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芽吹と春夏秋冬  作者: 霜月ぷよ
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春七番 こんなお祝い嫌だぁー!

兄筑紫が少々暴走します。今回芽吹ちゃんの身体あるに異変が…!?

 高校生活ももう1ヶ月を過ぎ、今日は5月20日。日曜日。

 一学期中間テストを明日に控えた銀髪の美少女が一人。春風 芽吹である。

 そんな彼女?も、いろいろあって、美少女歴1ヶ月半。女子同士という新世界で揉まれ、芽吹なりに¨女の子¨が板について来ていた。テスト準備期間も今日が最終日。明日から2日間がテスト本番。勉強が苦手な者なら、たとえ美少女だろうがイケメンだろうが、男女問わず憂鬱になる行事である。

芽吹の苦手教科は理数系らしく、昨日寝る前に数学をやってはみたが、20分保たず、就寝時間を早めただけだった。

今日午前中はそこそこ得意な国語と歴史でまぁまぁ順調そうである。


勉強を始めてからしばらく経った頃、芽吹の部屋に近ずいてくる足音が。そしてドアが開くのと同時にケダモノのような奇声が。

「愛しのMyシスター芽吹ちゅあ~ん、お兄ちゃんが勉強教えてあげっ…」

バキッ!

「メソポタミア!!」

芽吹は開きかけたドアを全力で閉め返した。筑紫は閉め返されたドアに顔面強打。またも奇声を発してこの世からフェイドアウトして行った。

芽吹は深く溜め息を吐いて机に戻った。

ここ最近、筑紫のシスコンぶりがおかしな方向へ暴走し始めているのである。


―例えば―


夕飯を食べ終え、リビングでテレビを見ながらくつろいでいると、そこへ筑紫が、ボクサーパンツ一丁にバスタオルを持って現れ、爽やかスマイルを芽吹に向けながら、

「妹よ、お兄ちゃんと一緒にお風呂に入っ…」

ゴスッ!

「ジャグジィ!!」

芽吹が筑紫の方を見る直前に筑紫は消えていた。

「あれ、今兄貴なんか言ってなかった?」

キッチンでは菜花が肩をゴリゴリ鳴らしていた。

この時は芽吹はあまり気にしていなかったが、それからというもの、筑紫は度々芽吹きに絡もうとしてくるようになった。

今朝もそうだった。芽吹がパジャマのまま朝食に降りてくると、芽吹を見て鼻息荒く言った。

「うん!さすが我が妹。パジャマ姿ご馳走様でした」

とか、

「芽吹ィ、俺の持ってるゲーム一緒にやってみないか?」

そう言って出して来たのは、筑紫曰く「ギャルゲー」というやつらしかった。しかし芽吹の目には、いかにもえっちぃパッケージに見えたため断った。一番ひどいのは、朝制服に着替えている最中に、

「芽吹ちゅあ~ん、今日の下着は何色~?」

である。複雑な思いで兄を心配する優しい芽吹である。



昼近くなり、キッチンからいい匂いがして来た頃、ベッドの上に置いてある携帯が鳴った。秋人からだ。芽吹は何かを思い付いた様子で電話に出る。「もしもし秋人、母さんの手料理お腹いっぱい食べていいから今から家に遊びに来ていいよ!秋人が家で遊ぶなんて久しぶりだし、遊ぶよね。ね。ヨシ決定!」

電話を掛けた側の秋人に一言も喋らせず、芽吹が一方的に喋って通話を切った。

携帯を耳に当てて春風家の玄関前に立つ秋人。

(あれぇ~、びっくりさせようと思って電話したのに…。あいつ一方的に切りやがったし)

玄関のチャイムが鳴ると、芽吹はとても嬉しそうに駆け下りて来て玄関を開ける。その様子に菜花は、

(クスッ、飼い主の帰りを待ってたわんちゃんみたい)

「あら芽吹ちゃんったら、ずいぶん嬉しそうね。秋人君でも来たの?」

わざと聞いてみる。

「え、あぁ、うん!」

嬉しそうに返事をする芽吹。本人は自分の感情に気付いていない様子。



日曜日の春風家は家族勢揃いである。更に秋人も加わっての昼食になった。


「お昼ご飯ご馳走になってしまってすいません。ハルが今すぐ遊びに来いって言うので」

秋人は少し苦笑しつつ説明する。

「あ、ほら、僕まだテスト勉強あるし、秋人がいてくれれば心強いかなぁって」

すると横から、

「なぜ秋人なんだぁ、お兄ちゃんじゃ心細いのかぁ~(泣)」

「うっ…、なんで泣き?」

少しゲンナリと筑紫を見やる芽吹。

「芽吹、秋人君がいるからって、すぐにゲームに逃げちゃダメよ。秋人君、芽吹ちゃんのしつけ、お願いね」

それに芽吹の方を見ながら返事をする秋人。その表情は明らかに遊ばせる気はないという表情だった。

(あれ、もしかして僕ボケツ掘っちゃった…?)


程よくお腹が落ち着いたところで、芽吹と秋人は二階へ上がっていった。

それをじっと見送る筑紫は、

「まさか、秋人のやつ、自分を家庭教師に見立てて、女子高生の芽吹に、禁断の設定を使うつもりでは…!あやつ、よくもぬけぬけと。芽吹の貞操が危ない。待っていろメブっ…ぶぇへっ!!」 今にも芽吹の部屋に突入しようとしていた暴走シスコンは、母菜花の延髄蹴りによって沈められたのだった。


数ヶ月ぶりに芽吹の部屋に入った秋人は複雑な心境になっていた。ほとんどは以前と特に変わらない。ただ、クローゼットの脇に掛けてある高校の女子制服と、部屋の匂いが、以前とは違った。女子独特の甘い匂いなのだろうか。たぶん芽吹自身は気付いていない匂いだろう。

秋人は正直ここ最近の芽吹のことを、以前のような感覚では見れていない。少なからずだが、異性として意識し始めてしまっている。自覚はあるのだ。だが当然、芽吹の精神が¨男¨であることは分かっている。でも…


無防備にベッドに寝転がる芽吹。窓から差し込む光に気持ち良さそうに、猫のように伸びをしている。それにより顔がほんのりピンク色に染まる。

(うわぁ~可愛いなぁ~…)

ふっと芽吹がこっちを向いた。

「ん?秋人今何か言った?」

「え、いぃや、何も」

(うっかり口に出てたか、あぶねぇ)

「よし!テスト勉強始めるか」

秋人は変な気を変えるために、そう言った。すると、

「えぇぇ、面倒くさぁ~い、先にゲームしよ~」

「俺が菜花さんに怒られるから先にテスト勉強だ」

「ふぁ~い」 だるそうに返事をする芽吹だった。


柊先生指導のもと、コツコツと問題を解いていく芽吹と、さらに復習を重ねる秋人。

少し集中を切らした秋人は、ふと芽吹を見詰める。所々悩みながらもノートにペンを走らせていた。ふと、芽吹も秋人を見る。

「何秋人?」

キョトンと、このふとした表情に秋人はドキッとした。

「あ…いや…、え…っと…」

(ヤバい、なんか言わないと変に思われる)

芽吹から目線を逸らし、なんとか口から出た質問は、

「トイレとか風呂って、どんな感じなんだ?」

(…!?)

秋人は自分で自分の耳を疑った。

(何聞いてんだ俺!?)


(いきなりなんて質問してくるんですか秋人さん!?)

芽吹は軽くテンパりながら精一杯の返答をした。

「い、いくら秋人でも、その質問にはノーコメントでお願いします。…今、秋人えっちぃこと想像してない?」

真っ赤になった顔を俯かせつつ、上目で秋人の様子を窺う。

「しぃぃしてないしてない!お前にそんなセクハラしないって!」

秋人が狼狽える仕草が珍しかったため、芽吹は少しからかってみることを思い付いた。

「僕最近、なんとなくだけど男子の視線分かってきた気がするんだ。そりゃあ僕ら高校生だし、え、えっちぃ話とか普通なんだろうけど…、秋人にそんな風に見られるのはちょっと…嫌」

最後は切なげに小声で喋ってみた。

すると秋人は何を言ってるのか分からないくらいにテンパり出した。これはさすがに可哀想だと、芽吹は無邪気に笑ってネタばらししてやった。

さすがの秋人もこれにはへそを曲げたが、珍しく秋人のテンパり姿が見られたと、嬉しそうな芽吹だった。




翌朝、春風家に、というか芽吹に事件が起きた。


お腹の痛みでトイレに起きた芽吹。なんだか頭も重いし、体もだるい。

(あぅ~お腹痛い~。だる~い、なんだろ風邪かなぁ?あぁ勉強のし過ぎかなぁ?)

芽吹はそう軽く考えていた。トイレに入るまでは。


「うぅ~、お腹痛いぃぃ~」

唸りながらもとりあえず用を済ませて拭く。毎度ながらこの動作ももう慣れた。慣れてしまっていることを、男だったかつての自分に謝りたくなる芽吹だった。

拭いて何気なくティッシュを見る。

「………………チ…ち…血…血ぃ!?」


キッチンで朝食の準備をしていた菜花。そこへ、プルプルと小刻みに震えながら青ざめた顔の芽吹がやって来た。

「ちょっ、芽吹どうしたのよ、なにがあったの!?」 これにはさすがの菜花も血相を変えた。

震える声をなんとか言葉にする芽吹。

「母さん、僕…もう、死んじゃう…うっ…えぐっ…」

「どうしたのよちょっと。何かあったの?ちゃんと言って!」

今にも泣き出しそうな芽吹を必死に諭す菜花。

「トイレで、お腹痛くて、そしたら、血が、ティッシュで、ティッシュに血が付いてて…」

そこまで言って芽吹は急に気絶してしまった。


程なくして風吹と筑紫が起きて来た。

「菜花さんおはよ~。あれ、芽吹き、何でここで寝てるんだ?」

「ソッとしといてあげて。芽吹ちゃん、生理が来たのよ。騒がないであげて」 風吹に小声で教える菜花。

「おぉ、そ、そうだな。良いパパは娘のデリケートゾーンには触れないのだ」

「アナタ、誤解招きそうな言い方はやめてね」

芽吹に気を使う両親とは反対に、シスコンパワー炸裂の問題児が。

「おいおいおいどうした芽吹、大丈夫かぁ!?…ヤバい、呼吸がない!」

「僕してるよ」

力なく反応するも、

「待ってろ。今お兄ちゃんが人工呼吸してっ…」

「アンタは早よ学校行きなさーい!」

菜花のローリングソバットが炸裂し、筑紫は空を飛んで登校していった。



芽吹は診察室で主治医の美空先生と対面していた。

小さく縮こまり、りんごのように顔を真っ赤にして下を向いて座っていた。芽吹がどうしてこうなっているのか。それは検査方法があまりに恥ずかしかったからなのである。

生理の状態を検査するため、当然大事な部分を診なければならない。男の子としての精神と、女の子としての体。診察は男性医師か、女性医師か。どちらにしても芽吹にとってはとんだ羞恥プレイだったのだ。


「芽吹君おめでとう!生理は順調ですよ。芽吹君は正真正銘の女の子です!」

「そ、そんなの嬉しくないです!僕は早く元に戻りたいんです!」

そう必死に訴える芽吹だが、

「それなんだが、治す方法も治る方法も、現時点では全く見当も付かないんだよ。すまないね」

謝りつつゆっくり席を立って、先生はどこかへ行ってしまった。 そこへ美人なナースさんが1人。

「何かのきっかけで元に戻れるかもしれないし、気長に待ちましょ?」

そう言って僕を励ましてくれた。

僕は少し気が和らいだから、気になっていたことをナースさんに質問してみた。

「¨生理¨って、何ですか?」

するとナースさんは、一瞬、マジで!?って顔をした後、クスッと笑ってからいろいろ教えてくれた。

えっちぃ話に免疫が無い芽吹には相当刺激が強かったことだろう。



診察室から出てきた芽吹はビックリした。まだ学校にいるはずの秋人がそこにいたからだ。

「秋人、あれなんでここにいるの。学校は?」

「テストはとりあえず終わったよ。お前の具合が、その…心配だったから、ホームルームすっ飛ばして来た」

「そんなに大したことなかったよ」

笑顔を向ける芽吹だったが、女体化が進み続けている事実に、内心ショックを受けていた。それでも、周りには平気な振りをしてみせる。

秋人はなにやら気まずそうに頭を掻きながら言った。

「菜花さんから聞いたよ。ス…その、…せ、生理…なんだって?」

(うわぁ、言うんじゃなかったぁ。自滅だぁ!)

芽吹の方を見ずにそう言った秋人の顔がみるみる真っ赤になって行く。 芽吹も同様に赤くなり、怒ったように勢い良く向きを変えると、母菜花の方へズンズン攻め寄っていった。

「ちょっと母さん、なんで秋人に喋っちゃうの。めっちゃ恥ずかしいデリケートなことでしょ。気まずくなるの分かるじゃん!?もぉ、なんで喋っちゃうの、秋人だって困ってるじゃん!」

そうまくし立てる芽吹に対し、母菜花は、

「学校で一番頼りになって、芽吹ちゃんの全部知ってるの秋人君だけでしょ?…芽吹ちゃんだって、秋人君のこと頼りにしてるんでしょ?」

そこまで言われて芽吹は静かになった。まだ顔は赤いが。


〈秋人サイド〉

今、俺はヤバい状況下にあった。真っ赤に染まったプリティフェイス。潤んだ大きな瞳でチラチラと俺を見る、その¨恥じらう乙女¨的仕草!

ハルは、今確かに女の子なんだ。生理がなによりの証。それを踏まえたうえで、俺は今、ハルに猛烈にときめいちまってる。クッソォー…可愛すぎるだろお前!!



恥じらいとときめきオーラを辺りに充満させている2人を遠目に、芽吹の両親、菜花と風吹は…

「芽吹ちゃんったら、益々女の子ねぇ~」

「そうだねぇ。…って菜花さん鼻血!?」

「平気よ。幸せ大出血サービスなんだから」

「いやいやいやいや、ダダ漏れだからコレ!!ちょっと看護婦さ~ん!」



その日の夕食は、芽吹のために、レバニラ、ホウレン草のごま和えなど、鉄分を意識したおかず出された。更に一人一合ずつ赤飯も出された。

事情を知らない兄筑紫は、

「レバニラうめぇ!ところでなんで赤飯?」

(ギクッ…兄貴にバレると面倒くさいんだよなぁ)

「安かったし、私が食べたいから買ってきたのよ」

する筑紫は、

「ふぅ~ん。なんだ、俺てっきり芽吹に¨アノ日¨でも来たのかと思ったぜ」

「!!」

芽吹が味噌汁を吹いてしまった。

「あれ、どうした?何、マジで生理なのか!?」

筑紫は悪気なく聞いたつもりだったのだが、

(兄貴ごめん!)

「モベァッ!!」

肘鉄が顎にクリーンヒットした。

筑紫はそのまま床に伸び、

「さぁ、これで厄介な虫はいなくなったわね。芽吹ちゃん生理デビューをお祝いしましょー!」

「こんなお祝い嫌だぁ。何生理デビューって!」

「あらダメ?」

「じゃあ、真・女の子デビュー?」

「ほぼ一緒じゃん!」



不本意ながらも、自然的に女子力が上がった芽吹であった。



「それじゃあこれからはナプキンとかが必要ね」 「マジですか…(汗)早く元に戻れ僕の体ぁ」





続く…

芽吹の女体化が本格的で進行。今後の芽吹ちゃんの心の変化にも注目です。

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