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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
18/104

春十四番 運動音痴は今日で克服したんだ!

はいはーい!花の体育祭パート開幕ぅ~!

体育祭パートは3話までの構成で進みます。


因みに、夕陽ヶ丘高校のジャージは、速乾性に優れたメッシュ素材のTシャツとハーフパンツですからね。ブルマではありませんよ。

梅雨が見事に明けた快晴の空に、響き渡る太鼓の音と声援。リズミカルなBGMと放送委員の実況。

夕陽ヶ丘高校体育祭、華やかに開催である。


軽快なオープニングテーマととも入場行進が始まり、次いで開会式。紅、白互いにエール交換をして、競技開始である。

まず最初の競技は100m走。

まず1年生男子から始まり、何番目かで、紅組に柊秋人。白組に有馬京弥がスタート地点に並んだ。

「わぁ、秋人と有馬君が一緒だ」

芽吹が言う。

《キャー、柊君頑張ってぇー!》

どこからか聞こえて来る先輩女子のラブコール。

(さすが秋人。モテてますなぁ。いいなぁ秋人は)

男心に少し嫉妬する芽吹だった。

「ヨーイ!」

秋人と有馬は一瞬互いに顔を見た。

ぱーんと火薬が弾けた瞬間、走者が一気に走り出した。

有馬は昔からサッカーをやっていたこともあって瞬発力には自信があった。対する秋人は、芽吹同様、特に部活には入っていないが、運動神経は抜群だった。

50mを過ぎた辺りから、秋人と有馬のトップ争いになった。

そうなってくると盛り上がるのは、

「キャー、柊く~んガンバってぇー!」

「秋人様ぁー!」

先程から聞こえている黄色い声援に芽吹は、

(秋人ってばホントモテモテ…。自覚してるのかなあいつ?)

一番自覚していない芽吹にそう思われている秋人だった。

2人がゴールし、実況が入る。

[柊君、有馬君、両者ほぼ同時のゴールとなりました。これは審判の判定が……。白組有馬君が1位となりました!なかなか無い接戦でしたね]

そこへ、夕夏が楽しそうにぴょんぴょん跳ねながら芽吹の側に寄って来た。

「芽吹ちゃんの彼氏負けちゃったねぇ。敵だからちょっと複雑?」

ニヤニヤしながらわざと聞いてくる夕夏だが、この絡みもいい加減慣れてきた芽吹。

「もう夕夏ってばそればっか、だから彼氏じゃないよ」

「でもさぁ、あの通り秋人君、モテモテじゃん。実際狙ってる先輩とかもいるらしいよ~?」

(秋人は、僕と違って¨ちゃんと男¨だからねぇ。誰とくっ付いても何の問題もないし)

そう思いつつも、何か胸がモヤモヤする感覚があった。でもその意味が分からない芽吹。

「ねぇねぇ芽吹ちゃん、柊君モテモテだけど大丈夫?芽吹ちゃんの彼氏でしょ?」

同じクラスの小坂も会話に入って来た。

「だからぁ…はぅ~…」

(そもそもいつから、なんで僕と秋人が付き合ってることになってるのかなぁ?)

やっぱり自覚がない芽吹だった。

競技を終えた1年男子達が席へと戻って来た。

紅組の席に戻っていく秋人は、相変わらず黄色い声援を浴びていた。それを特に気にする素振りもなく、呑気に芽吹の方に手を振ってくる。それに気付いた芽吹も、普通に手を振り返す。そんなやり取りを見ていた周りの生徒達は、

「柊君ってステキだよねぇ~」

「芽吹ちゃんも何か癒やされちゃうよねぇ~」

「芽吹ちゃん天使だぁ~」

「芽吹ちゃんと二人三脚してぇー!」

そんな一言を喋った生徒が一人が…

ゴゴゴゴゴ…

「マイシスター、ノータッチ」

野太い声が聞こえた直後に消えた。

晴天とまぶしい太陽に反射した芽吹の銀色の髪は皆を魅了していた。


100m走は3年生の番になっていた。

クラスメートと話していた芽吹だったが、ふと、競技に目を向けてギョッとした。

兄筑紫が、全くブレることなく、こっちに渾身のスマイルを向けたまま爆走していたからだ。

(き、気持ち悪い…)

ゴールしても尚、スマイルとガッツポーズを向けて来る兄に、内心青ざめる芽吹だった。

「キャー、筑紫様ー!」 (他人からしたらイケメンか。僕からしたら暑苦しいだけなんだけど)



普段の体育の授業ではほとんど球技ばかり。芽吹はその球技に関しては驚異的な運動音痴だった。

例えば、野球でボールを投げると、真下の地面に投げてしまい、バウンドで顎に強打。バレーボールは、何故か全て顔面キャッチ。バスケはドリブルしようとするとボールがへんな方向へ逃げてしまうのだ。

そんな癒やされドジっ子な芽吹だが、短距離走に関してだけは神懸かり的なのである。驚異的なスタートダッシュからの加速力。本人曰わく、

「勢いと根性です!」だそうである。


そして今、芽吹は100m走のスタート地点に立っている。

100m走女子の部である。

「芽吹ちゃーんガンバー。ブッチギっちゃえ!」

「春風さん、いつも通りだ」

夕夏と八乙女さんである。

「任せろってばよ!」

近くに秋人も見に来ていた。

「あんま張り切ってコケんなよ」

「秋人の紅組負かしたるぜぃ!」

「お前だけ頑張っても意味ねぇだろ」


「位置に着いて、ヨーイ…!」

腰を低く構える。

ふと視界に気になる物が見えて、芽吹はそちらに視線を向けた。

【妹 萌 命 I LOVE芽吹】と書かれた大きな大漁旗並みの旗を一人豪快に振る兄筑紫の姿が目に入った。

(何してんのあの人ぉぉー!?)

直後、

ぱーん!

ツッコんでいる隙にスタートが出遅れてしまった芽吹。

周りが少しざわめく。

しかし、そこは芽吹の神懸かり的な加速力。既に20メートル程離されていたが、スタートラインに砂煙を残してあっという間にビリから2位に浮上。

「うぉりゃー、兄貴のバカ野郎ー!」

何やら叫びながら、残り20メートルで最後の一人を抜き去ってゴール。

生徒、観客が湧いた。

「芽吹ちゃんウォォ!」

白組応援団の旗持ちが、今さっき筑紫が振っていたはずの旗を必死に振っていた。

「ウォォ…ゼェゼェ…この旗重くねぇ?つーかこの旗誰作った?」

芽吹はその旗が立つ場所を大幅に避けて席へと戻ったのだった。

(兄貴、いつの間にあんなの作ったんだよ!?なんかめっちゃ恥ずかしいこと書いてるじゃん!)

不機嫌ながも赤面する芽吹だった。




お昼休みに入ると、家族と一緒に食べる人はそれぞれに散って行った。そのほとんどは女子なのだが。高校生にもなると、男子のほとんどはやっぱり教室で友達と食べる人が多いようだ。

しかし、芽吹の両親は、芽吹にいちいちキュンキュンしている。だからいくら芽吹が友達と教室で食べると言っても、母菜花は譲らなかった。

「運動会はみんなで同じ弁当を食べるのが良いんじゃない」

「可愛い芽吹ちゃんがお昼休みを楽しむ姿を、ハイスペックデジカメ2機と、このフルハイビジョンカメラで撮らなきゃ、一年丸ごと無駄にしたようなものだ!」

(ハルの両親どんだけだよ…!?)

さすがにちょっと引き気味になる秋人。

「母さん、運動会じゃなくて体育祭だよ。それに僕もう高校生だし、男子なんてほとんど教室で食べてるんだよ」

「別にいいじゃねぇか。俺ん家誰も来ねぇから逆に助かったしさ」

「秋人が、そういうなら…」

渋々納得する芽吹。




弁当も食べ終わり、一旦校舎に戻る芽吹と秋人。

「あ~食ったぁ。弁当にはやっぱり玉子焼とウインナーだよな。玉子焼うまかったなぁ。あっ、ごま塩おにぎりもうまかったなぁ」

秋人がそう言っている横で、モジモジする芽吹。

(秋人、玉子焼美味しそうに食べてくれてた。う~…僕が作ったって言ったら驚くかな?)

「さすがハルの…」

「あれ、僕が作ったの!」

「え?」

「だ、だから、あの玉子焼とかおにぎり、ぼ、僕が今朝作ったやつ」

一瞬の間。

(なんで僕こんな緊張してんの、これじゃまるで…)

(ハルの手料理…!?)

秋人もまた、芽吹の手料理だと気付いてドキドキし始める。

「ハルの、すげぇ旨かった。今度また、作ってこいよ」

「え…」

「お、俺が毒味してやる」

(なんで俺こんな緊張してんだ!?ハルの方見れねぇー!)

「あ、ありがと…」

(カァァァァ…何で、何でこんな…顔熱いよ。何か、これって、え…ウソ…この感覚って…!?)

真っ赤になってアタフタする芽吹。秋人にとってもなんだか気まずい空気が流れる。

そんな時だった。

「春風芽吹ちゃん…だよね?」

その声に振り向く芽吹と秋人。

声を掛けてきた人物とは、腰のあたりまで伸びたサラサラの黒髪はポニーテールに。ちょっと吊り上がった大きな瞳。どこか八乙女さんに似たスタイルの良い大人な雰囲気。夕陽ヶ丘高校生徒会長、姉崎ルイであった。

(ふぁ~…綺麗な人…)

「春風芽吹ちゃん?」

「ぽぅ~…」さっきとは打って変わって今度は綺麗な先輩に見惚れる芽吹。

「姉崎生徒会長、ハルに、コイツに何か用ですか?」

「ジィ~………」

ジィ~っとこっちを見詰めて来る姉崎先輩。

「あ、姉崎…先輩?」

(うわ、僕、先輩に凄い見詰められてる。もしかして僕が元男の子だって見抜かれた?)(んな訳ない)

芽吹は恐る恐る前のめりに姉崎先輩の顔を覗いた。その瞬間、

ガバッ!

(!?)

「かぁわいい~。ムギュゥ~!」

「ほぇぇぇ!?」

姉崎先輩にいきなり抱きしめられた芽吹。

(ちょ、先輩、胸が…)

と、そこへ、

「姉崎、お前俺の妹に何やってんだ?」

「あ、筑紫。フフンッ。貴方の妹は私が食べてもいいか?」

《なっ!!》

芽吹と秋人は揃って絶句した。

「誰がお前なんかに食わせるかって。くだらねぇ事言ってねぇで早く午後の準備に行け。生徒会長仕事多いんだろ?」

筑紫にそう言われてサッと我に返った姉崎先輩。

(さっきのハグの感じ、何か前にもあったような…?)

芽吹がぼけぇっとしていると、姉崎先輩がグンッと顔を近付けて来て、真正面から芽吹を見詰めてきた。

「ななな何ですか?」

「アナタがいれば白組の優勝は確実ね。午後も期待してるわ。頑張ってね!」

ハツラツと手を振って校舎に走っていく姉崎先輩。それをぽけぇ~っと見詰める芽吹。そんな芽吹をよそに、秋人と筑紫は、

「いつもの運動音痴はどうしたんだ?」

筑紫。

「体育の時間とか見てると確かに運動音痴なんですけどねぇ」

すると、

「あぃで!」

「ぐぁっ!」

芽吹は思いっきり二人の足を踏んずけてやった。

「運動音痴は今日で克服したんだ!」

赤い顔を隠すようにパタパタと先に校舎に入って行く芽吹。その後ろ姿に筑紫は、

「朝の走りも良かったが、あのちっこい感じは更にカワゆいなぁ」

(うっ…この人と同意見なのは認めたくないが、確かに可愛い)

そんな二人の目の前で、

コケッ

《あっ》

びたぁん!

「ふンべっ!」

「転びかたもプリちぃ!」

やはり癒やされドジっこの芽吹だった。





続く…

『ボクガール』ハマっちゃって、7巻まで読み終えたんですが、次巻発売が待ち遠しくて、1巻からループ読しています。たまりません(≧∇≦)!

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