1-1 主人公は吸血鬼?
「は?…えっ……いゃ、ちょっと待て。…今……」
しょっぱなから間抜けな声を出す少年。
名は狭霧 夏維。
現在17才で本編の主人公となる(はずの)高2生である。
とりあえず、現在状況を大雑把に説明すると……。
まずは現在地。
とある某共学の高校。
2年5組のHR教室。
時間的には昼寝に最適な昼下がり。
ちょうどHRの時間である。
今日の話題はいよいよ1か月後にせまった文化祭のだしものをどうするか。
いろいろ出た結果。
最終的にお化け屋敷(定番)に決まり、メインの吸血鬼を誰がするか…を話し合っていると………満場一致で夏維に決定した。
その当の本人、夏維君は…というと、少々考えごとに耽っていて、話の中に入ってなかったご様子。
そこでさきほど、小柴 委津こと委員長が
「んじゃ、メインは夏維で決まりということで。」
その言葉に反応したのが、さっきの間抜けた夏維の言葉。
さらにこう説明しているうちに話は進んで……
「いや、だからさ、委員長、俺は吸血鬼なんかしないって。」
いや、まだこの話をしてたのね。
普段、夏維は滅多に決められたことに反論をしない。
だからはじめは夏維の、嫌としか言わない言い分を聞いていた委員長だけど、さすがにもう10分程。
ここまでとなると…かなりうんざりしているみたい。
「あ〜…お前の意見はわかったから。夏維。次の話に進むぞ。」
「わかったんなら変えてくれよ…。」
夏維は小さくボヤく。
あからさまに不満気な夏維の後ろから声がとんできた。
「夏維〜もぅ諦めろって。お前以上にこの役が似合うやつなんていねぇから。」
面白がって言う、その声の主は相模 慧。
夏維と仲のいいクラスメート。
そんな慧に対し、何かを訴えるような目で睨む夏維。
しかし、慧の言うことも最もなのだ。
身長175前後のスラっとした体型。
長い手足。
色素の薄い肩まで伸ばされた髪。
かっこいいと言われる部類に属する顔。
さらにかつて校内で最も黒スーツが似合う人に選ばれたことがあるという。
吸血鬼にはもってこいな人。
だが本当のところ、その容姿以上に吸血鬼に適していると思わせているのは、なんといっても、自然と漂わせるその魅惑的なオーラ。と謎めく存在感。
それが誰がどう考えても、吸血鬼は夏維だ。ということを決定づけている。
「そうよぉ〜。夏維君安心してぇ?大丈夫だからぁ。私がぁ、とぉってもステキなぁ、衣装をぉ、作ってぇあげるからぁ。」
慧の言葉に乗る……というか、明らかにそういうことじゃないだろっ。って突っ込みたくなるような発言を独特のあまちゃんボイスで言うのは朝比奈 麻央。
慧と同じく夏維の仲良しさん。
ついでにいっちゃうと、慧君の彼女だったり………。
マイペースに進んで行きます。