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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春α3 関節キック(GW桜祭り編)

 桜祭りぃ~!ビバ・弘前!

 さくら!サクラ!桜!チェリーボーイ芽吹!

「ニャァァ!チェリー言うな!」

 じゃあ、チェリーガール!

「なんかカワイイけどやめろぉぉ!」



 人物名再紹介

海月みづき 冬耶とうや


ひいらぎ 秋人あきと


読みづらい名前ですいません。

 時期は5月の初め。春真っ只中。桜前線は関東地方を既に通過して、今は東北地方をゆっくりと北上中。




「さすがに凄いわね~。弘前城の桜は。どれも立派な樹なのは勿論だけど、種類の多さにもびっくりだわ~」

「菜花さんは花には詳しいからね。僕には垂れ(シダレ)と牡丹ぼたんだっけ?それぐらいしか見分けがつかないよ」

「風吹さんは花より団子って感じかしら?」

「いや~、花より団子というなら後ろの二人が適任じゃないか」

 そう言って後ろを振り返った二人の視線の先。両親から少し離れて歩いていたのは、


「何故お前がここにいるのだ秋人?」

「あっ、意外と旨いんだなりんご飴って!」

「アハッ!だろだろ。その大きさと食べ応えが良いんだよね。僕のはいちご飴。ちっちゃくてなんか可愛いし」

 微妙にぴょんぴょん跳ねながら楽しそうにいちご飴をペロペロして歩く芽吹を、


「ちっちゃくて、カワイイ……」

 ちょっとドキドキしながらチラチラ見る秋人。


「おい、柊秋人、何故貴様が俺達春風家の家族旅行に紛れ込んでいる?更に俺の目の前で、超絶的にびゅーちふるでスウィーティなマイシスターとリア充ぶっこいてんだ?」

「あの、秋人さん……?」

「はい。何ですか芽吹さん?」

「その……、えっと……」

 はう~……。秋人が半分かじった所、食べやすいから一口食べたい。なんて言えないよぉ。だってだって、それって間接キ……。


「か、か、かん、せつ……」

「?」

「キーーック!」

「ぅアダぁっ!?」

 横目でチラチラと芽吹を見る秋人に対し、身長差で秋人の顔までは見えづらい芽吹。

 口の小さい芽吹には、りんご飴は最初の一口がなかなか食べづらいのだが、秋人が良い具合に食べ進めているため、かじりやすくなっているのである。しかし、芽吹は大変"ウブ子ちゃん"なため、間接キスという手段は命懸けにも匹敵する巨壁なのであった。

 りんご飴への食欲と羞恥に思い悩み、その末に出た行動が……、


「関節キーーック!」

「ぁダっ!だから何故にいきなりお兄ちゃんの膝裏を蹴る!?ってかさっきからお前ら俺をガン無視するな!」

「あっ、そだ秋人、次は合鴨の串焼き食べよう!」

「えっ、そんなんあるのか!?」

「だっからお前ら俺の話を……ぉがっ!?」

 ツッコミ最中の筑紫の口に、直径30センチの餅を三つ突っ込んで氷結スマイルで何かを諭す母菜花。


「つっくんも早く"立派な彼女"見つけなさい」

「もごぁ……ふぁごぉ……っ……オェっ!」

「もぉ~、男なら口ごもってないでハッキリ言いなさい!」

 追加で餅もう一つ。


「もがっ!?……うっ……おぼぁ!」

「誰がおばさんよ!美味しいお団子食べさせてあげてるのに」

「いや、母さん?兄ちゃん吐いちゃってるって」

 窒息死寸前の筑紫を見て、さすがに無視出来なくなって助けに入る優しい芽吹。そんな芽吹の慈悲深さに、窒息死寸前ながら涙を流して餅を嘔吐する筑紫であった。




 日本が世界に誇る桜の名所。青森県弘前市、弘前城桜祭り。

 都会の桜祭りのように、『桜よりも人を見に来たようだ』と思わせるような混雑具合ではなく、実に程良い賑わいと人の流れが、数多くの来場客を笑顔にさせていた。


 城の敷地いっぱいに連なる桜は全身で堪能し、あちこちに軒を連ねる出店の食べ物は鼻と口で堪能し、道行く人達は芽吹の超絶的可愛さについ立ち止まって息を呑むのだった。


 桜祭りを堪能しながら天守閣が見える本丸に向かってゆっくりと歩みを進める春風ファミリーと秋人。


「ふあぁ~。これが桜風吹……。きれい……」

 日本の春の景色の象徴に見惚れながら歩く芽吹。すると、


「おっ!ハル、アイスに桜の花びらが着いた」

「あっ、ホントだ!カワイイ。もっと着かないかな」

 そう言って芽吹はアイスを持って桜風吹の花びらを追いかけて、トテトテと走り出した。


「待てーー、花びらーー。アイスにくっつけーー!」

 なんとメルヘンチックで微笑ましい光景だろうか。その場にいた芽吹の両親も、筑紫も秋人も、他のお客さんも、まさにラブ and ピースを実感した瞬間だった。しかし、その後……。


「ほらほら秋人、出来たぞ。桜ソフト!」

「おお!……ってハルあぶねっ!」

「にゃっ!?」

 突然横から走ってきた人とぶつかってしまい、その拍子にソフトクリームが芽吹の手からポロリとこぼれた。


 あっ……!


 と、頭で思ったところで大概の場合は絶対に落としてしまう。

 しかぁーーし!


(僕の桜ソフトォ!)


「にゃっせい!」

 地面まであと20センチという所で、普段の芽吹では到底有り得ない反射神経と体捌きで、ソフトクリームをキャッチした芽吹。

 この瞬間、僕は自分がどうなったのか、何をしたのか全く分からなかった。本当にほんの一瞬のことだった。

 ふと気付いて周りを見たら、秋人は駆け出した直後みたいな体勢と焦ってるような驚いてるような表情で静止した状態に見えた。他の周りは……よく分からない。とにかく、僕自身何がどうなったのかまだ理解出来ていなかった。

 これもまたとにかくだけど、


「アイスは無事だった」

「アイスよりお前が無事でないと俺が困る」

「あ、秋人……。グッジョブ僕?」

「なんで疑問系だ?それより……」

 さっき何が起きたのかは分からないけど、僕は自分の驚異の潜在的身体能力があるのかもと思い、あえて惚けて隠そうとした。すると、秋人は話を変えるように僕の後ろの方に顔を向けた。だから僕もつられて後ろを振り返った。


「あれ……?」

「何でここにいるんだ!?」

「海月さん!?」

「ほぅ、なんという偶然なミラクルですか。満開の桜の下でまさか春風芽吹さんに会えるとは!?いやぁ~、桜の花びらを追いかけた甲斐がありました」

「え、海月さんも花びら追いかけてたの?あはは、僕と一緒だ!」

「そんなお面被ってこんな人混みの中よく走れたな」

「ハイ!く○モンさんはゆるキャラ最強らしいと聞いたので」

「……そのゆるキャラって熊本だよな。ここ、青森なんだけど」

 秋人が冷静にそうツッコみをしていると、


「秋人、カワイイに国境はないんだよ!」

 グッと拳を握って秋人を諭す芽吹。


「いやいや、ハルさん。これはご当地キャラで……いや、もういい」



 秋人と家族団欒+筑紫の弘前城桜祭り。

 そこに予想外のクラスメイトが追加乱入。これは偶然か謀り事か。






続く…

 投稿当時。つまり現在。現実世界は12月。しかし関東の日中平均気温は桜が咲いてても不思議ではない暖かさ。

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