表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
29/104

春24番 鬼だぁ~~!

 今回はすこし長くなっちゃいました。芽吹ちゃん貞操の危機!?って訳で。本来僕は嫌いなんですが、頑張ってちょっとだけシリアスシーンを入れてみました。

 太陽が真上からギラギラと照りつける午後のビーチ。

 可愛らしい女の子の呼び掛け(主に2人)に、群がり、並ぶ行列。ビーチの近くの駐車場が、そんな人集りになっていた。


 アイドルでもないのに出島によってつけられた妙なキャッチコピーと、何故かモフモフで若干エロカワイイ犬コスプレの芽吹。

 現在芽吹達6人は、店で食べた昼食代の借金返済のために、弁当の出張販売をしていた。

「お釣りの200円です。ありがとうございました。……あ、ハイ。焼きそば二つですね。600円になりま~す!」

「あの赤毛のポニーテールの子めっちゃ可愛らしいじゃん。弁当ついでにメアドとか聞こっかなぁ」

「あ、ハイ。焼きそばと豚キャベツ炒めを二つづつですね。えっと……合計で千円になります。ありがとうございました!」

「きゃーー、あの子超可愛いじゃん。何あのコスプレ、犬?いや~ん抱き付きたいんだけどぉ~!」

「萌える……」

「アレはマジ萌えるな。反則だな」

 そんな客達の声、心の声も含め、むちゃくちゃ注目を集めている芽吹だが……。

(ほぇ~。値段が単純で良かった~。緊張と忙しさでお金計算間違えちゃいそうだよ~。それにしても凄いお客さんだなぁ。なんか増える一方?なんだかよく分かんないけどやたら握手求められるし。どういう意味なのかな?)

 芽吹はその白銀の髪と、それに合ったコスプレ。なにより誰が見ても超絶的に美少女という見た目。握手を求められるくらいは必然である。 夕夏は普通に明るくて可愛い。

 しかし、芽吹、夕夏目当てに群がる男ばからではない。

「ねぅねぇ、あの黒髪の子超綺麗。なんかモデルっぽいよね」

「うわ、胸おっきいんですけど……」

 八乙女さんは男女問わず客の目を引いていた。

 更に、売り役ではなく、主に芽吹のフォロー兼客引き営業の秋人と有馬も例外ではなかった。秋人のルックスは校内イケメンランキング上位。有馬は少し無愛想だが、ルックスはかなり良い方だ。そのため、女性客を呼び込むには絶好の役を果たしていた。

 一つ、ここでお気付きだろうか?

「そういやぁ出島はどこにいるんだ?」

 秋人が何気なく有馬に問う。

 そう。今この場に出島がいないのである。

「あいつはなんか、不届き者がいないか見張るんだって、どっかその辺で監視してんじゃねぇ?」

「不届き者って……、握手は別に良いんだ」

「良いんじゃね?」

 出島のポジショニングに首を傾げる秋人と有馬だった。


 弁当の在庫も客足もまばらになってきた午後3時。マスターのてつさんが、アイスボックスやら何やらゴタゴタと持って芽吹達のもとにやって来た。

 集計と芽吹達へのおやつ。あと3時の時間帯を狙ってアイスを売り込もうという商売根性だった。


 真夏の午後3時。西日が照りつけるこの時間帯がなにげに一番暑い。ビーチで商売をしている者はここぞとばかりにかき氷やアイスなどを売り込むのらしい。

「アイス~、シャーベットアイスやでぇ~。いりまへんかぁ~。火照った身体にシャーベット~。疲れた身体に甘いアイスはどぉでっかぁ~!」

 芽吹達は、てつさんの喜作な大阪弁の呼び声に気分も良く、茜さんが焼いてくれた薄めパンケーキを頬張りながら一休憩していた。

 夕夏と八乙女さんはともかく、芽吹の見た目はやはり人の目を引いていた。

 駐車場の縁石にちょこんと座り、両手で持ったパンケーキをはむはむと食べる姿は、ハムスターか何か、小動物的で癒されるのだ。



 その頃。ビーチ近くのホテルの駐車場に一台の車が止まった。

「芽吹ちゃんったら、お母さんに黙って水着なんて買っちゃって。お友達とだけで海水浴なんてずるい!」

「マイシスター芽吹ぃ~。この広いビーチのどこかに可愛い水着のリトルマーメイドが~!」

「まぁ、とりあえずチェックインして荷物を置いてこようか」

 3人各々が言いたい事を言いながら駐車場を後にした。



 無事弁当を完売させ、払えなかった昼食代も払うことが出来、6人は満足げに、一旦、海の家に戻る途中だった。

「秋人ごめん。僕ちょっとトイレ行きたいから、先行ってて」 秋人にそう伝えて、僕は来る途中にあったトイレへと向かった。

 まさか、あんな目に合うなんて……。僕は予想もしてなかった。

 この時、近くにいた3人の男達が、芽吹の姿を目で追い、ニヤリと笑みを浮かべていたのだった。


「ふぅ~。やっぱり水着のままだとトイレしずらいなぁ」

 手を洗って、トイレから出た瞬間、

ドンッ

 人とぶつかってしまい、僕は弾かれて床に尻餅を付いてしまった。

「いたたた~…。す、すいません!」

 僕はお尻をさすりながら咄嗟に謝った。でも、相手からすぐに反応が返って来なかったので、僕は顔を上げて見た。

「ごめんごめん。君、大丈夫?」

 そう言って、今度は手を差し伸べてきた男性。しかし、その声色と表情に、僕は突然寒気を感じた。この人、笑ってる?掴んでもらった手に意識を移すと、その人は強い力で僕の手に握っていた。

「あ、あの……ぶつかってしまって、す、すいませ……、あ、あの、離して下さい……っ!?」

 嫌な予感というか、男の雰囲気と握られた手から恐怖を感じた。でももう遅かった。気付けば後ろからもう1人の男に羽交い締めにされていた。咄嗟に叫ぼうしたけど、強く手で口を塞がれしまい、どうすることも出来なくなった。

(何これ、嫌だ怖い。誰か……、秋人……)


 その頃。海の家に着いていた秋人達は、てつさん、茜さん、葵と談笑していた。

 秋人が若干芽吹の帰りを気にし始めていた時だった。

「あれ、芽吹ちゃんは?」

 夕夏だ。

「ああ、さっき途中トイレ行ってくるって別れたんだけど」

 秋人が答える。微かに胸騒ぎがした。その感覚は、てつさんと茜さんの言葉によって焦りに変わる。

「あの子を1人で行かせたんか、こんだけぎょうさん人おる中であんな可愛い子1人にしたらアカン。ナンパじゃ済まされへんでぇ!?」

「ここのビーチだって治安完璧って訳じゃない。万が一にも迎えにいかないと」

 秋人は一気に血相を変えて飛び出した。八乙女さん、有馬、出島がそれに続いて海の家を飛び出した。夕夏もアタフタしながも後に続いた。

「何事も無きゃいいけど」

 葵が不安げに呟いた。

 秋人達は、混み合うビーチを人の間を縫って走った。

(あぁクッソ、迂闊だった。ハル、頼む無事でいてくれ!)

 焦りと苛立ちを足に込め、秋人は全力で走った。


「んんん~~、んぐぐ……んんんぐ~……!」

(嫌だぁーー。離せくそっ!)

 芽吹は男3人に捕まり、トイレの外、建物の陰に引きずり込まれ、押し倒されていた。乱暴に押し倒されたのか、膝を擦りむいていた。しかし男達はそんなのお構いなしで、一人が仰向けの芽吹に覆い被さって来たのである。

 虫唾が走るような気持ち悪い表情と荒い息遣いで倒れかかってくる男。更に、僕の身体のあちこちを弄り始めた。

 僕はこの時改めて、自分が女の子であること。卑劣な男にとって女の子はこういうターゲットにされやすいということを思い知らされた。そしてなりより、『貞操の危機』という概念を知ってしまった。

 今これからこの男達が僕に何かするであろう、その¨何か¨を想像してしまい、羞恥と恐怖が冷や汗と共に染み出してきた。でもそれ以上に、怒りもこみ上げて来ていた。

(こんな……こんなことしても良いのは……秋人だけ……。ゲロ虫野郎が気安く僕に触んなコノヤローー!)

「んんぐぐぐぐ……んぱぁっ、離せぇーー!」

 必死に暴れたことで、口を塞いでいた手が離れた。その瞬間、僕は恐怖も羞恥も全部怒りに変えて暴れた。しかし、尚も押さえ込もうとしてくる男達。

「んがあぁぁぁ。離せクソ虫ぃぃぃ!」

「こいつ、さっきと態度が……っ!」

 芽吹の渾身の足掻きに動揺する男達。その直後だった。

 バキッドスッドゴッ

「ぐぇっへ!」

 鈍い音が三発と、苦痛の息を漏らす男の声。

 何が起きたのか、妙な静けさに目を開けようとした寸前、誰かに抱き上げられた。やつらに連れ去られると思った僕は、また思いっきり暴れた。すると、

「ちょっ、まて芽吹、落ち着け。俺だ。筑紫だ!」

「へ…………?」

「安心しろ。もう大丈夫だ」

 今僕の目の前にいるのは、筑紫だった。兄貴が助けに来てくれた。

 僕はひたすらキョトンポカーンな感じだった。まぁとりあえず、助かったみたいだけど。

「いや~やっぱり我が妹の身体はぷにぷにプリチィで可愛いなぁ。抱きしめてもいいか?」

 一瞬の間。

「うンにゃっ、変なとこ揉むなバカ変態兄貴!!」

 抱き抱えられていたことに気付いて、僕は慌てて脱出した。

(兄貴にお姫様抱っこされるなんて、最悪だ。屈辱だ)

 肩で息をしながら色んな感情で筑紫を睨む芽吹。そこへ、バタバタと複数の足音が。「ハルーー!」

 秋人の声だ。それに八乙女さんや出島君達の声も聞こえる。僕の心配をして来てくれたみたいだ。

「僕ここだよ」

「ハル、どこだ!?」

 そう言った直後に僕と秋人、お互いが視界に入った。血相を変えた秋人の顔。他の皆も、普段は見ない表情をしていた。相当心配させてしまったことに気付く。更に、ついさっきまでの恐怖感と、助かった安堵感がこみ上げてきた。気が付いたら次の瞬間、僕は泣きながら夢中で秋人に抱き付いていた。



 あの後、兄貴と八乙女さんと出島君が、どす黒い殺意の波動を纏って、僕を襲った男3人を文字通り半殺しにして警察に突き出した。実質被害者の僕より被害を受けたやつらに、少しだけ同情してあげたは僕だけの秘密です。

 それにしても、あの時の兄貴と八乙女さんと出島君の制裁の加えようは、僕も秋人も、有馬君も夕夏も、同じ感想を呟いた。

「鬼だぁ~~……!!」





続く…

 はい!という訳で。どうだったでしょうか。

 正直今回のは、書いてる僕自身、嫌悪感との闘いでした。残酷描写とかレイプとか、ああいうのが嫌いなんです。だからシリアスレベルとしてはかなり低いです。でもこれが限界なんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ