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戦乙女をいじめる

「なぜそこで言葉を止める、そもそもFQ17やらぷれいやーやら、分からんことだらけだぞ」


 アイレスが剣を突きつけたまま声を荒らげ言う。


 ここがFQ17ではなく異世界だとすると、死んだらもう蘇れないかもしれない。

 普通にVRMMOをやっていたときは怖くなかった剣が少し怖い。

 今やそれは、本当に命を刈る道具となったのだ。


 俺はそーっと両手を挙げ正直にお願いする。


「あー、怖いので、剣をしまってもらえますか?」


「だめだ、見たところ神級持ちでは無いようだし、ゲートキーパーである私でも見たことがない人物、怪しすぎる」


 神級とは天界の階級制度のことである、基本的には偉い順に数が小さい。

 主神であるオーディンが1級、一般人が20級と20階級に分かれている。

 ちなみにアイレスは6級であり、現世で会うことのできる天界人の中では最も階級が高い。

 更に言えば、アイレスは天界と現世を繋ぐゲートの管理も行っており、天界を訪問する現世の人間は必ずアイレスに会っているのだ。

 説明長過ぎィ!


「それなら仕方ないね。わかった、じゃあ敵意が無いことを証明しよう。」


 俺は手を下ろす。


「動くな!」


 アイレスが近付いて俺の目の前に剣を突きつける。

 俺は口許を歪め、彼女をまっすぐ見つめ、言った。


「ジムバインド!」




 アイレスは俺が言い終わる前に俺の首をはねようと剣を振りかぶるが、そこで剣の動きが止まる。


「くっ・・・動かん、貴様、何をした!」


 アイレスの顔が焦りに歪む。

 俺は彼女を無力化できたことに少しほっとしながら質問に答える。


「GM専用のスキルだよ。VRMMOのGMってさぁ、結構色々対応しなくちゃならんのよね。通報されたら即強制ログアウトさせると思ってる人もいるけどさ、前に町の入り口で一般人に自殺を見せつけるプレイした奴がでてさー、そいつを興奮状態のまま強制ログアウトさせたらVRとリアルの区別がつかなくなっちゃって・・・、それでこのGM専用の捕獲スキルが実装されたんだよ。」


 GMの隠蔽機能が生きていたことから、他の機能も生きていることはわかっていた。

 そして今、ジムバインドを使うことでも再確認できた。

それはつまり、俺が安全であり、この世界では無敵であることを意味していた。


ひと安心した俺は、異世界における第一村人と、更なるスキンシップをとることにした。

アイレスに近づき、手を顔に近づける。


「な、何を言っている、全然意味がわからないぞ、さ、触るな!」


彼女の言葉を無視し、ほっぺたを指でぷにぷにする、柔らかい。


「まあ、GM行動妨害罪ということで、バインドされたのは我慢してくれ。とりあえず言いたいのは、この状況で攻撃しないことこそが、俺が安全な人間である証明にならないか、ってこと」


アイレスはぐぬぬ、と言いそうな顔をするが、はぁとため息をつくと諦めた顔をした、


「わかった、私に対して害意が無いことは認めよう」


 思わず彼女の頭を撫でようとする。

 彼女はイヤイヤと顔を振りつつ言い放つ


「だが! 天界に滞在することは認められん!」



 この戦乙女め、あなたに全てを捧げますと言うまでいたぶってやろうか。

 暗黒面がちらりと顔をだす。

 どこからか天の声が聞こえてくる、やめて! R-15どころかR-18指定になっちゃう!

 天の声が俺の怒りを抑えてくれた、ここ天界なのに。


「おい、何を考えている」


 さて、全てを捧げさせるのは冗談として、アイレスを散々いじめてやれば、天界への滞在を認めさせることも可能だろう。

 しかし天界での滞在権なんて必要か?

 というかここが異世界なのはわかったけど何しようか。


「何故黙る、なにか言え!」


 まずは状況整理だ、俺はFQ17でのGM権限を持ったままこの異世界に来た。

 GM専用スキルを使えば無敵だし、大抵のことはできる。

 元の世界には帰りたいだろうか?

 帰れるに越したことはないが、こんな恵まれた能力を捨ててまで帰ろうとはあまり思わない。

 これほど精巧な世界だ、海外に行って帰って来れなくなったようなものだ。

 俺は俺の人生を楽しめばいいのだ。

 なに、やることは変わらない、女だ、彼女を作るのだ。

 いやせっかく無敵の力があるんだ、ハーレム・・・そう、ハーレムを作るのだ!

 つまり、FQ17の世界を楽しみつつ、帰れる手段はあっても困らないが今のところはあまり帰る予定は無い、といった所か。

 そういえば俺、GMのバイト中だった。

 無敵なのもGMやってるおかげだし、できる範囲でGMの仕事も続けよう。

 MPKとかBOTとか詐欺とか公序良俗に反する行為とか、色々取り締まろうか。


「いい加減、この体勢疲れてきたんだが、バインド解いてくれないか?」


 方針は決まった、さて天界の滞在権が必要かどうかだ。

 もし帰る手段を探すとなると、目が覚めたこの鈴蘭の草原は重要な場所だ、来れなくなるのは困る。

 また、GMの仕事を続けるということは天界での取り締まりも必要だ。

 それに、天界はFQ17の世界の3分の1を占める広大な世界だ、来れないとなるとこの世界を楽しみきれないし、天界にも可愛い女の子は沢山いるのだ。

 あと、この娘をいじめたい。


「あ、あの、聞いてま「方針は決まった!」」


 声が被る、アイレスは呆然とした顔をしている。

 俺が指をパチンと鳴らすと、アイレスのバインドが解ける。

 ジムバインドの効果解除を指パッチンに設定するとは、開発者の厨二心が偲ばれる。

 彼女は動くようになった腕を下ろしほっとした顔をする。

 俺はにっこりと笑う。


 そして二人の声がまた重なった


「ありがt「ティックル」」


ティックルとは、対象の身体中をくすぐるGMのお仕置きスキルである。


彼女が涙目で俺を睨みつつ、天界への滞在を許可したのはそれから5分後のことだった。

ちなジムバインドの効果、永続バインド効果、無詠唱、必中、状態異常耐性無視

本編にでてこないけど、ティックルはGMに対する暴言とか吐いた人へのお仕置き用スキルという設定。



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