほのぼの感を書くのは意外と難しいです。あまりイベントらしいイベントも無い今回。芽吹ちゃんのハイスクールライフ、どういった展開になるのか…。どうぞ!

スズメがさえずる清々しい春の朝。そんな朝の始まりはこんな音から始まった。

―ズダーンッ!!―

「フンギャッ!!」

「どーしたぁ芽吹ィ大丈夫かぁ!?」

そして朝からシスコンパワー全開なのは?

「にゃっ、平気だから今開けるなっ…!」

ガチャッ

「めぶっ…ジィ~…」

「ァ…ぅ…~~うにゃあああああ!!(恥)」

「芽吹の下ぎっ…フベッ!」

勢いよく閉められたドアに顔面強打した筑紫である。

今日も平和な春風家の朝である。 芽吹と秋人は今日もいつも通り仲良く登校。

2人が校門をくぐった時だった。いろんなユニフォームを着た先輩方がけたたましい音とともに2人に迫って来たのである。秋人はこの状況に面倒くさそうに頭を掻き、芽吹きは何が何だか分からずビビっっていた。

そんな新入生2人の気持ちなどお構いなしに、言いたいことを喚き散らす先輩方。

「君が柊君だね?噂通りなかなかのイケメンだね。俺はサッカー部キャプテンの堀川だ。よろしく。気が向いたらウチに来るといいよ。可愛いマネージャーさんも大歓迎だから」

爽やかキラリなスマイルを芽吹に向けてくるこの先輩。しかし中身が男子の芽吹には何も響かなかった。

「俺はバスケ部キャプテンの本多だ。君がウチのマネージャーになってくれればっ…グハッ!」 今度はバスケ部?と思ったら、いきなり巨体のタックルを食らって芽吹の視界からフェイドアウトしていった。横で秋人が「次はラグビー部か」と呆れ気味に呟いた。がっしりどっしりと熊のような体格の先輩は、直接芽吹に迫って来たのである。秋人が間に入って芽吹を庇ったが、その先輩は必死な顔で迫ってきた。

「汗むさい我らラグビー部にこそ、君のようなマネージャーが必要だぁ!」

アニ○ル濱口並みのテンションに、仰け反ってしまう芽吹と秋人。

「秋人さん秋人さん、どう逃げるこれ?」

横目で秋人の方を見る。だが、芽吹が視界に捉えた物は、鬼の形相とどす黒いオーラを放ってこっちに猛ダッシュして来る兄筑紫だった。 そして、芽吹達に群がる輩を無言で一蹴した。そして振り向きざまに一言、

「無事かマイシスター?」

「へ、平気だよ…」

(どういう意味のスマイルなんだ?)

「どうもッス筑紫先輩。ってことで、ハル、今の内に逃げるぞ!」

芽吹が頷くが先か、秋人の手を取った瞬間、芽吹は驚異的なロケットダッシュをかました。

あとからの話、それを見ていた生徒からは、手を引かれていた秋人が、まるで鯉のぼりのようだったとかなんとか。


廊下で秋人と別れ、教室に入った芽吹。

「あ、芽吹ちゃんおはよー!」

「は、春風さん、おはよう」

「え、あっ、お、おはよう…ございます」 昨日が入学式で、芽吹にとってはクラスのみんなが初対面のはず。なのだが、みんながやたら気持ち良く挨拶してくるため、思わぬフレンドリーさにビビってしまった。

「あっ、ハルっちだぁ。オッッッハァー!ムギュッ」

「うにょぁぁぁ、なななななんなん…何ですか!?」

女子からの突然のハグに超ビビりまくる芽吹に、彼女はテンション高く答えた。

「朝から超可愛いから!」

底抜けに明るく見つめてくる彼女にそんなことを言われたため、ハグで赤くなっていた顔が更に赤くなる。

ふと、あることが気になった芽吹は、目の前のその彼女に聞いてみた。

「ところでなんですけど…」

「何?」

メイクをした大きな瞳で顔を寄せてくる。

「…誰でしたっけ?」

ズコー!!

まさにそんな音が聞こえてきそうだった。

「えぇぇぇ!?夕夏、夕夏だよ。鳴海 夕夏!」

「あぁ~…」

いまいちピンと来ていない反応である。

昨日、自己紹介のシーンで芽吹に初めて話掛けてきた隣の席の子である。

「ハルっちって天然なんだね。まぁいいや。改めてよろしくね!」

(天然、僕が?)

「Natural?」

「いやいや、そこカッコイイ発音とかしなくてよくない?」

芽吹は目標の友達100人の内1人を仲間にしたのだった。


4時限目のチャイムが鳴り、午前中の授業が終わった。と言っても一年生新学期最初の授業はまず担当教師と自己紹介をして、雑談をしたりするだけなのだった。まぁ稀にだが、

「俺眠いから少し寝るわ。お前達は残り時間好きにだべってていいぞ~」って言って、教卓に突っ伏して本気で寝ちゃう先生もいたりする。

持って来た弁当を食べる前に、手を洗いに行こうと芽吹は席を立った。すると、

「ハルっち、お昼一緒にご飯たべよ!」

「あっ、え…っと…」

「だから夕夏だってば!もぅ~」

さすがに苦笑いを浮かべる鳴海 夕夏。

「失礼しま~す。芽吹さんいますか?」

「あ、秋人だ。どしたの?」

芽吹は秋人の側まで駆け寄っていった。

「昼飯一緒に食わないか?と思ってさ。学食んとこならテーブル広いし」

「あっ、それがいいねぇ。学食行こ。学食」

秋人と芽吹は学食で弁当を食べることに決めたようだ。そこへ、夕夏も入ることになったのだが、どうやらもう1人参加者がいるらしいのだ。

「は、春風さん、その…わ、私も一緒に…いいだろうか?」

しおらしく恥じらいがちにそう聞いてきた子は、なんと、昨日の自己紹介の時に芽吹を庇ってくれた黒髪のカッコイイ子だった。昨日の威圧的な雰囲気とは真逆で、かなり控えめな態度なため、さすがの芽吹もあれ?と思っていた。

「こいつ私のボディガードの、乙女ちゃん」

「なっ、貴様その呼び方はやめろ。それに私は貴様のボディガードになった覚えなど無い!」

急に強きな雰囲気になった。が、

「あっ、す、すまない。い、一緒にご飯…い、いいだろうか?」

また控えめに戻る。どうやら夕夏には強きになれるようだ。

「別にいいよね秋人?」

「人数は多い方が賑やかだろ」




学食のテーブル一枚に芽吹、秋人、鳴海夕夏、そして、

「八乙女 秋奈だ。あ、改めて、よ、よろしく」

日本の女性らしい綺麗な長い黒髪に、キリッとした顔立ち。昨日もそうだったが、芽吹は見惚れていた。勿論男子目線でだ。 それに対して鳴海夕夏は、茶髪の長い髪を後ろで結い上げて、少しギャルっぽく化粧をした賑やかな雰囲気。

夕夏曰わく、八乙女さんは夕夏のボディガードだとか、漫才師の相方みたいなものだとか、とりあえずこの2人はペアなのだろう。芽吹と秋人のように。


「マジですかトメさん、その弁当はご自分で作りなすったと!?」

「っ!や、八乙女だ。だが…春風さんに言われると、悪い気はしないな」

芽吹は興味津々で八乙女さんの弁当を覗いていた。

「へぇ~、八乙女さん女子力長いんだ」

秋人も普通に感心している。

「やっくんの料理美味しいから、たまに私も作ってもらうんだぁ」 夕夏が自慢げに言う。

「¨やっくん¨とは誰だ!キサマはいい加減にしろ。私のニックネームはいくらあるんだ?」

「うん?いくらだろう…」

指折り数えて見せる夕夏。

「そ、そんなに…」

「ウッソー!」

「き、キサマは、いい加減にしろ!」

なかなかいい掛け合いの2人である。



学食に¨白銀の天使が降臨している¨と騒がれ、普段はあまり学食に出入りしない生徒たちが学食を覗きに来ていた。

その中の2人。

芽吹のクラスメート。有馬 京弥と、出島 太矢がいた。

みんな覗いているだけで何故中に入っていかないのか。

「はぁ~…、なんと神秘的な寝姿なんだ~」「是非とも近くで天使の寝息を聞いてみたいなぁ~」

「男子は何やってんのよ?…っていう女子の私ですら近づき難い神々しい雰囲気ね」

野次馬はナンダカンダと言っているのだが、有馬京弥と、出島太矢はその野次馬を押し分けて平然と中に入っていった。すると、

「おいよせ!なんて暴挙に出るんだ君達は!?」

「眠れる白銀の空間が穢れるだろうが!」

そんな批判が飛んでくる中、有馬と出島は、こう言い残して行った。

「俺の魂は神聖だ。天使のお側にいてこそ俺は輝くのさ」

中二病ボケをかます出島。

「お前らが彼女をそんなふうに避けてたら、彼女がキズ付くんじゃないのか?まぁいいけど」

芽吹達の方を見ながらクールに言う有馬。

芽吹達のいるテーブルまで歩いて行った2人。

「ヨッ!鳴海」

「あっ、京弥君だぁ!」「よう」

「あれ、俺無視ですか?…八乙女さん今日もクールビューティー!」

「騒ぐなクソ虫!…春風さんが起きてしまうだろうが」

声を潜めつつ出島に暴言を放つ八乙女さん。

「しっかし、ハルの寝顔可愛いなぁ」

「可愛いね」

「清らかだ」

「…………」

「はぁ~…」

この時の学食フロアは皆、芽吹の微かな寝息と清らかな寝姿を眺めるのに全神経を集中させるという、異様な時空を作り出していたのだった。

学食にいる約60人に注目されている事など知る由もない芽吹であった。


「はぁ~…春風さんマジ天使だぁ~…」

誰かの呟きが聞こえたその時だった。

「~~ん~…」

芽吹がムクリと体を起こしたのだ。

「ぁ…ふぁ…ふぁぁぁぁ~、ふやぁぁぁぁ~」

大きなあくびと共に、可愛らしい背伸びが、見ている者の頬を緩ませる。

(くぅ~…可愛いすぎる!もはや拷問だ)

(あぁ~…もうダメ!あたしもう百合に落ちてもいいわ)

男女問わず内心で悶絶する生徒達。

「寝ちゃってごめん。もうお昼休み終わりかぁ。お昼食べるとやっぱり眠くなるよね」

まだ少し眠そうに目元を擦りながら言う芽吹だった。



〈秋人サイド〉

昼休みの件で、秋人はクラスメートから尋問を受けていた。主に男子だが。

「くぉら、柊秋人。お前には【白銀の天使独り占め容疑】が掛かってんだよ。詳しく吐いてもらおうか」

「どんな容疑だよそれ」

呆れ気味に突っ込む秋人。 だが、

「登下校一緒。お昼も仲良くお食事。秋人さん、リア充ってんですかコノヤロー」

チンピラ風に至近距離から煽ってくる。

「だぁかぁらぁ、俺とハルはリア充とかそういう関係じゃないんだっつーの!」

(ハルが皆に良くされるのは俺も嬉しいんだが、このくだりはウザイ。いっそ付き合ってるってことにした方がいいのかなこれ…?)

周りからの冷やかしなどが影響してか、芽吹との関係に複雑な想いが僅かに混じる。しかし、その複雑な想いの影に隠れる本当の想いに、秋人自身まだ気付いてはいなかった。




続く…

歩くイベント is 芽吹!

読者さんは悶絶出来るほどの芽吹ちゃんをイメージ出来たでしょうか?


そろそろレギュラーメンバーが固まってきたので、近々「登場人物紹介その2」を出す予定なので、よろしくです。

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