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2013年・2014年

だれもしらない救い

彼は一人だ

彼の周りは闇だ

深い闇 鋭い闇

切り裂かれた彼のからだ

這いつくばって

痛みが走る

無常で

埋められたように

泣き叫んでも闇

笑っても泣いても

誰からも認めてくれない

孤独 場に消える

金切り声で叫んで

苦しいと叫んで

つらい思いぶつけても

そこから抜け出せない

砂を噛むように

空を切るように

水を摑むように

ぼんやりと

自分の感覚だけを

存在の感覚だけを

確かめていく

この闇に輪郭を失わないように

消えていかないように

はるかかなたの窓

格子の嵌まった窓

そのむこうの闇だけを見て

いつまでも いつまでも

闇とたたかっていった

淡い意識ざわめいて

彼が疲れ果てて

もうすこしで

目が見えなくなり

耳が聞えなくなり

ひきちぎられて

溶けていって

だれからも感じられないほど

存在がなくなっていく刹那

置き去りの彼を

生きる気力のない彼を

みつけてくれた人がいた

からだをどうにかして

うごかして

彼は

格子の向こうに

手をふった

残された力をふりしぼって

僕はここにいるよ

僕はここにいるよ

小さな声を響かせて

手をふった

そうして

すぐに彼は息絶えた

それから

数秒が過ぎ

数分が過ぎ

数時間が過ぎ

数年が過ぎ

永い時間が過ぎたとき

その人は彼に

手をふりかえした

すると

その瞬間

ぱっと明るく

暗きはなくなって

青い空と

白い雲と

海と陸地と

太陽のある場所に

自由がある場所に

彼は解放されて

窓の格子が外されて

二人は出会った

二人は出会った

広い空間に

そこには

ただ

蝶が二匹とんでいた

なかよくとんでいた

そしてしあわせだった

ただいま

おかえりなさい

そんなあいさつをして

二人の蝶は

どこまでも

救いに消えていった

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