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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春α1 男子気分て何!?

 春です。桜です。二年生です。シーズン3の後半に入ります。

 桜が咲き始める4月。

 朝、登校のために家を出れば、あちらこちらの家で小さな新一年生を心配そうに見送るお母さんと、張り切っていたり、心細そうに見送られる子供の様子が自然と視界に入る。

 春の風は時折強く吹き、それがまだ少し肌寒く感じられる。そんな春の風は時に気紛れだったりする。


「きゃっ!」


 道を行くスカート姿の女子学生達が、時折強く吹く風にサッとスカートと髪を押さえる。そんな当たり前のような仕草を無意識にやってしまっている者がここにも1人。 彼女(彼)の名は……、


「にゃっ!うぅ~……だからスカートは、こういうのが嫌なんだよ~」

「そういや、女子はスカートでもパンツでもいけるけど、男にスカートは有り得ないんだよなぁ」

 ん?秋人、僕のパンチラに興味を示さない。春一番のサービスタイムだったのに。


(俺は今全力で男のさがをコントロールした!)

 最近女子力が上がってきた気がしている芽吹はさり気なく秋人に女の子らしい何かをアピールするようになっていた。しかしそれを秋人は見事なまでにスルー。芽吹は内心で少し悔しがり、反対に秋人は理性の勝利の喜び三割、歯がゆさ七割と、かなり精神的負担を強いられていたのだった。




 4月に入り、新学期が始まった。芽吹達は二年生に進級し、それと共にクラス替えを行われた。夕陽ヶ丘高校は一学年四クラス。その為、クラスの中には一度も話したことのない生徒もいる。逆に仲良しグループが別々になってしまう場合もあるのだ。そうなると新学期早々トラブルが発生したりする。例えば彼女達の場合……。

「ちょっと、なんで出島君じゃなくてアタシが芽吹ちゃんと別のクラスに移動なのよ!しかも、四クラスもあるのになんで秋人君がこっちのクラスに来る訳!?」

 夕夏が少しキレ気味にクラス替えに異議を唱えた。


「正直私も納得が行かないが夕夏一人ではない。私も一緒だ」

 夕夏と一緒にクラス移動になってしまった八乙女さんがフォローをいれるが……。


「秋奈っちじゃアタシを癒せないモン!アタシの血と肉は全て芽吹ちゃんの癒やしの力から出来てるんだから!」

「お前いつハルを喰らったんだよ?ハル、お前鳴海にいつ喰われた?」

「え、そうなの?僕夕夏に食べられてたの?」

 とんでもない真実発覚とばかりに真に受けたようなリアクションをする芽吹に、


「……いやいやいやいやんなわけあるかぁ!」

 みんなが一斉にツッコんだ。




 わずか一週間しかない春休みの間、僕はとことん趣味に興じてみたのだ。それは、ウェブ小説を読むこと。僕がハマっているウェブ小説《小説家でもやろう》内の『小説でも読もう』で、手軽にいろんな作品が読めるのだ。いつも携帯で読んでいるから、学校が始まった今も休み時間に我慢出来なくて読んじゃってるんだ。

 そんな現在、僕はとある情報を耳にしてしまった。聞くところに寄ると、僕がいるクラスに現役のウェブ小説家がいるらしいのだ。




「芽吹さん、最近楽しそうに何やら携帯に夢中のようですね。何を見ているんですか?」


 ある日の昼休み。

 僕が教室で一人ウェブ小説を読んでいる所に、海月さんが話し掛けて来た。

 彼女のことを改めてもう一度紹介しておくね。

 髪が背中まで綺麗に伸びたプラチナブロンド。身長が僕より少しだけ小さい。簡単に言うとロリエルフ。めちゃくちゃカワイイ子なんだなこれが。長い綺麗な髪を横に流して軽くお辞儀するような姿勢で覗き込まれた僕は、その清楚な女性の雰囲気に一瞬ドキッとしてしまった。


「あぁ、えっと、今ウェブ小説呼んでたんだ」

「ウエ……?小説ですか?それが今日日の女子高生の嗜みなんですか?」


 キョウビ?

「いやいや、ただの僕の個人的趣味だよ。書店とかにはない全くの素人さんが趣味で描いてる作品がいっぱい投稿されててね、その作品を読んだり、自分で作品投稿も出来るんだよ」

「ほぅ、それは興味深いですね。あっ、そういえば……」

 海月さんが急に思い出したとポンと手を叩く。


「そこの方。たしかぁ~……」

 海月さんが僕の右後ろ、廊下側一番後ろの席を指差して、名前を思い出そうしていた。

 その席の人は去年一年生の時は違うクラスの人だった。今は学食にでも行っているのかいない。どんな人だったか考えたけど、まだよく覚えてなかった。


「う~……ん。ワシもよくは知らぬ」

 海月さんは2月に転校して来たばかりだから仕方ない。

「あはっ!海月さん、なんか渋い!」

「ん、渋い?」




 放課後。

 『小説家でもやろう』で現役高校生小説家になったらしい彼女と初めて喋ることが出来たのだが、何故今まで彼女の存在に何も気づかなかったのか?そもそも……。


城野内要じょうのうちかなめ。男子が嫌い。女子も嫌い。トマトとカレーが好き。……以上です」

 改めて自己紹介をしてくれた彼女に対し、その場にいた僕と、秋人、夕夏、八乙女さんは、彼女のその見かけに困惑していた。

 "彼女"と表現しているので城野内要さんは女子なのだが、今の格好はどう見ても男子なのである。可愛いマッシュルームカットに赤縁眼鏡を掛けた少し眠そうな、普通に男子の制服を来た子だ。可愛いマッシュルームカットに赤縁眼鏡を掛けた少し眠そうな、普通に男子の制服を来た子だ。


「城野内さん、今日は男子気分なんだ」

「男子気分て!?」

 秋人がなんか当然知ってたみたいに言ってるけど男子気分て何?

 僕は夕夏と八乙女さんにも知ってるのかと視線で聞いてみたら、夕夏は「まあね」と頷き、八乙女さんはなにか諦めたように溜め息混じりに頷いていた。


「僕は性別で服装を束縛されたくないので。……以上。では、僕はそろそろ帰りたいので。……以上」

「え、あ、はい……。あっ、あのっ……」





 聞けなかった。作者名とか作品名。なんか変わった人だなぁと思った。


「秋人は知ってたの?僕知らなかった」

 夕飯の後、ベッドに腰掛けて秋人に電話を掛けて、城野内要さんのことを話していた。


「あの人去年いろいろ問題起こしてたぞ。風紀的問題で。分かるだろ?」

 よく分からないからオウム返しに聞き返すと、


「制服の規則だよ。あの人そういうの完全無視だったらしいからな」

「あ~、なるほど。……僕はちょっと羨ましいかも……」

「ハルなら大概の校則パス出来ると思うけど」

「髪が白いのは仕様がないじゃん!僕のせいじゃないし!」

「いや、ハルの髪のことじゃねぇよ!」

「えっ、まさか、校長先生僕が女の子じゃないってこと知ってるとか!?」

「だから違うって。つーかハルは今百パー女子だから。俺は男に告ったのか?」

「うっ……いや……、そこは掘らないで」

「おい、掘るとか言うな」

「ん?何が?」

「……いや、分かんねぇならいいや」


 城野内要さんか……。明日はちゃんと聞いてみよっと。


 睡眠…睡眠…睡眠…


 ……って明日は土曜日だし!休みだった。






続く…

 ゲストキャラ、城野内要さんです。キャラ設定模索中。

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