第3話 女は中身
久々にまる1日の休日を貰えました。というわけで今回はゆっくりまったり執筆することが出来ました。
今回は主に鳴海夕夏視点の内容になってます。今後の伏線のつもりでもあるので、そこんトコよろしくです。
「有馬京弥君……」
携帯の画面、アドレス帳に視線を落としてポツリと呟く。
「文化祭までに告白したいなぁ……。有馬君、今何してるのかなぁ?」
鳴海夕夏。芽吹のクラスメートで、芽吹、八乙女秋奈といつも一緒。性格は明るくて軽いノリで、ちょっぴりギャルっぽい。しかしその実、かなりお金持ちの家のお嬢だったりする。
そして最近、芽吹達仲良しメンバーの男子の一人。有馬京弥に片思い中だったりする。
同じメンバーの出島太矢とは腐れ縁で、何だかんだといつも連んでいる。お調子者の出島に比べて基本口数は少ない。噂ではかなり喧嘩が強いらしいが……。
ある日。その日もいつも通りの登校になるはずだった。 アタシはいつも秋奈っちと一緒に登校してるわけ。そう。芽吹ちゃんと秋人君みたいにラブラブ登校。百合っぺな秋奈っちに仕方なく付き合ってあげてるの。
「なっ、わ、私は違う。ゆ、百合などでは……。そもそもその¨百合っぺ¨という言い方は何なんだ!?」
分かりやすく赤面しながらツッコんでくる秋奈っち。
「え、何って、百合を可愛くしただけだけど?」
「そういう意味ではない。可愛くとは何だ!」
「じゃあレズの方が良かった?あ~GLとか?」
「なっ、それはあまりに生々しいな……」
ここだけの話、秋奈っちは実は、芽吹ちゃんのことが好きなわけ。アタシだって芽吹ちゃんのことは大好きだよ。だって可愛いじゃん。でも秋奈っちの場合は女友達のじゃれ合いとかとは違うんだなぁ~これが。
話がずれちゃったけど、今日、アタシに事件が起きたの。それはなんと、下駄箱にラブレター!!超レトロぉ~!!
因みにこの現場、ってかすぐ横にいた秋奈っちが、目から怪光線でも出して手紙を焼き切れりそうな顔してた。
「うっそマジッ、アタシにラブレター!?」
「夕夏、悪いことは言わない。今すぐ捨てろ。焼却炉に投げ込め。あるいはシュレッターで処理しろ。職員室にある」
「いぃやいやいや、それはいくら何でもダメでしょ。一応人として。ね。中身くらい見ないと」
― 鳴海夕夏ちゃん。君に伝えたいことがあります。9月10日の放課後、裏庭焼却炉前で待ってます。 ―
¨好き¨とは書いていない。名前はないけど99%男子だろう。
自分で言っちゃうのもなんだけど、ブスってレベルではないと思うし、可愛いかと言えば、そこそこ自信がない訳ではないし。でもラブレターは初めてだったりするわけで。
9月10日。つまり今日の放課後。
朝の内に早速芽吹ちゃんにもラブレターの件を話してみた。そしたら、
「えっ、ラブレター、夕夏に!?」
ピクッ
何か引っかかる。
「芽吹ちゃ~ん、何か引っかかるリアクションなんですけどぉ~。気のせいかなぁ~?」
「えっ……、ち、違うよ。そういう意味じゃ……ひゃん!」
ワキワキ愛愛の刑にしてやったわ。
放課後。とりあえず指示通り裏庭焼却炉前に行ってみた。物陰に芽吹ちゃんと秋奈っちもいるけど。
誰かがそこにいた。1人っぽい。男子だ。まぁ当たり前だけど。
相手はまだこっちに気付いてないみたいだったから、こっちから声を掛けてみた。
「あの~、下駄箱の手紙……」
名前が書かれてなかったから、この人が手紙の人なのか?とりあえずそこまで言い掛けてみた。するとその男子はこっちを向いて、アタシだと気付くと、表情が一瞬明るくなって、すぐに真面目な表情に変わった。
「あ、呼び出してごめんな。俺、2年の香川僚ってんだ。一応初めましてかな?」
夕夏は小さく頷いた。
「呼び出した理由は大体予想ついてるだろうけど……」
香川は言葉を一旦切って、深呼吸をした。
気まずいとも言えない独特な静寂が落ちる。放課後の運動部の喧騒などが更にそれを濃くされた。
校舎の陰から2人の様子を窺う芽吹と八乙女さん。
「ほむほむ。友人の、他人のラブゲームの進捗状況を見るというのも、これはこれでなかなか。兄貴がギャルゲーを楽しむ理由が何となく分かった気がする」
「人気のない場所に女をたった1人呼び出して、ただの告白で済むわけがない。男という生き物は淫脳の獣だ。変な動きをしたら即焼却炉にぶち込んでくれる!」
芽吹は友人の恋路を楽しみ、八乙女さんは悪魔で男の行動を警戒していた。
「鳴海さん、俺さ……」
香川が口を開いた。
沈黙の間、下を向いていた夕夏が顔を上げる。
うっわマジッ、アタシ今告白されちゃうの!?でも返事はNOだよね。アタシは有馬君が……。
夕夏は改めて有馬京弥への強い気持ちを認識した。
「鳴海さん。お、俺と……、付き合ってくれませんか?」
香川は一世一代の決意でそう言葉を発した。秋の始まりの少し冷えた風が2人の間を横切っていった。
「ごめんなさい……」
夕夏はそう、たった一言返事をした。
香川僚という先輩からの夕夏へのドキドキ告白シーンはここまで。
実はあの後、去り際に断られた理由を聞かれて、それに対して、
「好き人がいるから」
って言ったら、
「えーーーーーーっ、夕夏好きな人いたの!?あ…………!」
物陰から飛び上がって絶叫し、隠れていた事を思い出してフリーズする芽吹ちゃんと、それに一瞬ビックリしながらも、少し困り顔で笑った香川先輩だった。
「京弥ぁ~、彼女にすんだったらどの子がいいと思う?」
書店の雑誌コーナーでファッション雑誌をめくりながら適当に有馬に絡む出島。
「ばぁか。モデルなんて当てんなんねぇよ。女は中身」
「京さんは夢が無いというか現実的というか」
「めんどくせぇじゃじゃ馬だけど、一緒に居て退屈しねぇ女がいいな」
続く…
次回はアキバ観光の回になる予定です。モブのゲストキャラも出す予定です。