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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
33/104

番外編 全身もみしだきの刑

 シーズン1これにて完結。

 鳴海夕夏の家(庭園付き豪邸)に招かれた僕と秋人、有馬君、出島君。

 ビックリしたのは夕夏の家が女中メイド付きの豪邸だったことと、そのメイドの一人が八乙女さんだったこと。

 いろいろ驚かされたけど、「夕夏お嬢様」って言ってからかったり、広い屋敷を探検したりして楽しんだ。

 夕方になって、秋人達男子3人は帰って、夕夏、八乙女さん、僕で一晩の女子会お泊まり会が始まるのだった。内心、これ僕がいていいのかと不安になったりしたけど。

「ねぇねぇ、アタシの部屋に行こ。芽吹ちゃん¨例の物¨ちゃんと持って来た?」

「う、うん。まぁ」

 夕夏の問い掛けに自信なさげに返事をする芽吹。

「芽吹ちゃん心配しないで。アタシ達芽吹ちゃんの趣味嗜好を絶対バカにしたりしないから」

「今回のお泊まり会の目的は春風さんとの親睦を深めるのが目的だ」

「そう。アタシと秋奈っちは中学も一緒だったけど、芽吹ちゃんとは高校入ってからじゃん」


 夕夏がメイドさんにお菓子とお茶を持ってくるようにお願いして、僕は夕夏の部屋へと案内された。因みに八乙女さんも一応メイドらしいけど、今日はもう僕と夕夏と遊んでもいいらしい。

「マイルームへようこそ~」

 優雅な素振りでドアを開けて、僕を部屋へと招く。部屋に入った直後、僕は唖然とした。

 ¨お嬢様の部屋¨。僕は漠然とそれらしい部屋を想像していた。そして実際は……、8帖程のフローリングの部屋にオシャレなソファーが二つとローテーブル。奥に襖を挟んで8畳程の和室。入り口からすぐ左手のドアが寝室らしい。

「ぽか~ん……」

(お嬢様って、寝室別なんだ!?)

「寝室も見る?どうぞどうぞ」

 聞かれたのに、答える前に部屋に引っ張られた。

 夕夏の寝室は、確かにベッド¨らしき¨部分はあるけど、人が寝られるスペースがほとんどなかった。とにかくぬいぐるみだらけだったからだ。

 可愛いぬいぐるみも、部屋中にあるとちょっと怖い。僕はそう思ってしまった。



 八乙女さんと他のメイドさんが持ってきてくれたアップルパイとクッキーと生クリームがたっぷり乗ったミルクティーを口にしてまろやかな気分になった。

「もンげ、ふちゃいほもほ~ひはほ?」

(あれ、二人ともどうしたの?)

「アハッ。あはははは。芽吹ちゃん可愛い過ぎ。リスみたい!」

「か、可愛い……。ケーキを頬張るハムスター」

 美味しそうにケーキを食べる小動物のような芽吹に姿に、見惚れ、癒やされ、目をまん丸に、ほっぺを膨らませてモゴモゴ喋る芽吹きに、笑わずにはいられない夕夏と八乙女さんだった。


「そういえば例のアレ、始めちゃう?」

「私はいつでも構わないが」

 アレを思い出した夕夏が八乙女さんに同意を求める。

「芽吹ちゃんもいいよね?」

「う~……ん」

 僕は¨例のアレ¨をやるのが恥ずかしいから、渋ってみたけど、夕夏が悪魔の笑みと、手をワキワキさせて迫って来そうだったから抵抗を諦めた。

 ¨例のアレ¨というのは、簡単に言えばただの女子トークなのだが、夕夏曰わく、この3人だけのトップシークレットな密談なのである。

「ここは言い出しっぺのアタシからいくよ。アタシの趣味はこれ」

 夕夏が出して来たのは、いや、出すまでも無く。ズバリぬいぐるみだった。

 うん。ジャジャ~ン!とか改めてなくても予想は着いてたよ夕夏。

「あと最近はこれかな」

 二つ目に出して来たのは、メンズモデル雑誌。

「クール系イケメン!」

「「へぇ~……」

「ちょっと二人共何その極薄リアクション?」

 女子目線ではまだ男を評価出来ない芽吹と、男は害虫並みに嫌う八乙女さんだった。

 夕夏曰わく、

「普段は無口で無愛想で冷たい感じなんだけど、いざって時はカッコよくビシッと決める感じがもう~溜まんないじゃん」

「なるほど。有馬京弥と似た雰囲気だな」

「あ、やっぱ分かっちゃった?さすが秋奈っち」

「え……?」

 芽吹がキョトンとすると、八乙女さんが普通に説明してくれた。つまり、有馬君は、夕夏の好きな人だったということである。

(ほほぅ。これがいわゆガールズトーク。恋バナってやつか。夕夏の恋路、ちょっとだけからかいたいかも)

 自分が普段、秋人とのそういう話題でからかわれるから、ちょっとだけそう思った芽吹だった。

 続いては夕夏の指名で芽吹の番である。芽吹が少し顔を赤くしながらテーブルの上に並べたのは、日本を代表できるアキバ萌えや、某機動戦士、某新世紀、無双武将イラストなど、カッコいいから可愛いまで。中にはエロカワイイイラストも。

 果たしてこんなオタク趣味を、夕夏や八乙女さんはどう思うだろうか。

「うはっ、この武将キャラ超カッコいいじゃん。何これコ際どっ!」

「こ、これが……エ、エロカワイイというやつか。不埒だ……」

 と、言いつつイラスト集に興奮気味の八乙女さん。意外に好評だったり。

「このツンデレ萌えって超分かるぅ~。見てるといじらしいっていうか、なんかこうムズムズしてくるよね」

 夕夏が八乙女さんにイタズラっぽい眼差しを向ける。芽吹もチラチラと八乙女さんを見る。

「二人して何だ。何故私を見る?」

 怪訝な表情で見返す八乙女さん。

「秋奈っちも結構ツンデレキャラだよねぇ~?」

「な……、勝手に妙なキャラにするな!」

「ほら。今の、完全にツンデレじゃん」

 八乙女さん、普段強気な態度だから、こういう時の反応カワイイんだよねぇ~。


 夕夏のからかいが行き過ぎ、ツンデレがヤンデレまで行きそうになる事態になり、芽吹が止めに入ることに。焦って止めに入ろうとした時、テーブルに躓いて、八乙女さんの豊満な胸に顔面ダイブをかましてしまった。俗に言うラッキースケベである。

 芽吹と八乙女さんから湧き出る羞恥のオーラで一応は静かになった。


「次は私か」

 テーブルに並べられたら八乙女さんの趣味の¨ブツ¨に、芽吹は顔が引きつった。夕夏はある程度知っているからか少々困り顔である。

「これは神奈川県の西半分を縄張りにしている《女DHU-紗=メデューサ》の特攻服だ。でこっちが、北海道を締める最強連合《赤眼の潤婦=せきがんのウルフ》だ。寿退族した先輩から貰ったんだ」

「いつ聞いてもネーミングセンスハンパないよね」

 大体予想はつくだろう。八乙女さんが趣味にしているのは、そう。全国都道府県で名を上げている女暴走族『レディース』の品々である。

 芽吹は思った。夕夏の家を見た時、何かのドラマで見た仁侠一家の屋敷にそっくりだと。もしや夕夏は組長さんの『お嬢』なんじゃないかと。そして更に、八乙女さんは何か訳あって夕夏の家でメイド業。しかもレディースの方々とも関わりが深い。

 つまり、今この場で僕だけが……

「かたぎ……?」

 芽吹の口からポツリとこぼれた。顔面蒼白放心状態で。

「春風さん、もも、もしかして物騒な解釈をしてませんよね?」

 芽吹の顔面蒼白な状態を見て、八乙女さんが焦り出した。何故か敬語になって。

「なんでかなぁ。アタシ芽吹の心読める気がするわ。芽吹ちゃん、もしかしてアタシん家をヤクザとか仁侠一家みたいに思ってない?」

 すると芽吹は、

「僕達友達だよね。もし二人を怒らせちゃっても小指¨つめる¨とか、セメント固めにして海に捨てるとかしないよね?」

 まるで芽吹にだけ直下型地震がきているような、ガタガタと震えながら聞く芽吹。

「ファンタスティックな妄想、中二病ならわかるけど、妙にリアルな妄想はやめて。組長のお嬢と、レディース的な友達ってどんな中二病よ!?」

 思わぬ誤解を解こうと八乙女さんは必死に芽吹を宥めて、夕夏は軽く頭を抱えていた。この手の誤解で、夕夏の過去には少し傷があるのだが、それはまたいつか。



 夜9時を過ぎ、3人でお風呂に入ることになった。そこで夕夏は思い付く。

「さっき芽吹ちゃんはとっても失礼な誤解をしてしまいました。その罰として……」

「え、罰……?誘拐、監禁、やっぱりセメント?」

「そんな物騒なことはしません。いい加減にヤクザから離れてよ!」

「え、じゃあ何。まさか……身体で、とか?」

 怯えながら芽吹がそう問うと、夕夏が意味深な笑みを向けた。

「罰として、芽吹ちゃんお風呂で全身もみしだきの刑に処す!」

「なっ……そ、そんか、春風さんにそんな破廉恥なことは許さん!」

 内心では楽しみでもある八乙女さんだっ。




「きゃっ。いや、許して夕夏。無理無理。そこは……お婿さん、じゃなくてお嫁さん?もあれだし、とにかくそこはダメぇーー!!」

 この夜、鳴海家宅のお風呂からは、少女の背徳的な叫びが聞こえていたとかいないとか。

 シーズン2は2学期スタートです。

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