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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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第8話 ハバネロカレーで

 今回は秋人サイドの内容です。

 今日は遂に夕陽ヶ丘高校文化祭だ。ハル達のクラスは喫茶担当。それがなんと女子はメイド服らしい。男子はスーツ。執事ってやつかな?

 メイド服姿のハル……絶対可愛い。って何想像しちゃってんだ俺。

 因みに俺はハル達のクラスとは別だ。喫茶とは対照的に食堂担当だ。カレーライスとか、うどん、そば、ラーメンとか。パスタもあったかな。中学ん時とはいろいろ違う高校の文化祭。ハロウィンイベントも合体してるし、とにかく楽しみだ。


 突然だが、学校の玄関でハルが夕夏に拉致られた。まあよくあることなんだが。

「秋人君、芽吹ちゃんの靴お願いね!」

「お、おう……」

 夕夏が俺に言った。

 え、何これ?ハルが何か叫んでるけどよく聞こえない。確かに何か言ってる。でも分からない。

 ハルの姿が視界から消えて数秒後、別の女子が通りすがりに俺の手からハルの靴を奪って消えた。何これ?

 予想するとおそらく、嫌がるハルに無理矢理メイド服を着せる作戦だろう。頑張れハル。



 午前10時。文化祭開祭のファンファーレが校内、郊外に響き渡った。


 俺の担当は食堂のウエイター。10時から1時までの午前の部だ。10時から11時まではまだ客もほとんど来ないだろうし、楽だ。

 …と思っていたんだけど、そんなことはなかった。何故なら、

「早く飯食って次のメイド喫茶の方に行こうぜ。ものすっげぇ美少女がいるらしいじゃん!」

「俺さっきチラッと見たぞ。なんか銀髪だった!」

「マジか!?」

 はい。分かってました。こうなることは。早速ハル現象。春一番の強風じゃなくて、むしろ台風的な?

 11時30分を回って益々食堂、喫茶エリアの人数がヤバいことになって来ていた。

  ハルは女体化してからあのビジュアルとクオリティーだし、多少は女子に妬まれるとかあってもおかしくないんだけど、

「きゃああ、芽吹ちゃ~ん、こっち向いてぇ!」

「ポーズ、なんか可愛いポーズとかしてぇ!」

 先輩女子からも絶賛人気爆発中だし。

 夕夏達がはしゃいでどうこうしなくてもあまり変わらないだろうな。

 ウエイターの仕事を卒なくこなしつつ、俺は客の会話や、廊下からの声を気にしていた。単純に俺はアイツのことが心配なんだ。断じて嫉妬とか、そんなんじゃない。



「あ、いらっしゃいま……うっ……!」

 お客の来店に気付いて振り向くと、2名様が来店していた。

「お疲れ様。着物にたすき掛け、なかなか似合ってるね柊君」

「あ、ど、どうも」

 生徒会長姉崎ルイ先輩だ。

「で、そっちのダークマターの化身みたいな人は?」

 分かってる。分かってるよ。筑紫先輩だってことぐらい。ハルがあの状態だから、シス魂がヤバいことになってるんだろうな。

「秋人よ……」

「な、なんですか?」

「コイツを、コイツの接客を頼む。俺は……この空間にはいられない。じゃ」

 地の底からの呻きのような声でふるふると震える手で姉崎先輩に指を差して、出て行こうとする筑紫先輩。


「はい、お待たせしました。姉崎先輩が狐うどんで、あ~……筑紫先輩がハバネロカレーで。マジで大丈夫ッスかこれ?」

 さっき出て行こうとしていた筑紫先輩だが、すぐに姉崎先輩に襟首を掴まれて引き戻された。

 俺の予想だけど、多分あのまま行かせてたら、ハルに絡んだ男子はみんな人生の最後を見ることになってたかもしれない。



 午前と午後のシフトチェンジは1時。午前の最後に俺にとってちょっとした事件があった。

 12時50分を回った頃。あと少しで交代だと思いつい気を抜いていた頃だった。2名の妖怪コスプレの客が来た。ハロウィンだからモンスターや、オバケは2年生が担当して校内のそこら中にいる。しかしだ。にしては妙に古風というか。あと、何か落ち使い感じがした。俺だけか?

 片方はスラッとした女性。これはあれだ。貞子ってやつだ。ハルが見たら泣いて逃げるか、フリーズだな。んでもう1人。こっちが問題だ。さっき妖怪と言ったが、これは¨妖怪¨でいいのか?サラリーマンのスーツに頭がビデオカメラなんだ。えーーっとこれは……映画館で出没するアレだよな。

 俺が軽く汗タラリでリアクションに困っていたら、その2人が話し掛けてきた。

「芽吹ちゃん凄い人気ね。私もツーショットしてもらおうかしら?」

  貞子風の彼女のそんな呟きに俺は素早くアドバイスした。

「それは止めて下さい。アイツとアイツのファン達がとんでもない事態に陥ります」

 ん、2年生の声にしては妙に聞き覚えがありすぎるな?

「僕これあれだから。¨映画泥棒¨じゃないから。カメラ小僧だから。一つ目小僧的な」

 あ~、自分で説明しちゃったよこの人。¨映画泥棒¨って言っちゃったよ。まぁ、別にどうでもいいんだけど。やっぱりこの人も……。


 山菜そばと明太子おにぎりを食べて帰って行く貞子と映画泥棒……じゃなくてカメラ小僧。

「ありがとう御座いました!」

 何か腑に落ちずに業務的に見送る俺。頭を上げて2人の後ろ姿を見る。そして、微かに聞こえた会話内容に俺は一瞬絶句してから納得した。

「流石は¨私の娘¨ね。絶対的美少女だわ」

「はぁ~。芽吹ちゃんとツーショット撮りたいなぁ」

「ダメよ。あの子オバケは苦手だから、こんな格好で出て行ったらあの子どうなるか」

「いや……、菜花さんのそれはマズいだろうけど、僕のこれは特に……」

 パリン!

「ぐぅおーーレンズがぁーー!?」


 これはアイツには内緒にしておこう。うん。

 よし。ハルも午後は自由だろうし、一緒に飯食って午後担当の連中を冷やかして回るか。





続く…

 ハロウィンコスプレのキャラの紹介とかもどこかで紹介しよう思います。

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