春二番 二次元ヒロインとか言うな(≧×≦)
ど、どうも。春風 芽吹です。
やっとって感じで2話目ですね。
ネタバレしちゃうと、美空 青雲先生は至極チョイ役です。
→「私がチョイ役!?バ、バカな…パコーン!」
はい!本編へどうぞ。
―事故から二週間―
今日、とりあえず退院することは出来た芽吹。家に向かう車の中、芽吹はこの前主治医に受けた説明を思い返していた。
極普通の男の子から、ある日突然、銀髪美少女へと摩訶不思議性転換してしまった今後の芽吹の生活環境や、今後の定期的な経過と検査などについてだ。
「具合の方はどうかな?まぁ、いろいろ驚くことばかりだろうけど」
少し芽吹の状態を確認しつつ、
「とりあえず自己紹介させてもらおうかな。私の名前は美空青雲だ。今後、君の主治医を勤める。至って゛真面目な゛医者だからね」
どこかわざとらしく自慢げな態度で言う。
「私は今まで特殊な患者さんの性転換手術や、その後のアフターケアも任されているんだ。だから心配しないで、身体に何か違和感を感じたらいつでも私に頼りなさい。ご両親も、自分らだけで答えを出さないで、何かあればすぐに私に連絡してください」
芽吹と両親は揃って大きく頷いた。
芽吹が俯きぎみに呟いた。
「先生、僕…この体、すぐにはもとに戻れないんですか?」
切なげに先生の方を見上げた芽吹。美少女の微かに潤んだ瞳の上目遣い。芽吹自身は無意識だが。予想外の破壊力に美空青雲はドキッと来てしまっていた。
(クッ…な、なんてキューティーなんだ!?)
芽吹の両親の菜花と風吹はさらにその上の反応をしていた。
(オゥフ!美少女芽吹ちゃんの可愛いさ、『あの花』の『めんまちゃん』に匹敵するわ。あ、鼻血が…)
(ヌォー!イイ!イイぞ芽吹っ!父さんは今の芽吹がいればそれで良い。よし、いっそ筑紫の存在を無かったことに…)
邪な鼻血を出して我が子を眺める親2人。
「ゴホンっ!あ~…今後の芽吹ちゃ…芽吹君の身体に関しては、定期検査、問診の結果次第で、としか今は言えませんね」
まともにそう言われ、小さく頷こうとした芽吹、だったが、
「先生、芽吹ちゃんはもうこのままでよろしいと思いません?可愛いし。心のケアも私か先生がいれば、心も女の子に出来ますよね?可愛いし」
「そうですよ。家にはもう長男がいるんだ。芽吹ちゃんが女の子であればバランスが良い。可愛いし。七五三の時の芽吹ちゃんに女の子の着物を合わせたら可愛いかったんですよ。一緒にお風呂入りたいし」
「そうよ!絶対に一緒にお風呂入るんだから!」
やたら゛可愛いし゛が連呼されていたし、何やら非常に危険性の高いワードが二度も聞こえた気がしたが、無理やり忘れた芽吹だった。
「一番近い障害、といいますか、予想される症状なんですが」
先生はそこで一旦言葉を切った。言葉を選んでいるようである。
「身体そのものの経験値、つまり女の子の身体としてはまだ日が浅いので、いつになるかは分かりませんが、近々確実に生理は来るでしょう」
「…え?」
「…え!?」
「あっ!」
上から、芽吹、風吹、菜花である。菜花は納得。芽吹はありえないと言った表情。風吹は一人娘の父親として色んな意味でショックといった表情である。
久々の我が家に到着した芽吹。玄関先には秋人が待っていてくれていた。
「退院おめでとうハル」
「う、うん。ありがとう、秋人」
「ん、どうした?なんかぎこちないぞ?」
芽吹の様子に、訝しむ秋人。
芽吹は俯いたまま秋人とは目を合わせられず、何かに迷っているようだった。
少しして、秋人が先に喋った。
「お前、俺に嫌われるとか、オカマみたいだからキモいとかって思われてるって、そう思ってんだろ?」
芽吹は小さく頷いた。その返事に秋人は大きく溜め息を吐いた。
「ばぁか。お前、俺と何年親友やってんだよ。幼馴染みだろ?俺がお前のことそんなふうに思うわけないだろ?」
「……」
「今のハルの姿も、今までのハルも、俺にとってはたった一人のハルだよ。ずっと幼馴染みで親友だ」
「…うん」
少し微笑みをみせて小さく頷く芽吹。それを確認して秋人も頷いた。
「よし。今度また俺達の友情を疑ったら、その可愛い顔を殴る」
「か、可愛いって言うなぁー\(≧Д≦)/!」
「ちょっと秋人君、なんてこと言うの!?」
「おっとやべ!」
芽吹の両親が飛び出して来たところで秋人は自分の家へと逃げて行ってしまった。逃げながら芽吹に手を振る秋人に、少し元気が戻った芽吹も手を振り返したのだった。
〈秋人サイド〉
「なぁんかもっともらしく格好いいこと言っちまったなぁ~。つーかハルが可愛い過ぎなんだっつーの!格好つけたくもなるって!」
顔がニヤけている自分を自覚しつつ、自宅に帰宅する秋人だった。
夕方。夕飯がテーブルに並び始めてた頃。久々の母菜花の手料理に興奮気味の芽吹。嬉しそうなな芽吹の様子に、菜花と風吹も嬉しそうに笑う。 ふと、芽吹は思い出したように聞いてきた。
「そういえば、兄貴は?」
「筑紫は昨日から部活の合宿だ」
「僕の今のこの姿、兄貴は?」
「いや、退院のことは言ったが、身体のことはまだ言ってないぞ。サプライズにしようかと思ってな」
家族なんだから、一緒に住んでるんだからどうしようもないが、不安で顔が引きつる芽吹。
そうこうしていると家の電話が鳴り、菜花が出た。
「えぇ、もう家に帰ってきてるわよ」
「あっ、ちょっと筑紫!?…切れちゃった。筑紫、明日大急ぎで帰って来るって」
自分と顔を合わせたらどんな顔をするのだろうか。今まで弟だったのが妹に。しかも、二次元の世界から来ました。銀髪美少女的な見た目。自分で鏡で見ても顔が赤くなるほどの美少女だ。さすがにまだ慣れない。
いろいろ考え込む様子の芽吹に、
「芽吹、筑紫なら大丈夫よ。すぐに順応してくれるわよ」
「母さんの言う通りだ。゛兄妹゛なんだから大丈夫」
(今絶対゛兄弟゛じゃなくて゛兄妹゛って言ってた気がするなぁ。この親2人はなんなんですか?困ってる息子をほったらかして、このありえない状況に順応しきってませんか?むしろ喜んでさえいる。女の子なんて嫌だぁー(>△<))
内心頭を抱え込む芽吹であった。
夜9時を回った頃。久々の我が家の空気にはんなりしていた芽吹。少し眠くなって来たため、お風呂に入ってしまおうと、タオルと着替えを持ってお風呂場に向かった。
「あっ、ちょっと芽吹、一人でお風呂?大丈夫なの?」
「ほぇ、何が?」
「何がってあなたまだ…」
菜花は何かを伝えようとしたが、芽吹はそれをスルーして眠そうにお風呂へと歩いて行ってしまった。
「芽吹ちゃん女の子計画の第一歩、『女の入浴方法手取り足取り仕込んじゃおー!』を敢行しちゃおうかしら」
脱衣場のドアが閉まるのを見詰めながら邪な笑みを浮かべる母菜花だった。
芽吹は特に何もかんがえずに上着を脱いだ。次にTシャツを脱ぐ。ここでまず上半身裸になった。しかし、芽吹はいつも流れでズボンを脱いだ。
「…………………あ…れ……?」
芽吹は、胸筋極分マッチョでは決してない。しかし、今芽吹の視界にはそれほど大きくはない山が二つある。また、パンツ一丁になった下半身にはいつもはあるはずの膨らみが無い。
「…………」
芽吹は意識が急速になくなって行く感覚を視ていた。
中坊としての本能が、これは見てはいけないと判断したのだろう。菜花が脱衣場を覗くと、その場に直立不動でフリーズしている芽吹が発見された。
えっちぃことには全く免疫がない中坊のメンタルで、同じ年頃の女の子の体を生で見てしまったようなものなのだ。たとえ自分の体だとしても、芽吹はまだその体に慣れていない。フリーズするのも無理はないだろう。
しかし、いつまで続くか分からないこの状態。いずれにせよ慣れておかなければ今後の生活に支障が出てしまう。
現在、母菜花は、今出来る限りの最善策を考えていた。
1 芽吹を再起動させて、口答だけで洗い方を教える。
2 風吹に手伝ってもらって…それはボツ。゛あの人は危険゛だわ。
3 再起動させて、力ずくで混浴に持ち込んで、女の入浴のイロハを教え込む。
4 再起動はさせず、あえてこのまま美味しくいただく。
「オッケー決まり。4番にしましょう!」
「…はっ!」
「!」
迷う間も無く4をチョイスした菜花だったが、本能的に危機を感じたのか突然再起動した芽吹。
「チッ」
「ふぇ、母さん?」
「ふ~、やっと気がついたわね。サァ、とっとと体洗っちゃいましょ!」
そう言って菜花は、芽吹の最後の砦であったパンツを剥ぎ取った。
「サァサ、女の入浴イロハを手取り足取り゛乳取り゛教えてあげるわよ!」
「ふぇ、ちょっ、ぃや、母さんやめっ、あっちょっ!いやぁ~!(恥)」
翌日。 午前10時。
芽吹の部屋。
何故か顔を赤くして、半目で秋人を睨む芽吹と、同じく赤い顔に鼻にティッシュを詰めた秋人が申し訳なさそうに座っていた。
朝から芽吹に携帯で呼び出され、家にお邪魔した秋人だったが、美少女芽吹の乱れたパジャマ姿に不覚にも鼻から鮮血を噴いてしまったである。
原因が自分である自覚がない芽吹に、秋人は正直に説明してあげたところ、現在の気まずい空気になってしまったのである。今の芽吹は秋人に対して貞操の危機を警戒した態勢になっている。 お互いにチラチラと目線を合わせつつ、しばらくしてようやく片方が喋り出した。
「あ、秋人はさぁ、今の、僕のこと…ど、どう思ってんの?」
芽吹は恐る恐る聞いてみた。
秋人は芽吹の足元をぼ~っと見詰めながら、少しの間考えた。
「う~ん…、ハルはどこまでもハルだよ」
「それは昨日も聞いたよ。そういうんじゃなくて…だから…」
この時の芽吹の表情に、秋人はなんとなく今の芽吹の不安の中身が分かった気がした。
「正直に言っちゃうと、今のハル、ムッチャクチャ可愛いよ。あと自覚ないところとか危なっかしいけどエロい!」
秋人はイタズラがうまくいった時の悪ガキのようにニカッと笑って見せた。
「か、可愛いとか言うな!エロくない!僕をそんな風に見てるお前の方がエロい(≧×≦)!」
顔を真っ赤にして腕をブンブン振って起こる芽吹の姿に、秋人は溜まらず笑ってしまった。
「くっ、くくはははは!」
「こらぁー、笑うなぁー!」
「ハル、その見た目でツンデレって、マジで二次元ヒロインだな。ハハ!」
「なっ、くぅ~…二次元とか言うなぁ~」
ちょうどその頃、バス停を降りた一人の青年が、デカいスポーツバッグを背負って、
「妹よォー、今お兄ちゃんがいくぞォー!!」
奇声を上げて猛ダッシュでどこかへと走って行った。
続く…
兄貴が帰って来る!?ってかそう言えば、最後んところ、「妹よー!」とか言ってなかった?あれ?僕の事情もう知ってる?