表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マーマンに愛された娘  作者: 海陽
皇国での暮らし
37/152

気持ちの傾き

皇子と親交があるのも、数人しかいない。身分からすればもっと居そうなものだが、それは彼自身望んでいない所為もある。


イグレーンは大勢の友人とわいわい騒がしく過ごすより、静かに過ごす方を好む。それが愛しい者と二人で共有出来るなら、彼にとっては至福の時となるのだ。


「愛している人に名前で呼んで欲しいと願うのは、論を()たない事ではありませんか」


キシッと寝台が軋んだのは、椅子から桜の側にイグレーンが腰を移したから。


「アルと呼んで下さい。イグレーンの名は皆に呼ばせていますが、この名は限られた者にしか呼名を許していません。貴女には、こちらで呼んで欲しいのです」


「え、そ、そんな……」


限られた者にしか呼ばせない名を呼んでも良いと言われ、恐れ多い気持ちと申し訳ないような嬉しい様な気持ちが半々。


「私も貴女を桜と呼ぶことにします。……少しでも距離を縮めたいのです。

本当なら寝る時も貴女を抱き寄せていたい。食事も何をするにも、この部屋に居る時は貴女の直ぐ近くに居たいのですから」


ストレートな物言いに、桜は思わず毛布を頭まで引き上げてしまった。



顔が熱くて堪らないのはどうしたら良いの?そんな心地良い声音で言われて、凄くドキドキして……。

まるで自分が自分じゃないみたい。



「さ、桜?」


そっと毛布を下に引っ張られるのを感じ、彼女は渾身の力で留めようとするも。


「どうしたのですか?……具合でも?」


結局、更に毛布を引っ張られ、ずるっと鼻頭近くまで下げられてしまった。


「……」


「……」


目から上だけを出したまま、イグレーンをちらっと見やった桜。だが直ぐ額まで毛布を戻してしまう。


「……ち、直球過ぎます……」


くぐもった声ではあるが、それを見聞きしたイグレーンは固まってしまった。



何て可愛いのだろう!



真っ赤に染まった頬も、その声も。その動作でさえ、桜本人も知らない、うぶな彼女の魅力を彼に示しただけである。



少しは、私を気にしてくれているのだと自惚れても良いのだろうか?

ああ、そうであったなら……これほど嬉しい事は無いのに!



早鐘の鼓動を必死に抑えつつ、イグレーンは桜の髪へと手を伸ばした。


ぴくっと反応は示したものの、彼女はされるがままに髪を撫でられている。


「桜。……私の事も、名前で呼んで下さい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ