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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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第13話 乙女ってるって何ですか!?

 芽吹ちゃんと秋人の複雑な恋心、難しいです。

「……オラごとば嫁こさしてけろ!」



 僕の目の前で秋人が女子に告られた。というかこれは、いろいろすっ飛ばしてもはやプロポーズ!?

 僕、夕夏、八乙女さんは唖然。有馬君は相変わらずあまりリアクションがない。出島君は「方言美少女ギャップ萌え~!」とか言ってたけど。それより何より問題は秋人だった。

「い、今のはツガるっ……これも違うから。別に訛ってないから!」

「秋人、なんか凄い子に告られたね。どうするの?」

「……」

 秋人は真っ直ぐ彼女の方を睨むような表情で何も答えない。

 こんな秋人の顔ちょっとみたことないかも。僕は恐る恐る顔を覗きこんだ。

「秋人?」

 秋人はほんの少しの間目を合わせて来て、何かを考えるように目を瞑った。この間ほんの2~3秒ほどだったと思う。

 そしてまた彼女の方を見る秋人。

「分かった。じゃあとりあえずアドレス教えてくれるか?」

「え!?」

「え!?」

 僕と彼女の声が重なった。

「ちょっと秋人君何言ってんの!?」

「どういうつもりだ!」

 夕夏と八乙女さんから非難の声が上がった。


 この時、秋人を見詰める芽吹の大きな瞳は憂いに揺れた。一瞬心臓が跳ね上がり、締め付けられる感覚に襲われた。芽吹は何故かそれを静かに押し殺した。何故か……。


 僕は秋人から目を離した。嫌だった。何が嫌なんだ?寂しい……。どうして?

 別の僕が問い掛けてくる。

 秋人が僕の側から遠くなる。いなくなるかも。

 秋人は男だ。彼女が出来て当然だ。僕は秋人を応援する。だって友達だし。

 応援できる?本当に?


 今までずっと一緒だったのに。僕がこの身体になってからも気持ち悪がらずにいつも側にいてくれたのに。なんで……?今になってなんでそんな……?



 翌日。芽吹は秋人と顔を合わせるのが嫌だった。会話するのもなんとなく気まずかった。


 昨日、あれから秋人は彼女とアドレスを交換していた。名前は横磯 花というらしい。


「なんか文化祭の時の模擬店で俺を見たのが切っ掛けで、昨日のアレらしいんだ」

「……」

「でもビックリだよな。あんな告り方。大胆すぎだろ」

「……」

 芽吹は何も言わず、無表情で秋人の言葉を聞いていた。そんな芽吹の冷たい反応を、秋人は分かっていて敢えて話し掛けていた。


(ハルは俺のことどう思ってんだろう?やっぱりまだ男の時のまま、ただの親友なのか?)


(秋人、やっぱりあの人と付き合うのかな?そういうのなんか嫌だなぁ。……嫉妬っていうのかなこういうの?)


 その日の昼休み。

「柊秋人、貴様どういうつもりだ!?」

 ガタンとテーブルを叩いて秋人にくってかかる八乙女さん。テーブルの上の昼飯が跳ねる。

「ちょっと秋奈っち、今ここで暴れないでよ!」

「うぉーー、俺のチキンカツがぁーー!?」

 八乙女さんを止めに入る夕夏。その横でおかずのチキンカツ一切れを取り落として絶叫しているのは出島君。

「うるさいぞこのチキン野郎!」

 八乙女さんの怒りの火の粉は出島君に飛んだ。

「チキン野郎がチキン落としたか」

「はぅぐっ……!」

 トドメは有馬君だった。


 八乙女さんは、僕と秋人が、……その、付き合っている(いわゆる〔所謂〕カップル)と、或いはそれに近い関係だと思っているから、秋人があの横磯さんに一応のOKを出した事に、僕のことを思って怒ってくれているらしい。

「八乙女さん落ち着いて!大丈夫だから。僕と秋人はホントそういうのじゃないから」

 芽吹は苦笑いを浮かべながら八乙女さんを止めに入る。

 今まで幾度となく繰り返してきたこのやり取り。前までは、本質は男の子通しの芽吹と秋人。カップルに見られるのは不本意なことだった。しかし今はどうだろう。いつも通り否定の態度を取った芽吹自身が、違和感と複雑な胸の痛みを覚えていた。

「横磯 花。2年生。テンパるとたまに出る訛りはおそらく東北出身。文化祭以前から秋人の存在を意識していた。芽吹ちゃんとの関係の噂が確実だと思い、今まで手を出せなかった。……と」

「でも例のベストカップルショーの一件で彼女に火が付いたと」

 珍しく真面目な顔で、某探偵風に語りだした出島。そこに有馬も少し加わる。

「もうみんな勘弁してよ。この話はもう無し。秋人は昔からモテてるから特に気にしてないから。と、ところでさ……」

 芽吹は無意識に秋人と目が合わないようにして新しい話題を話し始めた。そのぎこちなさに気付いたのは八乙女さんと、以外にも出島だった。秋人も分かっていたが敢えて知らないふりをしていた。


 横磯さんは登校時間のあんなに人がいる前で必死になって告白して来たんだから、秋人は彼女さんを大事にしないといけないんだ。いくら幼馴染でも僕が我が儘を言っちゃダメだ。でも……。

 あれから数日。

 芽吹は今、彼女が出来た秋人に対して嫉妬しているということをなんとなくだが自覚していた。でもその気持ちの本当の意味までは理解していなかった。

 ここ数日、下校は芽吹一人か、夕夏と八乙女さんと3人で帰るようになっていた。秋人とはクラスが違うから、会わなければ一日中一度も会わないこともある。タイミングが悪ければ秋人が横磯さんと一緒にいるところを見ることもあった。秋人は大抵誰にでも気さくなやつだ。だから横磯さんと一緒にいる時だけ楽しそうだとかは思わない。けど、そんな場面を見ると、秋人を意識すると、息が詰まる感じがする。胸が苦しくて、どうしていいか分からなくなる。凄く心細い感じがして、たまに泣きそうにもなる。



「芽吹ちゃ~ん、久し振り私とお風呂しよっかぁ?」

「あぁ、ごめん母さん。一人で入るから。あとお休みィ~」

「……あらま?」

 いつもの楽しい拒否反応もなく、風呂&就寝を早々と告げていなくなった芽吹を、母菜花は唖然しつつ、芽吹の異変に小さく唸った。

 ベッドに座り、訳もなく鬱々と、いや訳が無い訳ではないが、ハッキリとしないモヤモヤ感に重い溜め息を漏らす芽吹。


 小さい時からずっと、いつも一緒だった秋人。やたら女子にモテて、たまにちょっと悔しいとか思った頃もあったけど。秋人は僕にとって家族でも兄弟でもない、頼りになる一番の親友なんだ。

 僕時々、こう思う時がある。

 僕が生まれも育ちも¨ちゃんと女の子¨だったなら、秋人に¨ちゃんとした恋¨が出来たかもって。でも現実はダメなんだよね。だって……ダメなんだよ。いつからだろう?秋人のことをこんな風に思うようになったのは。本当は……

「……本当は秋人のことが……好き……」

 この時芽吹は無意識にその言葉を声に出して呟いていた。それがマズかった。

「いやぁ~ん、芽吹ちゃんってば乙女ってるぅ~!やっと自分の気持ちに気付いたのね」

「なっ、ちょっと母さん、いつの間に!?不法侵入だ。ってか乙女ってるって何ですか!?」


 その頃秋人は。

「あいつの気持ちを確かめないと。クリスマスまでに……」

 確かな決意を胸に、ベッドに入るのだった。





続き…

 横磯 花の場面をもっと出そうと思います。

 出ます 出します 訛らせます。

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