春十一番 俺様、参上!
ようやく投稿出来ました。
芽吹、秋人、夕夏、八乙女さん、真希さん。
5人はそろそろ帰るため、駅に向かっているところだった。
「あ、母さん?…今秋人とか友達と一緒なんだ。…うん、今から帰るから。は~い!」
芽吹は携帯で家に連絡をいれていた。
「ハァァ~、今日は楽しかったねぇ!」
「芽吹ちゃんの歌超良かったしねぇ!ホントびっくりしたよ~」
「そ、そんなに、あんまり…」
夕夏、真希さんが揃って芽吹を褒め倒す。すると秋人が、
「こいつをあんまりやたらに褒めない方がいいぞ」
「ほえ?」
「なんで?」
芽吹と真希さんが普通に歩きながらキョトンとして秋人の方を見る。
「あんまり褒めると…ほら」
ゴンッ!
「ひんぎゃっ!」
芽吹が電柱にぶつかって妙な悲鳴を上げた。
芽吹達一行が駅前のコンビニ近くを通ろうとしていた時だった。
コンビニ前でたむろしていた、見るからに危ない部類のチャラ男が3人。芽吹達に向けてイヤらしい笑み浮かべながら立ち上がった。
芽吹、夕夏、真希さんは、何も気付かず会話をしながら歩いていた。
「芽吹ちゃんも結構スイーツ好きなんだね。今度どこか美味しいお店に食べに行こう」
「うん、行く行く!嬉しい、真希さんに誘われたぁ。僕、女友達とかとお店で食べるとかしたことなかったんだぁ!」無邪気に喜ぶ芽吹。
しかし、そんな3人とは別に、秋人と八乙女さんは、チャラ男3人組みの視線と薄汚い雰囲気に既に気付いて、芽吹達を庇うように前に出ていた。
「こんばんわ~。君達ちょっといいかなぁ?」
「君達メッチャカワイイじゃん!読モとかやってるの?」
ニヤニヤと言い寄ってくる男達。
「ねぇねぇ、君達まだこの辺で遊んでくんでしょ?俺ら楽しいトコ知ってんだ。一緒に来ない?」
「モチのロンで俺らが全部奢っからさぁ。どう、行こうよ」
そんな男達の嫌~な雰囲気に、夕夏は微かに顔を引き吊らせて、八乙女さんに縋りついていた。芽吹と真希さんは、自然と秋人の後ろにピタリと張り付いて警戒していた。
「女子高生相手に堂々とナンパとはイイ度胸だねお兄さん方?折角だけどそのお誘いはキッチリ断らせてもらうよ。残念だけど」
「いやいや、そう言わずにさぁ。君大人っぽいねぇ。俺タイプかも」
と、男が八乙女さんに顔を近づけた一瞬、八乙女さんの纏う空気が変わった。
「ハル、小川さん、俺と手繋いどけ。ヤバくなったら逃げるぞ」
秋人は小さな声で芽吹と真希さんに言った。
「貴様らドブネズミの分際がワタシに臭い息を吹きかけるな!」
ゴキャッ!
八乙女さんがそう言い放ちながら目の前の男の顔面にヘッドバッドを食らわせたのだ。
「グハッ」
「このクソ、いきなり何してくれてんだテメェ!」
ぶち切れる男2人。顔面流血でのびる男1人。
「うわっは、八乙女さんヘッドバッド!?」
「…!!」
「お前っ、マジでやりやがった!?逃げるぞハル」
「へ、は、はひぃ!?」
「夕夏走れ!」
「あ、うん!」
八乙女さんの先手必勝に興奮気味の真希さん。秋人は八乙女さんの行動を予想していたが、芽吹は突然の出来事に付いて行けておらず、夕夏はなんとか八乙女さんに引っ張られて走り出した。
「こんのクソぉ、待てコラァ!」
ぶち切れた男2人が追いかけて来る。
「八乙女お前喧嘩っ早いにもほどがあるだろ!?もっと穏便な方法あったろ!?」
走りながら八乙女さんに抗議をする秋人。それに対して八乙女さんは、
「し、仕方ないだろうが。や、やってしまった事だ。忘れろ!」
そんな2人に引っ張られながら走る芽吹は、恐る恐る後ろを見てみた。すると、
「逃げんなコラァ!」
獰猛なドーベルマンが二頭、牙を剥き出しにして追い掛けて来る。芽吹の目にはそう見えていた。
「ひぃぃぃぃ!!」
「うおっ、ちょっ、おいハル!?」
突然芽吹がパニック状態になり、右手に秋人と真希さん。左手に八乙女さんと夕夏で手を繋ぎ、芽吹が先頭に猛ダッシュを駆けた。
「嫌ァァァァコワイコワイコワイコワイー!!」
「ひゃぁー、芽吹ちゃん待ってストップストップー!」
パニクり爆走中の芽吹に一方的に引っ張られて、鯉のぼり状態になっている真希さんと夕夏だった。
なんとか振り切って適当なファミレスに入った芽吹達。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?…では少々お待ち下さい」
「はぁぁ~…。一時はどうなるかと思っちゃったねぇ?」
苦笑いと溜め息混じりに言う真希さん。
「八乙女、お前無茶し過ぎだろ。ハルは足早いからともかく、真希さんは普通なんだぞ」
「いや、普通って…」
「ちょっと秋人君、私は普通じゃないっていうの?」
すかさず夕夏が抗議する。
「八乙女さん、おでこ大丈夫だった?」
しかしそれは芽吹によって遮られた。
「あぁ、いや…べ、別に平気だ。春風さんこそ、急にあんなに早く走って平気なのか?」
「あぁ、うん。全然平気だよ。というかとにかく怖くて」
苦笑いで答える芽吹。
「ハルは昔っから脚だけは早かったもんな」
「ムッ。¨脚だけ¨ですいませんね」
「あ、芽吹ちゃんが膨れたぁ!カワイイ~!」
「うっ……(照)」
ついさっきまでの切羽詰まった感じから一変。和やかな雰囲気に変わっていた芽吹達は、程なくして店を出て、再び駅へと向かった。
駅前広場
「なんかやっと駅って感じだね」
「美少女はつらいよねぇ~。罪だよねぇ~」
夕夏がわざとらしく悶えてみせる。
「ふざけていると今度はナンパじゃすまないぞ!」
八乙女さんに冷静に怒られて静かになる夕夏。
「マジでまたナンパ野郎がきたら面倒だし、さっさと帰ろうぜ」
「そうだな。私と夕夏と小川さんは電車だが、春風さんと柊はこのまま歩きなんだろ?」
「あぁ。…あれ、ハルがいねぇ?」
芽吹がいないことに気付くと、夕夏と真希さんも周りをキョロキョロし出した。
〈芽吹サイド〉
「うわぁ~、ケーキもドーナッツもいろんなのあるなぁ。う~ん、どれか家に買って帰ろうかなぁ?」
ケーキ屋さんのケースの前で1人。芽吹はうっかりみんなから離れてしまっていた。
「う~ん、このいちごタルトおいしそうだなぁ。でも僕的にはやっぱりエクレアかなぁ。父さんはたぶんチーズケーキか、モンブランでしょ。母さんは絶対的にショートケーキだし。兄貴はぁ…」
そこへ、
「ちょっとそこの子、俺がケーキでもなんでも奢ってあげっからさ、ちょっと遊ばない?」
「ほぇ?」
その頃秋人達は、
「おーい、ハルー!」
「芽吹ちゃーん!」
「春風さーん!返事とか聞こえてもいいはずなのに」
「ったくあいつ、興味引くもの見つけると一直線だからなぁ、でもどこ行ったんだあいつ」
同時期、駅近くの店から出てきた少年が2人。芽吹達と同じ制服である。
「よっしゃー!遂に手に入れたぜ。『アベ○ジャーズ無双』。早速徹夜でやり込み開始だぜぃ!」
「徹夜でゲームも分かるが、明日授業中寝んなよな」
「分かってますって京さん!」
「その呼び方はよせ」
程なく歩いて駅前広場まで来た2人。そこで2人はある1人の少女の姿を捉えた。
「あれ?…京弥、あそこにいんの芽吹ちゃんじゃね?」
少年の片方が、遠くに向けて指を指した。
背の高い、背広姿の男性に手を引かれている小柄な白い髪の少女が見える。
「この辺であの髪は芽吹ちゃんぐらいだろうな。でもなんか…」
「…なんかおかしくね?」
2人は無性に嫌な予感がした。
「もし間違ってたら謝るで。とりあえずやってみよう!的な?」
「いいぜ」
〈芽吹サイド〉
「あの、折角何ですけど、僕友達と今から家に帰るんです。だから…」
芽吹がそう断ると、男は方眉を吊り上げて、芽吹の顔を覗いて来た。
「ん、君もしかして、男の子?いや、女子の制服だよな。僕っ子ってやつかな?」
男の表情が、優しそうなな笑顔から、貼り付けたような不気味な笑みに変わった。
「うっ…、は、放して下さい」
(どうしよ、この人ヤバい人だ。もしかして誘拐される?あわわわわ、どどどどうしよう、誰か~、秋人~)
「君ほどカワイイ子なら悪いようにはしないから。君なら有名モデルになれるよ」
「そんなのいらない!はーなーせぇー!」
半泣きになりながら逃げようと叫ぶ芽吹。
と、そこへ突然、
「¨俺の姫¨を泣かせてんのはお前かぁー!チェストォー!!」
少年の1人がミサイルのようなドロップキックで乱入して来たのだ。
「チッ、なんだこのガキは!?」
睨みつけてくる男に対して、ニヤリと笑う少年。
(あれ、今の人ウチの学校の生徒…)
一瞬そんなことを考えていると、
「芽吹ちゃん今の内に早く逃げろ」
そういって芽吹の背中を押したもう1人の少年。
(あれ?同じクラスの…?)
とりあえず逃げろと言われたから逃げようと、芽吹が前方を見ると、秋人と真希さん、後ろに夕夏と八乙女さんが、こっちに向かって走ってきているのが見えた。
「芽吹ちゃーん!」
「大丈夫かハル?ったく、勝手にいなくなるなバカ!」
「ご、ごめん…」
「無事で良かったぁ~」
「ナンパ野郎共が多いのだ。一人になるな!」
(ひぃぃ、八乙女さんコワい!)
夕夏と真希さんはホッと安堵の表情に。秋人と八乙女さんも、焦っていた顔がスッと消えた。
「!…お、怒ってすまない。とにかく無事でよかっ……」
八乙女さんが少しツンデレしながらそこまで言いかけた時だった。
「俺様、白銀の姫をお助けに参上!」
出島太矢が何やらポーズを決めて降ってきた。
「出島か!?」
「おぅ、秋人、お前の彼女助けといたぞ」
有馬京弥がクールに現れた。
「有馬!?つーか彼女じゃねぇよ!」
「か、彼女じゃないよ!」
相変わらずハモる芽吹と秋人であった。
「俺が姫を助けたんだよォ~。芽吹ちゃ~ん、お礼にハグしてぇ~!」
ガバッ
出島がいきなりダイブで芽吹に抱き付いてきた。
「ふぇっ!?ハグっ!」
その直後だった。
「エロザルが芽吹ちゃんに触れるなぁー!」
八乙女さんが鬼の形相で出島の腕を掴み、勢いのままに出島を投げ飛ばした。
「姫のピンチにはいつでもこの俺がぁぁぁ…」
そして星になった。
みんなと駅で別れて、芽吹と秋人は徒歩で帰宅中である。
「なんか今日、最後の最後はごめん」
「あぁ、別にもう気にすんな」
「うん…」
一旦二人は静かになる。
「ハルお前さぁ、…」
秋人は少し言葉に詰まった。が、またすぐに、
「お前結構見た目美少女なんだから、その辺もう少し自覚持て」
秋人は早口でそう言った。 すると芽吹は、
「そ、そんなこと、秋人が照れながら言うな!」
もう日も暮れて、街頭の薄明かりの下、お互いの顔が赤いことに気付いてまた赤くなる芽吹と秋人だった。
続く…
これ以降、出島太矢と有馬京弥がレギュラーメンバーとして登場して行きます。