春26番 帯におっぱいが乗っかっている。
今回はなかなかストーリーが決まらず、やっと書きました。イマイチ内容を面白く絞れず、何度も削除した結果、この内容です。
夏休みももう半ばを過ぎたが、季節まだまだ夏真っ盛り。
「お願いだよ秋人ぉ~、一緒に宿題やろう。秋人頭良いだろ。僕ン家来て宿題教えてくれよぉ~」
1人じゃどうにもやる気になれない僕は、無理いって秋人を部屋に連れ込んでなんとか宿題を終わらせようと思った。
「よーーっし。秋人も来たことだし、残り少ない夏休みを思いっきり楽しもう!」
「……って、こらぁ、宿題やるために俺を呼んどいてお前は何普通にゲームをやろうとしてんだ!」
「え~、昨日半日宿題頑張ったんだから今日1日はゲームの日で……」
「宿題は半日で、遊びは1日って……つーかお前これ、昨日半日でほとんど進んでないじゃん!」
8月26日。今日は芽吹達が住む町にある、明月神社の縁日のお祭りの日。
先週の3日間、秋人を家庭教師に付け無事夏休みの宿題を終わらせた芽吹。
いつもなら朝から楽しみのはずなのに、今年はそうはいかなくなった。
「コォラちょっと芽吹ちゃん待ちなさい!」
狭い我が家で僕は必死の逃走劇を繰り返していた。
「嫌だよ。女の子の浴衣なんて恥ずかしいから嫌だよ。私服で行くからいらないって!」
ドタバタ
「ダメよ。せっかく女の子になったんだから、秋人くんに芽吹ちゃんに可愛い浴衣姿見せなきゃ!」
ドタバタ
「だからいらないってば。秋人を意識する意味が分かんないし!」
ドタバタ
「安心したまえ我が妹よ。意味はある。激カワ浴衣芽吹ちゃんの萌え萌えポスターを作ってお兄ちゃんの部屋に飾るのだ。グフフフ」
なぬ、兄貴まで浴衣派に参戦だと!?
「なおさら意味分かんないし。萌え萌えポスターとかマジ勘弁して!」
〈秋人サイド〉
祭りに出掛ける予定時間。その2~3分くらい前に、俺はハルを迎えに行った。インターホンを鳴らして、返事が返ってきたから玄関を開けた。インターホンの奥がなんか騒がしかったような……?
「お邪魔しまーす。ハルそろそろ祭り行くけど、準備良いか?」
奥が騒がしい。でも誰も来ない。何やってんだろ?
俺がもう一度声を掛けようとした時、ハルの声が近づいて来た。玄関からは見えないが。そして次の瞬間、俺は固まった。つい最近喰らった衝撃とはまた別の衝撃が俺の脳みそと心臓を貫いた。
可愛い過ぎる……。
俺は最近切に願っていることがある。
(ハル、お前は男の子に戻らなくもいい。いや、むしろそのまま俺の彼女に……)
今現在、芽吹と秋人は玄関で、向き合って突っ立ったいる。秋人は芽吹を見詰めたまま惚けている。芽吹は顔面沸騰状態で、ふるふるモジモジしていた。
(芽吹ちゃんったら、我が娘ながらなんていじらしい仕草なのかしら。もう押し倒してペロペロしちゃいたい!)
影から見守る菜花。
(あんな超絶激カワなマイシスターが祭りにいったら、ナンパしない男はいないだろう。俺が付いていって、1つのアイスを一緒にペロペロとか、綿アメを一緒ペロペロとか。クゥ~お前は俺が守る!)
秋人がジーンズの半ズボンとTシャツ。と普通の私服。それに対して芽吹はというと、全体的に青を基調として、ピンクや赤の花が描かれた浴衣。花飾りの髪留めで前髪半分を耳元で止めている。おそらく老若男女誰が見てもドキっとすることだろう。
夕陽は沈み、藍色の空が徐々に夜の闇に覆われ始める夏の夕暮れ。町に満ちる提灯の灯りがそんな闇を淡く照らす。祭りの空気が人々を活気付かせる。
神社へと向かう僕と秋人。あれから秋人も慌てて家に戻って浴衣に着替えて来た。濃い緑を基調に、白いうちわの絵柄が散りばめられた浴衣。
僕と秋人が揃って浴衣を着るなんて小学低学年以来だ。しかも今回僕は可愛い女の子の浴衣。
(あっ、自分で可愛いって言っちゃった)
どうしよう……。秋人の方向けないよ。僕がこんな女の子の格好、秋人はどう思ってるのかな。秋人も全然話掛けてこないし。
芽吹は秋人の後ろを、足下だけを見て歩いていた。そうこうしていると、いつの間にか神社の階段に付いた2人。すると、
「浴衣、階段歩き難いから気をつけろよ」
秋人が言った。その時やっと芽吹は秋人の方を見上げた。するとすぐに目を逸らした秋人。提灯の灯りのせいかな、顔が赤い気がした。
慣れない浴衣と下駄で本当に歩き難かった。やっと階段を上がりきったところでふと気付いた。
「あっ、ご、ごめん!」
いつの間にか無意識に秋人と繋いでいた手に気付いて、芽吹は慌てて離れた。
(あれ……、僕なんでこんな焦ってるの。やばい。顔が熱い。なんで!?)
若干パニック状態の芽吹に、
「おいハル、大丈夫か?」
「へっ、はっ、な、何が!?」
「手繋いでねぇとはぐれるから……」
そこで秋人はまた目を逸らし、何かを考えていた。すこし間があって、秋人は顔を赤くして言った。
「ハルのクセにそんな可愛い浴衣着やがって……。俺だって結構恥ずかしいんだよ。でもさ、ほら……手繋いどかねぇとはぐれるだろ?」
この瞬間、僕の中で何かがキュンッと締め付けられた気がした。
(何だこれ。すごく苦しいのに、でも、すごく嬉しい。何だこれ、何この気持ち!?)
『あの娘もようやく自分の気持ちに気付き始めたようだね。柊秋人。あとはあの男が鍵だ。あの娘の心を完全に女の子にする一押し。楽しみだねぇ……くふふふ』
階段を上がったところからは石畳の道が境内まで続いている。その通りの左右にズラ~っと並ぶ出店。アイス屋や綿アメ、チョコバナナなどの甘い店に始まり、焼きそばやたこ焼き屋などといった定番まで。金魚救いや射的に輪投げなどのゲームあり、神社は夏祭り一色だった。
ぎこちなく手を繋いで鳥居をくぐる2人。
(ああ~やばい。何これ。秋人と手繋ぐだけなのに、何でこんなに恥ずかしがってんの僕。もしかして女の子の格好だから。浴衣カップルみたいだから!?)
恥ずかしさと頭が沸騰しそうなので目がグルグルの芽吹。対して秋人は外見上は冷静である。しかしやはり内心は……。
(やべぇやべぇやべぇマジやべぇ。幼馴染み、美少女、浴衣、夜の祭り、何だこの完璧過ぎるラブシチュエーションは。俺はいつからラブコメキャラに!?)
そんな2人に、
「あっ、芽吹ちゃんと秋人くんだ。おーーい芽吹ちゃーーん!」
人混みの中から名前を呼ばれ、芽吹と秋人は声の場所を探した。夕夏だった。人混みをやっと抜けて、芽吹と秋人はいつものメンバーと合流した。特に約束していた訳ではないが。
夕夏はピンクと赤の縞々模様の浴衣。八乙女さんは薄緑に竹柄模様。花飾りでポニーテールに結い上げた、やっぱり大人っぽい雰囲気だ。
ひとしきり女子通しで浴衣を褒め合っていると、
「ヒョッホ~。浴衣美少女3人発見!」
どこからか聞き覚えのある雄叫びが。
「鳴海は浴衣、意外に似合うんだな」
ぼそりと言う有馬。
「ちょっと有馬くん、意外とは何さ。聞き捨てなりませんが?」
わざとらしく膨れてみせる夕夏。
「芽吹ちゃんって超絶破壊的に激カワだぁ~。浴衣萌え~!」
出島である。
「しかし今回、この芽吹ちゃんを凌ぐ美少女が」
そう言って出島は首をグリンっと八乙女さんに向けた。
「八乙女ちゃん……じぃ~」
「な、なんだ。あ、あまりジロジロ見るな」
出島にジロジロ見られ、恥ずかしさに珍しくたじろぐ八乙女さん。
「帯におっぱいが乗っかっている。これは水着の時よりも余程エロ……」
「どこを見ているキサマはーー!」
「ぐわぁ!」
八乙女さんの強烈な手刀を喰らった出島だった。
続く…
次回は、久々に姉崎ルイ生徒会長が登場します。同級生の筑紫との意外な関係!?




