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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春 #4 海月さんが鬼だと豆、投げにくいね。

 最近ちょっとだけ暇だったので2話連続で書きためて投稿します。

 ホームルームが終わったばかりの賑やかな教室で、ゆっくり帰り支度をしていたところに、夕夏と八乙女さんがワッフル屋さんに寄って帰ろうと誘って来た。ワッフルの誘いとはなんとも断り難い。当然即快諾。ただ、その時僕は何となく転校生の彼女が気になって声をかけてみることにしたのだった。


 ―――――――――



 僕は今、目の前の予想外の再発見に呆然としている。

 僕の隣を歩く彼女。転校生の海月冬耶さん。

 さっき教室で、一緒にワッフル屋さんに行きませんか?って誘ったら、普通に日本語で『行きたいです!』と嬉しそうに答えてくれた。

 僕の方が一方的に苦手意識があっただけで、彼女はとてもフレンドリーだった。

 夕夏と八乙女さんと僕のいつもの一応女子メンバーに、海月冬耶さんが加わって、僕達は学校を出た。と、そこまでは良かった。問題はその後。校門を通り過ぎようとしていた時だった。彼女。海月冬耶さんは突然どこから出したのか、何かのお面を被り始めたのだ。


「えっ、なんでお面!?」

「あはっ!何それめっちゃカワイイ。キテ○ーちゃん的なやつ?」

「いや、的なというかそのままでは?」


 夕夏と八乙女さんもそれに気付いて夕夏のテンションがまた無駄に上がってしまった。嫌な予感がする。でも今はそんなことはどうでも良かった。問題は彼女のその全体的ビジュアルにあった。


(あれ……、こんな格好の子、どこかで見たような……?)


 僕よりも身長が低い彼女を見詰めて記憶を辿る。不意に彼女がこっちを振り向いた。すると、


「♪~シンパシー俺とテレパシー!怒られたお尻ビシバシ!ブリジストンは石橋!」


(お面付けたらなんかラップ始めたぁー!?)


「カンカンミカン僕の第六感!ワッフルシャッフル僕パワフル!」


 お面の向こうから聞こえてくるラップは凄くリズミカルなのに、体は全く微動だにしない直立不動。それになんかジッと僕の方を見てきてる?僕この人なんか怖い!



「……ごめん僕お腹痛いから先帰る!」


 気付いたらそう叫んで走り出してた。


 突然帰ると言って走って行ってしまった芽吹を心配そうに見送る夕夏と八乙女さん。


「芽吹ちゃんいきなりどうしたんだろ。大丈夫かな?」


「春風芽吹さんでしたっけ?もしや便秘が改善したのでは?」

「……」

「……」


 お面のロリエルフからの思わぬお下品な推測だった。




 翌日。


「行ってきまーす!」


 いつもなら決まった時間に秋人が玄関で待っててくれるはずなのに、今日はまだ来てない。時間にはまだ余裕があるんだけど、いつも秋人に悪いし、たまには僕が秋人を迎えに行ってあげよう。一応秋人のか、彼女だし。たまには僕が秋人をお迎えしないと。


~~「秋人、朝だぞ。起きないと遅刻するぞ。朝ご飯も出来てるし、早く起きて」

「んぁ~、もう少し……」

「もぉ~。……今すぐ起きないと、キスしちゃうぞ」~~


「おいハル、目を覚ませ」

 束の間の妄想から覚めると、至近距離で秋人の顔がドアップだった。本当にキス出来そうな距離に。どうやらさっきから玄関前には着ていたらしい。

 自分のあまりの奇行に悲鳴を上げそうになるのをギリギリのところで押し止めた。もし悲鳴を上げれば直ちに母さんが現れて羞恥プレイが始まりかねない。


「ほーほー。お二方はそういうご関係だったのですね。春風さんは朝から欲求不満と。なるほど。実に健全な高校生ですな」

「へ……?」

「…………」

 3人の間に沈黙が流れ、見つめ合う芽吹と海月冬耶。数秒の後。


「にゃああああ!なな、ななななな、なんでここに、う、"うみつき"さんがいるの!?」

「……"みづき"です。みづきとうやです。改めましてよろしく。春風芽吹さん」

 こっちはあまりに驚いてあたふたしているのに、彼女は抑揚のない口調と無感情な表情で挨拶をして来た。

 秋人曰わく、いつも通り迎えに寄ったら、僕ん家の表札をじっと見つめてる彼女がいたらしい。

 そこで彼女が例の転校生であることを秋人は知って、軽く自己紹介をしていたと。


「ところで、なんで……ぅ~……海月さんがここに?家この辺なの?なんで僕ん家に?」

「クラスメイトで苗字知ってりゃ表札でだいたい気付くだろ」

「あ、そっか」

 昨日ちょっと話したばかりの不思議ちゃんな転校生にいきなり家の場所を知られたことが気になって、少し問い詰めるみたいになっちゃったけど、秋人が尤もな理由で返してきた。


「あの、とりあえず歩きながらお喋りしませんか?遅刻しちゃいますよ。まぁこの3人で揃って遅刻というのもなかなか面白そうな気がしますけどね」

 彼女にそう言われて僕と秋人は揃ってポケットから携帯を取り出して時間を確認した。確かにいつもより余裕がない時間だし、体が冷えて来ていることに今更気付く。


 僕、秋人、それに挟まれるように海月さんが真ん中を歩く。家から少し、ご近所さんを三軒程過ぎたところで海月さんに話しかけようとして、横を見たら海月さんがいなかった。


「!?」

 いくら僕より背が小さいからって見えない訳ない。僕は一瞬焦った。でもすぐに彼女を発見した。


「!……!?」

 何故か塀の上にいた。


「うおおっ、何してんの!?」

 秋人も遅れて海月さんの突飛な行動に驚く。

 エルフのような長いプラチナブロンドヘアーと制服のスカートが冬の冷たい風に靡いて、寒そうというよりは何かのヒーローみたいにカッコ良く見えた。

 ところで……。


「急にどうしたの海月さん。塀に上ったりして。パンツとか見えちゃうよ?」

(どこぞの変態なら事件起こしそうだよ。例えば兄ちゃんとか?)

 すると海月さんが秋人を見下ろす。「見えました?」的な目線。秋人はそれをなんと僕に受け流しやがった。「どうだった?」的な。だから僕は海月さんに向けて親指を立てて受け流してみた。「全然大丈夫だったよ!」的な感じで。

 すると彼女にどう伝わったのか、突然どこからかお面を取り出して、


「ばっちこい!」

「は?」

「ほえ?」

 赤鬼のお面を被ってそう叫んだ。

 僕と秋人がポカ~んな状態になっているのに対して彼女は、


「バホホホホ!ばっちこい!バホホホホ!ばっちこい!」


 なんか変なセリフを言いながら颯爽と塀の上を走って先に行ってしまたったのだった。



 遅れて学校に着いた僕と秋人はそこである真実に驚愕した。


「ハル、あの転校生ってさ……、」

「キ○ィーちゃんのお面の子だったんだね」

「……みたいだな」


「そろそろ二月だよね?」

「あぁ。節分も近いな」

「海月さんが鬼だと豆、投げにくいね」


 海月冬耶のおかげかどうなのか。季節の変わり目を意識することが出来た貴重な朝になった芽吹と秋人だった。


「ところで海月さんあの辺に住んでるのかな?」

「あ~、どうなんだろうな」


 たとえ近所じゃなかったにしても、あのトリッキーな不思議ちゃんなら毎朝芽吹の家の表札と睨めっこをしていても予想の範囲内だろう。

 海月冬耶さん……。なんか変わった子だなぁ。たまになんか怖くてはちょっとあれだけど。これから仲良くしたいし。

 芽吹はそこでふと思った。

 もしかしてこれからは海月さんも一緒に登校になるかも?ん~、それはちょっと……。

 秋人とはいつも二人で仲良し登校。去年の春から男子と女子の関係になってしまってもこれだけは昔から変わらない。彼氏彼女の間柄になっても同じ。芽吹にとっては大切な時間なのだ。

 芽吹はチラリと秋人を横目で覗いた。秋人もこっちを見ていて目が合ってしまった。


(秋人はどう思ってるのかなぁ……?僕といつも一緒に登校するの。他の誰かが一緒でも特に何とも思わなかったり?)





続く…

 なかなか思うように筆が進まず、2話連続執筆はここ一週間ほど寝不足と昼夜逆転が続きました。正直たまに嫌になってオールナイトで無双ゲームに逃げてた夜もありました。

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