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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
32/104

春27番 こんな女は嫌い?

 祭りパートその2。芽吹ちゃんがちょっと暴走します。

「あっ……、あやや。またダメだったか」

「惜しかったなハル」

「あははは。お嬢ちゃんはべっぴんさんだから、おまけでもう一回挑戦してみるかい?」

「え……、ば、べべ、べっぴんさん!?」

 芽吹と秋人は金魚すくい。

「有馬くんアタシあれ。あのクマのぬいぐるみがいい」

「射的でぬいぐるみって、いきなりハードル高いなぁ」

 夕夏と有馬は射的。

 そして、八乙女さんと出島だが、

「……はぁ~」

「むっ。ほっ。はっ。いくら八乙女ちゃんが美人で巨乳でも、彼女に寄り付く不埒な輩はこの出島が返り討ちに……どあっ!」

「やめんかキサマ。恥ずかしいからやめろ!まったく……」

 出島が八乙女さんのボディーガードとして無駄に張り切り中。

 以前にもあったこのペア行動。今回の発端は、


「ウヒョーー。浴衣姿の八乙女ちゃんびゅーちふるぅ。健全男子の代表として、男・出島絶賛興奮中だぜぃ!」

「うっ……気色悪い。近付くなクソ虫が!」

 そう言って出島を避けながらいつもの制裁を加える八乙女さんだが、浴衣のせいでかなり動きが制限されてしまっていた。これを見ていた夕夏が思い付いた方法。

「またカップル設定作らない?」

 つまり、こういう祭りでは、出島に限らず、珍しい着物、浴衣女子に興奮して、良からぬ行動をするクソ虫が発生しやすい。女子のみ、或いは女子単独の場合はナンパされやすい。しかし、男の連れがいればまず絡まれない。たとえフリでもカップルに見えればまず心配ないのである。

 何事もなく祭りを楽しむ芽吹達。

 御神木近くの広場で座ってたこ焼きをはふはふと頬張っていた芽吹と秋人。そこへ、

「芽吹ぃーー。やっと見付たぜ。こんなとこにいたのか」

「あ、兄貴来たんだ」

「俺が来ちゃ悪いか。お前小遣い足りてんのか?」

 筑紫は半ズボンにTシャツで。芽吹に奢るついでに来たらしい。

「隙あり!」

「あーー、最後の一個ぉ!」

 うっかり筑紫にたこ焼きを食べられた芽吹は、変わりに秋人のたこ焼きを強奪した。

「あっ、こら!」

 そんな微笑ましい場にもう一人。意外な人物が来た。

「可愛くたこ焼きを頬張っちゃって、個人的に誘拐しちゃいたいわね」

「ほえ……?」

 3人が声の方を振り向いた。筑紫は若干表情を歪めたが。

「こんばんわ。芽吹ちゃんに柊君。……ついでに筑紫君?」

「俺はついでかよ。そして何で疑問系だ」

 突然現れたのは、夕陽ヶ丘高校生徒会長。姉崎ルイ先輩だった。ピンクと赤を基調に小鳥と花びらの柄の浴衣姿。八乙女さんを更に大人にしたような長い黒髪の綺麗な女性である。



 姉崎先輩と筑紫が仲間になり、夕夏達と再集合することになった。

「え~ん。ぬいぐるみ取れなかったから変わりに芽吹ちゃん抱くぅ~!」

 合流するなり夕夏の高速タックルハグハグが迫った。が、

「その攻撃は既に見切っておる!ササッ」

「なぬ!?」

「夕夏に毎度抱き付かれる我が輩ではないのだ!」

 夕夏のハグハグ攻撃を避けて、控え目な胸を張った芽吹だった。が、

「じゃあ今回は私が……ムギュ!」

 姉崎先輩の不意打ち巨乳ハグが芽吹を急襲。

 顔を真っ赤にして声にならない悲鳴を上げた芽吹だった。着物の上からでもわかる姉崎ルイの豊満なスタイル。その胸に埋まる芽吹の顔。その現場に、有馬、秋人、出島、筑紫はウブな青少年の反応。夕夏は鼻息荒く見詰め、八乙女さんは恍惚とした表情で見詰めていたのだった。



(うぅ~……姉崎先輩の胸が羨ましい。秋人もやっぱり大きい方がいいんだろうなぁ~。聞いてみるか)

 さっきの一件を思い、芽吹は聞いてみることにした。

「ねぇ、秋人?」

「ん?」

「僕って、そんなに可愛いのかな?」

「ぶほっ!?」

 いきなりの質問に、秋人はカジっていたフランクフルトを吹いた。

(はぅ~……。こんな格好して何やってんだろう僕)

 男の子に戻るって決めたのに。女子の制服にはじまり、体育の着替え。ついには水着デビュー。そして今度は浴衣。

(まぁ、既に下着の時点で変態通り越して男捨てたようなもんだったけどね。アハッ、あはははは……はぁ~)

「おい、ハル?」

 秋人が呼ぶ。しかしそれに気付かない芽吹。

(もう、何で僕がこんな目に。……ちくしょう、こうなったら……)

 この瞬間、芽吹のあるスイッチが入った。

「っしゃあーー。こうなったら男も女も関係ないのラァ。祭りは楽しんだもん勝ちなのラァ!」

「は!?」

 秋人は気付いた。芽吹が妙な言葉使いをした時は、テンパっているか、ヤケクソの時である。

「ビシッ。よく聞け男子諸君。今ここにいる浴衣美少女4人を、自分の彼女として全力で楽しませるのだ!」

 秋人、有馬、出島、筑紫の男子4人にビシッと指を差して叫ぶ芽吹。

 芽吹の普段とのギャップの激しさに、みんなが目を点したのだった。

「秋人よ、僕は決めたぞ。今は今として、この身体を全力で楽しむぞ」

「お、おう……?」

「秋人よ?」

 芽吹は頬を染め、軽く潤んだ瞳で秋人に迫った。

「なっ、ど、どうした?」

「秋人は……、彼女にしたいタイプはどんなだ。可愛いさか、ハイテンションか、それともやっぱり、お……む、胸か?」

(ハルのやつ、ヤケクソの末にテンパりやがったなこいつ!?)

 そんな芽吹と秋人とは別に、

「アタシは有馬君を彼氏候補で決まりぃ~。ラブラブデートしよう?」

「し、しねぇよバカ!」

「と言いつつまんざらでもない京弥っと。そっちはリア充決定か。って訳で俺は八乙女ちゃんとのラブフラグ……ぐえっ」「ふんっ。キサマと組むなど絶対ありえない!」

 出島と八乙女さんはいつも通り。

「筑紫君いいの、可愛い妹さんが他の男の子とデートしてても?」

「姉崎は男に守られるガラじゃないだろ。なぜ俺の隣に立つ?」

 あえて質問を無視する筑紫。

「筑紫君が私の魅力に必死で抵抗してる硬派な態度が可愛いから」

「っ!?…………ふっ。お前本体はともかく、着物だけは綺麗だ」

「その綺麗な着物を着こなしているのはこの私だからね」

「なんて女だ……!?」

「こんな女は嫌い?」

 下から上目使いで覗き込んで来る姉崎ルイに、ついに顔を赤くした筑紫だった。



 その後も特にトラブルに合うこともなく、8時を回ったところで皆揃って明月神社を後にした。

 帰りの途中、中学生くらいの子達が花火をやっていた。

「やっぱ夏は花火だよなぁ~」

「ねぇねぇ、途中コンビニ寄って花火買ってみんなでやろうよ!」

 夕夏の提案で、花火を買いに行くことに。

 コンビニに着いて、芽吹はあること思い付いた。

「¨お兄ちゃん¨ごめん。これ買って。ダメ?」

 困った表情と上目使い。

(兄貴曰わく、¨萌える妹キャラ¨を最大限に使ってやるのだ)

 筑紫は家の外では妹萌えの本性を隠している。故に、筑紫は今の芽吹に対して下手な態度が取れないのだ。

(うおぉぉぉ。妹よ、マイシスター。ついに¨お兄ちゃん¨ と呼んでくれた。さらにその仕草、ギャルゲーの大道、妹萌えの極みなり!)

 内心で歓喜の号泣に震える筑紫だった。

(へへへ。色気で楽勝!……でも、何か大事なものを失ったような……)

(ハルがとうとう女の色気スキルを習得しちまった。嬉しいような、悲しいような……)

 親友であり、それ以上の感情を抱いている秋人にとって、複雑な瞬間だった。





続く…

 夏休みパート終了。

 ここまでが「芽吹と春夏秋冬」シーズン1となります。区切りよく一学期分で。


 次回予告としては、シーズン2に入る前に、番外編スピンオフを書く予定です。なのでこれからも「芽吹と春夏秋冬」次話投稿をお待ち下さい。

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