春四番 噂の彼氏?秋人はダチです
さぁて、学園パートがついに始まりました。秋人と芽吹ちゃんの仲良しぶりは周りからどうイジられるのか?
芽吹ちゃんの制服姿、想像して下さい。
春らしい朗らかな風が流れる気持ちの良い朝。
玄関でトントンと可愛く靴を鳴らす美少女。紺のブレザーに襟元の赤いリボン。ブルーとピンクのチェックスカート。
そう。芽吹は今日から高校生なのである。
ここまでを一応おさらいしておこう。
・芽吹はつい最近まで男子中学生だった。
・春休み中に女の子の体になってしまった。
・今後は女の子の下着を着るようにと母から調教されてしまった。
さらに今日からは、芽吹が通う高校の女子制服を着て一日のほとんどを過ごすことになる。
「秋人君、芽吹のことよろしくお願いね」
「勿論ですよ」
「じゃあ母さん行ってきまーす!」
「男子はみんなパンチラ好きなんだから、スカート気をつけなさいよ!」
「へっ!?」
芽吹は思わずスカートを抑えて秋人を睨んだ。
「お、俺を見るな!」
「とりあえず行ってき…」
「女子同士でもおっぱい揉まれるかもだから気をつけるのよ!」
「ヒィッ、マジですか!?」
銀髪美少女という二次元ばりの外見のせいで、道行く人の視線の数がハンパない。そのため芽吹は無意識に秋人に軽くしがみつく形で歩いてしまっている。…わけだが、学校の敷地内に入いると、その影響は秋人に及んだ。どこからか聞こえてくる「なんでだ、リア充爆発しろ!」とか「イケメンじゃないと美少女とは釣り合わないのか」とか。
(俺とハルはそういうんじゃねぇし。つーかコイツ、クラス俺と別だったらどうするんだ?)
そうこうしているうちに学年掲示板の前に着いた二人。
「………」
「マジか…?」
芽吹は、自分の名前と秋人の名前を交互にキョロキョロと確かめる。秋人は険しい顔になっていた。
芽吹は1年A組。秋人は1年E組。
「マジか…!?」
「マジだな」
クリッと大きな瞳を不安げに潤ませて見上げてくる芽吹。それを見た瞬間、秋人は堪らなくなってよそ見をした。
(うぉっヤバッ!なんつー顔で見てくるんだよ!一瞬変な気お越しそうになったっつーの)
「…ヨシ!あ、秋人はぼ、僕なしでも平気だ、だよな。僕だって別に知らない同級生ばっかりでも平気だぜ。す、すぐに友達100人出来ちゃうんだぜ!」
さっきまでの不安げな表情から、今度は精一杯強がって見せる芽吹。秋人はそんな芽吹に、
「そんなちっぱい胸張っても説得力ねぇぞ」
「ちぱっ…!!こ、これは僕のせいじゃない!今のはセクハラ発言だ!」
「はははっ。またあとでな。しっかり友達100人つくれよ」
からかうように笑いながら、秋人は自分のクラスに入って行った。それを見送った芽吹も、なんとか笑顔をつくり、A組のクラスの教室に入った。
その途端、芽吹は予想もしていなかった騒ぎに巻き込まれてしまった。
〈秋人サイド〉
秋人は自分の席に着くなり、周りの男子共に囲まれた。
「君かぁ、超絶美少女とラブラブ登校してきたってのは?」
「で、その美少女天使の名前は?ってか同じクラスじゃないの?」
「…いきなり近いな。鼻息荒いし」
秋人がそんなウザイ目に合っている頃だった。
「うおおおおー、白銀の姫キター!!」
「きゃー、同じクラスじゃ~ん!超可愛い~!」
聞こえてきたこの歓声。どう考えてもこれは芽吹のいるA組の方からである。
「うわぁ悔しい!」
「天使が降り立ったのはA組でしたね」
(ハルのやつ、ヤバいモテぶりだな。予想以上だったな。大丈夫かな?)
芽吹達の入学式は問題なく終わった(校長の話が長いことを除いて)
HRの時間はクラスの自己紹介ということで、廊下側から名簿順に喋っていくことになった。
「まずは先生から自己紹介させてね。えぇ、このクラスの担任になりました。美城 雪花です。みんな、よろしくね」
先生は黒板に大きく名前を書いて自己紹介をした。
綺麗な赤茶色の長い髪を頭の天辺でポニーテールにした、ハリウッド女優ばりのVIPフェイスの先生である。男子は「オォォ…!」。女子は「ありえないわ…!」
挙手をした男子一名。
「趣味は何ですか?あと彼氏は募集中ですか?」
その質問に先生は、
「趣味って程でもないけど、まぁ、ドライブかしらね。彼氏は一応募集中ってことにしといてもいいかな?」
「おっ!じゃあっ…」
遮るように、
「高校生のガキに興味はないわよ」
男子一名玉砕。
名簿順での生徒の自己紹介が始まった。
(僕は最後の方だし。別にウケ狙う必要もないし。何を喋ろうかなぁ?)
芽吹は余裕な気分でみんなの自己紹介を聞くことにした。
「俺の名前は有馬 京弥。趣味は、CD聴いたりとか、漫画読んだりとかです。嫌いな物は甘い物。以上です」
みんなそれぞれが様々な自己紹介をしていった。比較的男子はシンプルに。たまにウケ狙いな感じで。
「ウィッス!俺は出島 太矢。血液型はたしかO型。星座はたぶん蟹座らへん。可愛い女子大好きッス!あとDVD鑑賞とか好きッス」
「お前はエロDVDの方だろ!」
「バカ、ちげぇよ!」
「ヤダァ~、出島君サイテ~」
こんなやり取りで賑わったりする。
しかし、この時芽吹はもう半分夢の中に入っっていたのだった。
…………………
現在1年A組のクラスは、寝ながらマイナスイオンを放つ芽吹の姿に癒やされ状態、思考停止に陥っていた。
両手で頬杖を付いて、ムニュっと潰れた寝顔がなんとも言えない愛らしさを醸し出していたのである。
「きゃあ~可愛い~。子猫みたぁい」
「やべぇ~、頭超撫でてぇ~」
まるでお昼寝中の猫扱いである。そんなことなどには気付かずスヤスヤと眠る芽吹。
ようやく我に返った美城先生が芽吹の席までくる。芽吹の顔を覗き込み、母親気分で起こす。
「芽吹ィ~、もう起きる時間よ~。起きないと食べちゃうゾ~?」
すると、
「ひゃっ!!ごめんなさい食べないで!!…はへ?」
一瞬教室中が静かになる。
状況把握に伴い、首から段々顔が赤く染まってゆく。そして…、
「萌ェェェェェェ!!」男女共に歓声が上がったのだった。
「えっ…と、は、春風 芽吹です…」
居眠りという失態により、みんなからの注目を一身に浴びる羽目になってしまった芽吹は、顔を真っ赤にしながらやっとのことで名前を言えた。
(はぅ~、みんな何でそんなに注目してくるんだよぉ。やりづらいよぉ)
「え、えっと、えっと…うぅ~…」
芽吹はあの買い物以来、人の視線に敏感になってしまっているらしく、今の芽吹はもうフリーズ寸前まできてしまっていた。
しかしそんな時だった。
「キサマらいい加減気付け。そんなガン見されてたら言えるもんも言えないだろう」
芽吹はハッとして後ろを振り向いた。
女性独特のドスの効いた低音。それでいて澄んだような声音。宝塚の男役をイメージすると分かりやすいかもしれない。そんな声の主は、椅子に浅くもたれかかり、腕と足を組んで座っていた。背中まで伸びた漆黒のストレートヘアー。綺麗な顔立ちにキリッとした目元。前髪ぱっつんなところが凛々しさを現している。
(うわぁ、なんかカッコイイ人だなぁ)
彼女は、一瞬芽吹と目が合うと、若干恥ずかしそうに目を逸らした。そんな素振りを特に気にするでもなく、芽吹は一呼吸置いて自己紹介を続けた。
「えっと、血液型はB型です。あと、趣味はゲームを少しです。好きな物は、カレーライスとエクレアが好きです。嫌いというか苦手なのは、ゴキブリと吠える犬、かな?です」
思わず大きな溜め息をしながら机にへたり込んだ芽吹。
「ねぇねぇ、春風さんて僕っ子なの?」
「僕っ子?え~っと、すいません誰ですか?」
いきなり話し掛けてきた隣の子は、目を点にして聞き返してきた芽吹に、苦笑いを浮かべた。
「寝てたもんね。アタシの名前は鳴海 夕夏。よろしくね!」
全員の自己紹介も終わり、最後は質問タイムとなった。真っ先に質問されたのは勿論芽吹だった。手始めに、
「芽吹ちゃんて呼んでもいいですか?」
「べ、別に。だ、大丈夫です」
とか。
「芽吹ちゃんはなんでそんなに可愛いんですか?天使なんですか?(銀髪だし)」
「かっ、カワっ!?」
とか。もう顔が沸騰してきている。しかし次の質問で、芽吹の温度は平常に戻るのである。
「芽吹ちゃんて彼氏募集中?」
こんな質問に、
「゛彼氏゛は募集しないです」
「ばか。芽吹ちゃんには今朝一緒だった゛噂の彼氏゛がいるだろ?」
「えー、芽吹ちゃんもう彼氏いんの~」
数人の男子のそんな会話が聞こえてきたのである。それに対して芽吹はというと、
「噂の彼氏?秋人はダチです。幼馴染みのダチなんです。だから彼氏とかではないです」
すると今度は、
「きゃあー、幼馴染みだなんて超漫画っぽーい!」
「芽吹ちゃんてもしかして百合系!?」
「きゃぁぁ!私芽吹ちゃんとなら百合になれるわ」
女子はこんな有り様だったりする。
(百合って、つまりアレだよね。う~ん…なんか複雑だよぉ~。早く元に戻りた~い)
続く…
キャラクターのビジュアル設定は正直まだイマイチな気がしますが、今後は読者さんの想像力にお任せします。
芽吹ちゃんの制服姿、可愛いかったですか?