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一人ぼっちになる

「もう来ないでくださいね」


 俺がゲートの近くのメイプルという町に行くことを告げると、アイレスはにこやかに俺を見送ってくれた。

 おかしいな、普通こういう場合って、私も連れてってとかなるんじゃないのか?

 俺は首をかしげながらメイプルに向かう街道を歩き始めた。




「GMコールに急かされないのも久しぶりだな」


 森を貫く街道を歩きながらそんなことをのんびりと考える。

 FQ17のGMは普通のMMOのGMにも増して多忙である。

 どれぐらい多忙かというと、昼ご飯も食べられないぐらい多忙である。

 どこぞの和○にも劣らないブラック職なのである。

 VRMMOには廃人も多いので夜も眠れず昼寝して仕事しなければならない。

 しかも基本的に仕事がクレーム処理なので精神的にもきつい。

 苦しいです。評価してください。


 GMの辛さを思い出しつつ久々の森林浴を楽しんでいると、街道の先から剣戟の音が聞こえてくる。

 これはいかにもなイベントフラグ。

 GM機能の隠蔽を発動し、音のする方へ小走りで向かう、完全に野次馬である。



 1分ほど走ると、剣戟の舞台が見えてきた。

 豪華な装飾が施された鳥車を囲んで、青い鎧と白銀の鎧を着た騎士団が争っている。

 青い鎧はラグナ王国の騎士団を、白銀の鎧はフレイブ共和国の騎士団を表している、ラグナ王国もフレイブ共和国も現世界3大国家の一つに数えられている大国家である。

 3大国家の残りの一つはリネ王国で、騎士団は黄金の鎧を着ている、ただしペガサス流星拳は使えない。

 それぞれの国家の特徴は、ラグナ王国は人間至上主義で国民のほぼ全てがヒューマン、フレイブ共和国は国民の7割が獣人で職業選択が自由、リネ王国は国民の3割がエルフやドワーフなどの亜人であり世界最古の王国であることだ。


なお、馬車ではなく鳥車なのは、この世界に馬がいないのでダチョウっぽい鳥に荷車をひかせているからである。

チョ○ボ? ああ、麻雀でフリテンなのにあがったりすることだよな、な?


鳥車の装飾にはRを○で囲んだマークがついている、ラグナ国の王家の紋章だ。

商標登録とか言ってはいけない、しかしある意味商標登録されている。

そして説明が非常に長い。



さて、俺の冒険はまだ始まったばかりだ。

そんな状況で始まったイベント、しかも王家の紋章。


「これは・・・姫救出イベント!?」


 FQ17本編にはそんなイベントは無いが、異世界チートトリップものを読み尽くしている俺に隙はなかった。

 あの馬車には、FQ17全キャラ人気投票第9位かつ俺の中での人気順位第5位であるラグナの姫様アコたんが乗っている、間違いない。

 え、俺の中でのアイレスの順位は何位だったのかって? いや、あいつはネタ枠での人気だし。

 アイレスへの投票コメントは”天界からゲートで降りて来た時の潰れ具合がたまらない”とか、”ゲートキーパーの職をグルヴェイグに奪われたときに見れる複雑そうな顔が良い”とかそんなのばかりである。

 ・・・もうちょっとぐらい優しくしてやればよかったか。


 さて、俺はアコたんのためという完全なる私利私欲で馬車側につくことに決める。

 しかしまだアコたん側、つまり青騎士団はあまりピンチになっていない。

 ここはピンチになるまでもう少し待ち、護衛がいなくなったところを見計らってアコたんだけを救いだそう。

 そうでもしなければ、アコたんとのめくるめく二人旅ができない。

 俺は腕組みをして青騎士団の数が減るのを待つ。

 相変わらずの下衆である。


 徐々に青騎士団が白銀騎士団に押され始める。

 騎士達は明らかな致命傷を負うと光となって消えていく。

 騎士ともなるとリサシテーションがかけられているのだろう。

 知らない人とはいえ目の前で人が死ぬのも気分が悪いし、復活するのはひと安心だ。

 あれ?人間でも使えるリサシテーションを”主神の加護です”とかドヤ顔で言っていた奴が天界にいたような・・・そんなわけないよな!


 青騎士団は鳥車を守ろうと奮戦するが、一人、また一人と光になっていく。

 青騎士も残りわずかだ、そろそろお姫様を救出にいこうか。

 俺は組んでいた腕をほどき、悲しそうな表情を作って告げる。


「アコたんに関わったことが君たちの不運だ、恨むなよ」


 白騎士団は突然聞こえてきた謎の声に狼狽する。

 青騎士達は狼狽する余裕もないのだろう。

 俺は白銀騎士団と残っている青騎士達をまとめて指定すると、こう言った。


「レベル1 デス!」


 白銀騎士団と青騎士達は光になった。

 この男、ド外道である。

 なお、言うまでもないがこの鬼畜スキルは当然GM専用である。



「これでよしっと、今行くぞアコたん!」


俺は隠蔽機能をオフにして意気揚々と鳥車の中のアコたんを迎えに行く。

鳥車の扉を開けながら、言い放つ。


「アコたん、君を、助けに来た!!」


鳥車の中には王冠を頭に載せたおっさんが呆然とした顔で座っていた。


「お呼びじゃねぇ!」


俺は思わず背負っていたGMソードでおっさんを袈裟斬りにする。

おっさんは光になった、俺は泣いた。



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