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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
11/104

春八番 芽吹ちゃんだったら世界から戦争無くせるわ

夏の反動をモロに食らってしまい、2日程寝込んでしまいました。2日とも13時間~14時間寝込み、夕飯一食しか口にしていないという有り様。

だがしかーし、今日見事復活。仕事サボって執筆活動!(いやいや仕事しろよ)

芽吹きにとっては不本意極まりない¨生理デビュー¨とやらから一週間。あれから4日間連続で生理痛に悩まされていた芽吹だが、幸い、母菜花がフォローしてくれていたためかなり助かっていた。

学校では秋人が唯一の芽吹の理解者だが、¨コレ¨に関してはさすがに相談出来ない。夕夏と八乙女さんにはまだそこまで心を許せてはいない。この一週間芽吹にとってはかなり精神的に疲れた一週間だっただろう。

自分のことながら、思春期の男心には相当恥ずかしい話である。今日は下校途中に街のドラッグストアによって、生理用品という物を買わなければならないのである。芽吹の見た目は、アイドル並みの美少女ぶり(本人自覚薄だが)。怪しまれることはまず無いのだが、精神的負担もまた並みでは無いのだ。学校のトイレでは一苦労も二苦労もある。

中身が男子であるということを切なく思う今日この頃の芽吹だった。


今日の昼休みは、芽吹がだるいからということで、学食には行かず、秋人は自分の教室で。芽吹、夕夏、八乙女さんは机をくっつけて食べていた。

「やっぱりスイーツは別腹なんだよねぇ」

「ふん。そのうち雌豚になるぞ」

「秋奈っちそれ意味変わってくるからやめて」

夕夏と八乙女さんのそんな会話に全く入っていけてない子が一人。

「はぅ~…うにゃぁ~」「大丈夫芽吹ちゃん?バファ○ンルナとか飲んだ?」

「今朝は飲んだけど…」 と、そこへ、

「ハル、具合はどうだ、大丈夫か?」

秋人である。

教室に入ってきた秋人を見て、芽吹はなんとなく目を逸らした。

芽吹は最近、さりげなく、気を悪くしない程度にさりげなく、秋人を避けるようになっていた。

秋人もさりげなく心配してくれているのは芽吹も気付いている。でも、生理痛の時は、あまり男に干渉されたくないという気持ちが、今の芽吹にはあった。


「イケメン彼氏がきたよ~?」

茶化す夕夏。

秋奈が少し怖い顔で秋人を見る。

「あはは、だから秋人はそういうんじゃないから」

「俺はハルが元気ないから心配して来ただけだ」

「フー!優しいィ彼氏!」

{だから違うって!}

芽吹と秋人のツッコミがシンクロした。

「わお!名カップルじゃん」

夕夏がまた茶化すと、芽吹は少し赤くなって秋人から目を逸らした。すると秋人も目を逸らし、微妙な空気になった。

「き、教室ではんなりしてるから大丈夫!」

拳を作って無駄に強がってみせる芽吹に、秋人は苦笑いで言った。

「はんなりって…。まぁいいや。じゃ、無理すんなよ」

そう言って秋人は教室を出ていった。それを見送る芽吹から小さな溜め息が漏れた。それに気付いた八乙女さんが一言、

「春風さん、もしかして、秋人君を避けていないか?」

「ほえ!?」

八乙女さんから思わぬ指摘を受けて、芽吹は一瞬肩が跳ねた。

「私も最近ちょっと気になってた」

八乙女さんはスッと芽吹を見据えて、そっと目を瞑った。

「私は男という者があまり好きではない。不潔でバカで単純で、ガキでスケベで、女を下半身でしか見ない不埒極まりない生き物だからだ」

眉間に皺を寄せてまくし立てる八乙女さん。教室にいる男子共がなぜか股間を隠して壁際まで逃げていたりする。芽吹もなぜか股間を抑えたくなったが。

「春風さんと秋人が幼馴染みで長い付き合いのは知っている。柊秋人という男が、私が今言った類でないことは、春風さんを見ていればなんとなく分かる」

八乙女さんはそこで間を置いた。

芽吹は自分を含め、周りの男子の性格をイメージした。中学になるとえっちぃ話をよくする友達が増えた。

(¨男¨だから?僕はどっちかって言うと…)

芽吹は年頃の割に、周りに比べてそっちの話題は避ける性格だった。

八乙女さんが言った。

「彼なら大丈夫だろう」

芽吹はキョトンとした。

「秋人君相手なら、生理とかで恥ずかしくても、そんなに避けなくても大丈夫じゃない?ってこと」

八乙女さんは夕夏にいいところを取られたようで、夕夏を睨み付けた。それをジェスチャーで謝る夕夏だった。



昨日も今日も、秋人とはいつも通り一緒に登下校している。芽吹はあれからずっと、八乙女さんの言ってくれたことを考えていた。

(たしかに…、僕はこんな体になっちゃったけど、秋人は前とあまり変わらず僕と接してくれてるし、うちの家族みたいに変なことしてこないし。ん?うちが異常なのか?母さんとか?兄貴とか?そういえば秋人は女子にモテてたし、女の子との接し方は慣れてるのかな…?)

芽吹はふと、横を歩く秋人を見た。すると、秋人が既に芽吹を見詰めていた。

「!」

「何難しい顔してんだ。最近らしくないぞ。どうした?」

芽吹と同じ目線で心配そうに顔を覗き込んでくる秋人。急に顔の温度が上がる。芽吹は訳が分からず動揺して、何もないところでつまずいてしまった。一瞬視界が傾き、芽吹がアッと思った直後、ふわりと何かに支えられた。

「あっぶねぇ…。ビビらせんなよ。大丈夫かハル?」

よく見ると、秋人の顔が至近距離にあった。

「…!?…にゃぁぁぁ!!バッ、バカッ、変態!な、何抱きついてんだ、僕は男だ。勘違いするな!ハァハァハァ…」

「はぁ?」

秋人が(°□°;)ポカ~ンとなった。

「ぼ、僕は女子だけど女子じゃないし、男だけど男じゃないし。あ、秋人はイケメンだし、女子の扱いは慣れてるかもだけど、僕そんな女子じゃないし、だから、だから…えっと、その…」

両手をバタバタさせたり、ムンクの叫びよろしく両手で顔を挟んだり、支離滅裂である。芽吹自身も混乱していた。

無表情の秋人がゆっくりと近づいてくる。

「あぅ…あの、えっと…そ、その…ぅ~…」

秋人の右手が上がる。芽吹は思わずギュッと目を瞑った。すると、頭に優しく手が触れた。

「なんか俺、お前に変な気遣わせてるみたいだけど、俺、なんかしたか?」

そっと顔を見上げると、秋人は困ったような、悲しいような表情を向けていた。

「俺とハルの長い付き合いだろ。悩んでんならはっきり言え。いまさら変な気遣うな。な」

「…………」

(秋人…、なんでコイツいっつもこんなカッチョイイことするんだよ!)

芽吹の顔が次第に鳴きそうになってゆく。

「えぇ、ちょっハルお前…!?」

芽吹は道のど真ん中で見事に号泣してしまい、秋人が慌てて宥めるのだが、傍目からは、美少女を泣かせてしまい慌てている¨悪い兄ちゃん¨的な印象を受ける事になってしまっていた。

その後、なんとか宥めることは出来たが、結局芽吹は泣き疲れて寝てしまう始末。そんな芽吹をおんぶして歩く秋人は、道行く人たちの視線と勇敢に闘いながら、芽吹を家まで送ったのだった。

(泣き疲れて寝るって…、子供か!?まぁ、可愛いあいつだから許せるが…。でも、あいつが最近悩んでること、はっきり聞き出せなかったなぁ)

背中に残る芽吹の感触を思いながら、帰宅する秋人だった。


その日の夜。

(う~ん…。よく考えると最近秋人を変に意識しちゃってるような…。僕がもし¨本当の女の子¨だったら、秋人とは普通の友達でいられたかな?秋人はモテるし、すぐ彼女とか出来てそうだよなぁ。あれ、だったら今だって誰か彼女いてもおかしくないよね?)

普段学校で自分と秋人が周りからどう見られているかをスッポリ忘れている芽吹。

ちょっと天然だが、芽吹なりの頭でいろいろ考えていたところへ、

「myシスター、何か悩みがあるならお兄ちゃんが聞くぞー。だからお兄ちゃんも一緒にお風呂に入って…っ!」

突然筑紫の声が途切れた。かと思うと、何やら鈍い打撃音と阿鼻叫喚が聞こえて来た。

最近芽吹が入浴中に度々起きる怪奇現象だ。

(いくら¨兄弟¨でも、今は¨兄妹¨だし、兄貴のあのオーラは絶対えっちぃに決まってる。だって兄貴隠れオタクの変態だし。風呂なんて絶っっっっ対無理!変態のシスコンは絶対に危険だもん。だって母さんがそう言ってたもん!)

〔実のところそれは、芽吹を独占し、美味しく頂こうと目論む母菜花の策略だったりする〕


部屋に戻った芽吹はまた考え始める。

(あの時の秋人、本当に心配してた顔だったかもなぁ)

芽吹は今日の帰りの時のことをぼんやりと思い出していた。が、結局いつの間にか寝てしまうのだった。

翌日。

いつものように秋人が玄関の外で芽吹を待っていた。程なくして芽吹が元気良く出て来た。もう普通に着慣れた可愛い女子の制服姿で。

秋人は一瞬見惚れそうになるのを深呼吸で抑えた。

「おっはー秋人。ではいざ、無限の彼方へさぁ行くぞ!」

「バズラ○トイヤーかよ」

普通にツッコミを入れる秋人。

「えへっ、分かった?」

ペロッと下を出しておどけて見せる芽吹。そんな様子に少し安心する秋人だった。


「ハル、今日は具合大丈夫なのか?その…あれの日は…?」

秋人は遠慮がちに聞いてみた。おそらく芽吹は恥ずかしがるか、怒るだろうと思いつつ。すると芽吹は意外とアッサリ、

「生理のこと?うん。波があるらしいんだけど、今日は全然大丈夫みたいだ。でも一応母さんのアドバイスで薬とか、あとえっと、生理用品とか?携帯するようにしてるから。ごめん秋人。心配だった?」

そう言って見詰めてくる芽吹に、秋人は照れ隠しにこう言った。

「まぁ、そりゃあな。お前たまに一人で悩み抱え込む時あるだろ。だから、ちょっと気になってただけだし」

「クスッ。もう大丈夫だよ。サンキュー秋人!」

そう言って先に走り出す芽吹の顔が、微かに赤いように見えた。そんな芽吹に、秋人はまた見惚れそうになっていたのだった。


その日の芽吹は、いつも以上に元気ハツラツオロ○ミンC的テンションで過ごしていた。そのキラッキラのオーラのせいなのか、廊下では、芽吹とすれ違う生徒は皆顔がトロけていたり、芽吹のクラスではその日の各教科の先生方が甘々になったり、他のクラス、学年の体育の試合が、闘争心ゼロで試合にならないなど、本人は元気ハツラツなのだが、男女問わず他人をフヌケにしてしまう魔性のスキルを会得した芽吹だった。


「芽吹ちゃんだったら世界から戦争無くせるわ」

「秋人…、貴様はなぜ平気なんだ…!?」

「ん?う~ん…、付き合い長いから?」

「リア充が、原子炉に落ちて爆発しろ…」





続く…

今回は芽吹ちゃんの心の僅かな変化と葛藤を、やんわりと描いたつもりです。コメディシーンありました?


次回…作者暴走します。よろしく。

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