シーズン2 第1話 ……どちら様ですか?
シーズン2!ようやく投稿出来ました。
仕事がいろいろ忙しかった。なんて言い訳は置いといてと。もう一度。シーズン2!です。
あっという間に夏休みも終わって、今日はすでに登校3日目。
男の子に戻ることを決意しながらも、結局流される形で水着やら浴衣やら、じつに女の子な夏休みを過ごしてしまった。
9月に入ったとは言え、日中の気温はまだまだ夏。女子の制服、ブラウスの透け具合がやっぱり気になってしまう。
と、男子感覚で他人事として見ているが、芽吹自身がその見られる対象になっていることをスッポリ忘れていた。
「ハル、お前たぶん今気付いてないっぽいから一応言っとくけど……」
「ん?」
横を歩く秋人が何かを言おうとする。
「お前もブラ透けてる。つーかお前が一番見られてたぞ」
この時、芽吹は気付いていなかったが、秋人の言葉は過去形になっていた。その理由は、芽吹を複雑な意味で大事に思う秋人と、鎌鼬モードの兄筑紫による、男子エロ視線潰しを密かに繰り返していたからである。
「え、なんで僕!?」
芽吹はキョロキョロと周りを見ながら?マークを浮かべた。すると秋人は溜め息を付いて頭を掻いた。
「今更だけど、お前の見た目はハイスペックな美少女なんだぞ。もうちょっと自覚しとけ。ったく、こんなこと俺に言わせんな」
(か、カワっ……!?え!?は!?へ!?あ、秋人が、ぼ、僕のこと可愛いって……。何で僕こんな顔熱くしてんのさ?ってか秋人も照れてる?)
「い、いきなり変なこと言うなよ。秋人に言われると変に女の子になっちゃうじゃん!」
「……え!?」
「……ほぇ!?」
(あれ、僕今なんか変なこと言った?)
自分が言った言葉を思い出して考えた。すると秋人が、
「ハル、お前そのスペックでツンデレはやめろ」
この時の秋人の理性メーターはイエローラインギリギリだった。
午後。今日は午後の2時間をフルに使って、来月に行われる、夕陽ヶ丘高校文化祭の話し合いが行われた。各学年ごとに模擬店や出し物、展示物などの役割分担は、夏休み前に文化祭執行部で既に決めてあるそうだ。
芽吹達1年生は、主に食堂、喫茶、玄関前の出店売店を担当。あと2、3年生数人がフォロー役で参加。2年生は玄関受付と、ハロウィン式接客。3年生が出し物でゲームコーナーと演劇を担当することになっている。
因みにハロウィン式接客なるものがどういったものなのかは、文化祭当日に分かる。
食堂、喫茶、売店は、午前と午後に別れる。今回ホームルームで決めるのは、午前午後のシフトと、お店のコンセプトなど趣向凝らしたスタイルを出すことだ。
例えば大きく分けて、食堂なら、体育会系男気溢れるガッツリ系食堂とか。喫茶なら可愛いメイドに接客を売りにするなど。なるべく普通過ぎない模擬店を考えるのだ。
「こら男子、メイド喫茶にエロいオプションとか付けようとか考えてんじゃない!」
なかなか良い案が出ない中、密かな男子の妄想を看破した担任の美城先生。
この夏ハワイに行ったらしく、さり気なく小麦色になって帰ってきたらしい。ただでさえハリウッド女優ばりのセクシーな見た目なのに、さらにセレブっぽくなってしまっていた。
A~Eクラス各自で決めたコンセプト候補を、翌日アンケート用紙にして投票することとなった。
この件に関しても詳しい事は文化祭当日にいろいろと解るだろう。一つだけ確実な事は、夕高祭に殺人的な、そして二次元的ともいえる超絶的天使が降臨する。
とある日の昼休み。
今日は比較的珍しく教室で弁当を食べていた。メンバーは僕と夕夏と八乙女さん。あと児玉千絵さん。
E組の秋人も、僕がいればこっちの教室に来て一緒に食べるんだけど、今日は何か急用が出来たらしい。あと有馬君と出島君は学食だって。だから今日は完全女子のみ。(まぁ、僕が完全女子に考慮されてて良いのかはこの際置いといて)
せっかく今日は秋人に味見してもらおうと思って玉子焼作って来たのに。どこにでご飯食べるんだろ?
芽吹は箸を咥えたままぼんやりと遠くを見ていた。そんな切なげな仕草の芽吹に(本人はそんなつもりはない)イヤらしいちょっかいを出すヤツがいた。
「乙女は恋をしてるとご飯すら二の次なのよねぇ~。『もう、秋人君の為にせっかくお手製の玉子焼入れて来たのに……。はぁ~。秋人君と一緒に食べたいなぁ……』とかなんとか考えてるんだよきっと」
夕夏の劇団風物まねが披露された。しかし芽吹の反応は珍しく冷静だった。
「僕は秋人のこと君付けしないよ。あと僕と秋人とを勝手に……、バカップルでもなんでもいいや。お手製の玉子焼に関しては当たってるし」
いつもの芽吹らしくない反応に、夕夏と児玉さんは真剣な表情に変わった。八乙女さんは心配そうに芽吹を見詰めていた。芽吹に淡い想いを抱いている八乙女さんにとっては、今の芽吹の仕草を見て複雑な気持ちに成らざるを得なかった。
仕方ない。また明日にしよう。あと他に秋人が好きそうなのは、エビフライか、豚の生姜焼きかな。今時は男でも料理出来てた方が良いって言うし。母さんの策略にハマってる気がするけどいいか。
そう考え、納得した芽吹だったが、いつも一緒の下校もまた急用だと言われて、今日は芽吹1人で帰ったのだった。
翌日。朝登校中に何気なく聞いてみた。
「急用ってなんだったの?」
すると秋人は、
「え、あぁ……別に対した事じゃなかった」
(なんか誤魔化されてる?)
芽吹は少し気になったが、その時は特に追求しなかった。しかし秋人のその様子の原因は、学校に行ってから分かるのだった。
「春風芽吹さんて貴女よね?」
トイレで手を洗っていた時だった。唐突に後ろからそう呼ばれて、普通に返事をした芽吹。
「ほぇ……、はい。僕ですけど」
「貴女、柊秋人様とは別れてくれる?私、秋人様に告白したの。貴女と秋人様が幼馴染かなんか知らないけど、私の方が絶対秋人様を男として幸せにしてあげられるわ!」
「…………」
「…………」
芽吹を睨む彼女。キョトンな表情の芽吹。たっぷり30秒は掛かっただろう。
「ちょっと、黙ってないでなんか言いなさいよ!」
何故かいきなり怒ってくる彼女。それに対しての芽吹の反応は、
「あの~……」
「な、なによ?」
「……どちら様ですか?」
「…………」
「…………」
またも沈黙する。
「そ、そんなことはどうだっていいのよ。秋人様の彼女は貴女じゃなくてこの私になるのよ!」
「え、じゃあ秋人は告白にイェスしたんだ。よし。ならばいますぐあいつをからかいに行かねば。失礼しまっす!」
そう言って芽吹は悪戯する気満々でトイレを出て行った。
「そう。私は秋人様に告白を……って、それは今日これからするつもりで……て、行ってしまったわ」
トイレにポツリと残された彼女はいったい誰?
「秋人いるーー?」
「お~い秋人ぉ~、お前の彼女だぞぉ~。リア充蒸発しろぉ~!」
「うぉーー、芽吹ダァーー!」
「だぁっから彼女じゃねぇよ。つーかうっせぇ!」
非リア充の嫉妬と野次馬から逃げるように廊下に出て来た秋人。
(はぅ~、秋人ごめん。早く普通の男の子に戻りたい)
自分の奇異な存在と秋人の秋人の立場に申し訳なくなった。
「変なとこ気にすんな。で、なんだ?」
芽吹はさっきの事を秋人に話した。
「昨日とかの急用って告白の呼び出しだったの、僕に一言教えてくれれば良かったのにぃ?」
すると秋人は、
「は、告白?」
ポカンとする秋人。
「何の話だ。昨日の急用ってのは、文化祭に関しての極秘の打ち合わせ。告白の呼び出しなんて全然ねぇぞ?」
「へ、そ、そうなの。あれ?」
「つーか誰だその女子?」
「……さぁ?」
「何なのあの子最悪。告白しずらくなっちゃったじゃないのよ!」
トイレで1人怒るこの彼女は、本当にどちら様だったのか……?
続く…
平凡在り来たりな内容だったかも(オロオロ)
文化祭はまだまだ先ですんで。それまでかなり平凡な日常内容で投稿していきます。