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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
28/104

春23番 出島貴様(ボイン)てなんだ!

 サマーバカンスその3ってわけで。海の家!なわけですが、最近流行りのグルメ描写は無理なので、その辺は期待しないで下さい。

「へぇ~。あの人葵ちゃんのお姉さんなんだ」

「じゃあ隣にいるマッチョのお兄さんは?」

「あの人はこのお店のマスターのてつ兄。姉貴の旦那。マッチョって、たしかにまぁ……」

 柴崎葵。芽吹達のクラスメイト。

 芽吹達が入った海の家が、たまたま柴崎葵の姉夫婦がやってるお店だった。マスターてつ。

【18番屋てつ】

(テッパン屋)のマスターで、柴崎葵の義理兄。そして、

「葵の姉の茜です。さっきはごめんねぇ~。はいお水。芽吹ちゃんだっけ?ホント可愛い~」

 これには苦笑いを返す芽吹。

 その妹の葵は、姉夫婦の手伝い兼バイトとして、店員さんをしているのである。

「んで、ここの看板ガールはどっちなわけ?」

 出島が、葵ちゃんと茜さんをチラチラ見ながら聞いてくる。すると葵ちゃんは、

「あたしはそういう柄じゃないから、ここは姉貴でしょ」

 と、キッチンにいる茜さんに聞こえるように言うと、

「え、アタシ?嬉しいけどガールって年じゃ……」

「ガール言うたらそこはやっぱり葵ちゃんやろ。こっちはもうミソジっ……」

 マッチョマスターさん、何やら茜さんに蹴られてる?


 消去法で看板ガールになった葵ちゃんから、何を注文するかと聞かれた僕達は、壁に貼ってあるメニューを見上げた。

・焼きそば

・男なら豚キャベツ炒め!

・マッチョが好きか?ガーリックライス!

・ガッツリタウリン海鮮チャーハン!

・可愛いくホートケーキ

・かき氷

 皆呆然とメニューに釘付けになった。

「……………」

 焼きそばとかき氷はともかく、他4種類の品書きに凄い熱を感じるのは僕だけじゃないみたい?

 微妙に選びずらいなぁと思いつつ、どれを注文しようか迷っていると、

「よっしゃぁぁ。俺ら男子は焼きそばと豚キャべとガーリックライス全混ぜで!」

「出島、お前何勝手に決めてんだよ!?」

 秋人が止めようとしたが、

「おぅ。そりゃ景気ええやないか。よっしゃ。ほんなら俺が特別にスタミナテッパンメニュー作ったらやないかぃ!」

 マスターてつさんがなんか無駄に調子付いてしまった。

「じゃあアタシは海鮮チャーハンにしよっかな。タウリンってよく分かんないけど」

「タウリンってアレだよね。リコピタンDとかに入ってるやつ」

「チャーハンかぁ、う~ん……。私はホットケーキにしよう。で、春風さんは?」

「あとタウリンて、貝類とかに多く含まれてて……あ、僕?う~ん……、僕もホットケーキにしる」

「「¨しる¨!?」」

 何故かそこにいた全員が噛んだ芽吹の方を振り向く。

「へ、な、何?」

 本人は気付いていないようである。

 夕夏は海鮮チャーハン。芽吹と八乙女さんがホットケーキ。そして男子3人が、マスターてつさんのテッパンメニューと決まった。

 テッパン屋てつのキッチン。広く作られた鉄板の前で、マスターのてつさんと、茜さんが、手際よく料理していく。 ジュワ~ ジュワッジュワッ!

 軽快なリズムとかつ男らしい激しさで、焼きそばと豚キャベが鉄板の上で炒められる。対して茜さんは、ガーリックライスとチャーハンを器用に同時に作り、ガーリックライスをてつさんに引き継ぎ、そしてすぐに鉄板の空いてるスペースでホットケーキを焼き始めた。

 見ていてお腹は減るんだけど、それ以上に見ていて楽しいと思った。

「どう、芽吹ちゃん。見てて面白いでしょ?」

 キッチンの動きに魅入っていた芽吹。そんな芽吹の顔を横から覗き込む葵。

 いつも男っぽい雰囲気と性格の葵。でも芽吹はこの一瞬ドキッとしてしまった。

(あれ、葵ちゃんって結構可愛い……?)

 確かに性格上、女の子らしさは少ないが、芽吹よりは女子歴史は長い。そう思った途端、急激に凹みたくなった。

(僕、女子歴半年くらいだし……。別になりたくてなった訳じゃないし……うぅ……)

「えっ、ちょっと芽吹ちゃん、もしかして泣いてる、え何で!?」

 急に泣きそうなっている芽吹に、若干動揺する葵。

 秋人がそばに来て芽吹に事情を聞く。すると周りには聞こえない声で芽吹は言った。

「僕、女子歴半年くらいしかないから、葵ちゃん普段男っぽいのに、今見たらなんか可愛いなぁって思って」

「はぁ……え、なんの話だ?」

 芽吹本人何の話か、何で泣いた分からないらしかった。

「……はぁ?」

 芽吹以上に意味が分からない秋人だった。


 そうこうしている内に注文した品が出来上がったようである。

「は~いお待たせぇ。まずはホットケーキっと。八乙女さんと、芽吹ちゃんだよね?」

「お腹空いたぁ~ってうぉ、デカい!」

「4段重ねか。食べ応えがあるな」

 驚いている皆に、イタズラっぽくニヒヒッと笑う葵。

「ホットケーキぐらいで驚いてちゃぁ、最後はどうなるかなぁ~?」

 そう言いながら、葵は次のを持って来た。夕夏が注文した海鮮チャーハンは、タウリンと言われるだけあってホタテの貝柱が多めに入っていた。

「こいつは、マスターの俺が持っていかなな。葵ちゃんにはちっと重いやろから」

 そう言ってマスターが持って来たのは、

「これが、ウチのスペシャルスタミナメニューや!」

どどーーん

 一抱えもありそうな大きな皿に山盛り。焼きそばと豚キャベツのミックスだそうだ。

 僕、夕夏、八乙女さんは口をポッカリと開けてしまった。秋人達男子3人は、低く唸って今にもカブリ付きそうな雰囲気だった。

 今回、出島が適当な注文をしたおかげで、マスターが急遽コレを思い付いたらしい。後にこの料理は、《スタミナ男盛り》として、店のメニューに加わり、男子学生達やサーファーなど、体育会系の客が増えたのだった。



 テッパン屋てつでお腹一杯食べて、葵と茜さんとマスターのてつさんと仲良くなった芽吹達6人は、会計を済ませて店を出ようとしていた。出ようとしている。のだが……、実は現在問題が起きちゃってたりしちゃったりして。

「京さん、そっち今いくらある?」

「……お前は?」

「あ~……秋人の財布はどうよ?」

「……ヤバい」

「わ、私も、申し訳ないが、帰りの交通費しか……」

 実は今現在、皆会計が出来ないでいた。帰りの交通費を覗いた手持ちでは、昼食代が足りないのである。

 皆青白い顔で沈黙していた。

「え~……っと、な、なんなら、ウチでバイトして行く?」

 同級生クラスメイトとして居たたまれなくなった葵は、恐る恐る聞いてみた。

「「えっ……!?」」

 皆一様に葵に振り向く。

 本来、芽吹達が通う夕陽ヶ丘高校は、一年生はバイトをしていけない校則なのだが、

「よーーっし。だったら俺に良い考えがある!」

 出島だ。

「何するつもりだ。貴様の言う¨良い考え¨が良かった試しがないぞ!」

「ヘイヘイ秋奈ちゃん、今回はマジだぜぇ!」

 何やらいつも以上に調子こいている出島の態度に、八乙女さんの顔が暗く陰り出した。ワナワナと怒りを抑えている八乙女さんを芽吹がなんとか宥める。

「で、出島君の良い考えって何なの?」

 すると出島は、右手で拳を握り、左手を腰に当てて、何やらポーズをとった。

「秋人、京弥、お前らの目は節穴か。今ここに、汚れなき美少女女子高生が2人と、超絶的天使の芽吹ちゃんがいるではないか。彼女達がメニューを売り込めば、俺らの借金など倍返しだ!」

(あ、今の、あのドラマの決め台詞だ)

 説明しよう。つまりこういうことだ。

 テッパン屋てつのメニューを弁当化し、それを芽吹、夕夏、八乙女さんに、出張販売してもらうという話である。

 これには当然八乙女さんが黙っているはずがなかった。

「貴様、お金のためとはいえ、ゲスな男共にこの私が媚びへつらえと!?」

「え、いや……」

「ちょっと出島君、男子が群がってくるの分かってて同級生の女の子に未成熟な身体を売れって言うの!?」

「どういう解釈してんだよ!」

「普通の服に着替えないと。まさか水着のまま!?」

「うん。ハルはいろいろ危険だから服着るべき」

「ほっ」

 秋人の言葉でホッとする芽吹だった。


 最終的に、芽吹、八乙女さん、あと一応秋人の抵抗虚しく。(夕夏は何気にやりたそうな感じで)マスターのてつさんと茜さんが作った焼きそばと豚キャベツ炒めの二種類が弁当になった。

 そして、芽吹達も出張販売の準備が出来たようだ。

 無難に女性客を集めそうだと、有馬と秋人も営業に回ることに。

 八乙女さんと夕夏は、水着の上に少し厚手で太ももまで隠れるロングTシャツと、パーカーで。 そして、

「ねぇ~、何で僕だけコレなんですかぁ~?露出は少ないかもだけど暑い……」

 その格好とは、モフモフの犬耳?カチューシャに、モフモフのタンクトップ?(へそ出し)モフモフのしっぽ付きのピキニパンツ。である。

 ゆるキャラ美少女芽吹ちゃん。

 プリティーギャル夕夏ちゃん。

 クールビューティー(ボイン)秋奈様。

「出島貴様、(ボイン)てなんだ。恥ずかしいから止めろォ。私だけ¨様¨ってなんだ。そもそもこんなキャッチコピーはいらぁーーん!!」

「僕もナンデゆるキャラなんですかぁ~?」





続く……

 柴崎葵ちゃんなんですが、夏限定のサブキャラってちょっと寂しいような今日この頃。あまり台詞ないですけど、夏パートはまだまだ続く予定なので、もうちょっと魅力を伸ばしたいと思っています。

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