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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春十八番 俺と勝負だ。柊秋人!

 最近あまりギャグパートとかなくてすいません。ホントほのぼのというか普通というか。

 面白い展開になるように精進します。

 突然の女体化という特殊な体質のせいか、今度は尋常ではないフェロモンのだだ漏れにより、芽吹本人の意思とは関係なく、無差別に男子を誘惑、発情させてしまうという、とても恐ろしい状態に。


 ハルが自宅待機になってから今日で2日目。

 今日も学校が終わったらまっすぐあいつの家に行くつもりだ。昨日も行ったけど、俺はハルのフェロモンに耐性があるらしい。たぶん、以前の、男の子の芽吹を知っているから。100%女子として見てはいないからなんだろう。

 しかし、そこで秋人はある疑問に思い当たる。

(もし、もし今、俺があいつを異性として認識しちまったら……。俺も影響受けるのか)

 実際のところ、徐々に雰囲気が女の子っぽくなってきている芽吹に、秋人は今までの友達感覚とは違ってきていると感じていた。

(俺はあいつを、ハルを女の子として見ていいのか。ハルを昔のまんまで見て、接することが出来んのは俺だけだ。今俺があいつを異性として見ちまったら、元に戻った時どうなるんだ?) そんなことを考えながら、芽吹の家に向かう秋人。

「こんばんわ」

 玄関に入り挨拶すると、パタパタとスリッパを鳴らして芽吹が出てきた。

「いらっしゃい。今日はもうなんか暇でさぁ、秋人が来るの待ってたんだよ。先に部屋に行ってて。今お菓子とお茶持って行くから」 この時はいつもと変わりない芽吹に見えた。

 俺の場合は、ハルの異常なフェロモンの影響は今のところはない。だからハルもある程度安心していつも通りでいられるんだろう。


 お互い、好きな漫画本を読んでいた時だった。ポツリと、芽吹が呟いたのである。

「秋人はさ、今僕のことどっちに見える?」

 俺はいきなりの質問に意味が分からず、聞き返した。

「秋人は僕が女の子のままの方がいいとか、思ったことってある?」

 この時の芽吹はなんとなく聞いてみただけという感じだったのだが、秋人にとってはなかなかはっきり答えられない質問だった。

「ハルは俺にとっては男も女も別に関係ねぇよ。なんでそんなこと聞くんだ?」

 すると芽吹は少し顔を赤くして、

「だって、秋人は男だし、僕に……その、フェロモンに影響されたら、秋人だって僕に迫ってくるでしょ?」

 すると秋人は急に立ち上がった。

「俺はお前にあんな気持ち悪いことはしない!」

 思わず強い口調になってしまった。自分が動揺していることに気付く秋人。

「ご、ごめん……」

「いや、俺もなんか……すまん」

 二人の間に気まずい沈黙が流れる。

 そんな時だった。

 外が何やら騒がしいことに気が付いた二人。

 部屋の窓から外を見下ろすと、何故か玄関先に、夕夏と八乙女さん。それからもう一人、見慣れないイケメンが押し問答していたのである。


「君達いい加減その手を離したまえ。俺は春風芽吹に愛の告白しに来たのだ。誰にも邪魔はさせない!」

「ちょっと坂口先輩こそいい加減私達の話を聞いて下さいよ。芽吹ちゃんには柊秋人君ていう彼氏がいるんですから!」

「なんの。恋のライバルがいるなら尚のこと、俺のこの熱い思いを彼女にぶつける価値がある!」

「止めておけ。彼女は今デリケートな状態にあるんだ。坂口先輩は会わない方が良い」

「いいや、俺はなんとしても彼女にぃぃ…!」


 夕夏と八乙女さんの制止を押しのけて、遂には芽吹の部屋まで押し掛けて来てしまった坂口先輩。

「ごめん芽吹ちゃん、この人全然諦めなくて」

「コヤツはバカか。春風さんは体調を崩しているからと何度も止めようとしたんだが……」

 芽吹の部屋の入り口で息を切らしながら説明をする夕夏と八乙女さん。

 突然の意味不明な状況に呆然と3人の方を見詰める芽吹と秋人。

 それに対して坂口先輩はというと、

「おぉぉ、ここが麗しの春風さんのプライベートルームか。なんと…実にシンプルな!」

 一瞬何か間があったようだが、誰も気にしていない。

 図々しく中に入って部屋の中を見回す坂口氏。その後ろで夕夏と八乙女さんが、

「私だって今日初めて芽吹ちゃんン家来たのに、何であの人が先に部屋に入っちゃうわけ?」

「あんなボケた虫が、春風さんを口説こうなどとほざきおってぇぇ、絶対潰す!」

 悔しさと苛立ちを露わにしている2人。

 学園のアイドル春風芽吹の部屋が見れるというのは、ファンであれば、男女問わず激レアな事なのである。がしかし、いつも仲の良い夕夏と八乙女さんよりも先に、会話もしたことがないほぼ初対面の坂口氏が芽吹の部屋に入るなど、絶対に許されない愚行である。

「坂口先輩いい加減に……」

「先輩だろうと許しは……」

 後ろから掴みかかろうとしたその直後、坂口氏はその手をスルリと掠めて芽吹に急接近し、あろうことか芽吹の手を握り締めて至近距離で見詰める体勢に入ったのである。

「……!?」

「なっ!?」

「えっ!?」

「っ…!?」

 突然知らない人が至近距離まで来て目を見開く芽吹。秋人、夕夏、八乙女さんも各々に目を剥いた。

「手を握んなぁこらぁーー!」

 3人の怒りの声が重なった。

「春風芽吹、体育祭以降、俺は君のことが頭から離れない。俺は君のことが好きだ。是非付き合ってくれないか?」

「…………」

 芽吹はキョトンとしている。その表情を見て秋人はため息をついた。芽吹のフェロモンの誘惑の影響のせいだと。

「え、あの…、演劇の人ですか?」

 ポツリと、自分の手を握ってくる人に、芽吹は聞いた。

 わざとでも、からかっているわけでもなく、芽吹は素直な疑問を口にしたのだ。つまり、この坂口隼人という先輩を、人物を、芽吹は知らなかったのである。

  この人も、全校イケメンランキングの上位者なのだが、芽吹からすると同じ学校の先輩とすら認識されていなかった。

 これにはさすがの彼も笑顔を引き吊らせた。対する秋人、夕夏、八乙女さんは、笑いを堪えるのに必死という様子。

 そんな笑いを堪えている秋人に、坂口氏は急に振り向き、とんでもないことを言ってきたのである。

「君だな。俺の恋のライバルは。柊秋人!」

「はぁ?」

「俺と勝負だ、柊秋人!」

「初対面のアンタがいきなり図々しくハルン家に上がり込んで来て何なんだよ!」

「どっちが春風芽吹きと美しいキスが出来るか勝負をしよう!」

 一瞬その場の全員が沈黙する。

「なに…!?」

 八乙女さん。

「マジ…!?」

 夕夏。

「え…………!?」

 秋人。

「ええええええええ!?」

 真っ赤になった顔で絶叫する芽吹だった。





続く…

 次回こそ、芽吹と秋人の心情、恋心を描きます。

 坂口氏は一応ギャグキャラです。

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