雪
こんこん、と雪がふる12月。
今年最後の授業も終わり、私は学校からひとり、歩きだす。
周りでは級友たちの浮かれた声が聞こえる。
今日どこか遊びいこうよー、とか。
こないだ美味しいお店見つけたんだー、とか。
当然、私にはそんな話は降りかかってこない。
今、私に降るのは、白い雪だけだ。
首元のマフラーを巻き直し、白い息を少し吐く。
ひとりになるのは、昔から慣れっこだ。
元々、人付き合いは得意じゃないし、愛想もいい方じゃない。
おまけに口下手だから、正直、話をするのも億劫だ。
友達と呼べるのは、たくさんの本だけ。
文学少女を気取る訳じゃないけど、私は本が大好きだ。
そんな私には、毎年、冬の楽しみがひとつある。
それは、私の家の近くにあった。
「よかった……ちゃんとある」
雪を積み上げて、中を空洞にした、かまくらだ。
小さい頃から、何故か毎年、この辺りに必ずある。
私は身を屈めて、かまくらの中に入った。
ちょうど、私がふたり位は入れそうな広さだ。
ふぅ、と白い溜息をついて――鞄から、本を取りだした。
かまくらの中で、ひとりで本を読む。
私の、至福のひと時だ。
こんこん、と雪が降っている。
私は今日も、本を読む。
きっと、ずっと、そうしている。
「一文字物語」用に書き下ろした短編です。
今回は深い事を考えずに、ただ頭に浮かんだままを書いてみました。
雪に囲まれて本を読む。
なんとも儚げなシチュエーションです。
もしかしたら、読んでくださった方には、なにか伝わるかもしれませんね。
この作品が、ひとりでも多くの人に読まれますように……。