1-9 文化際―発生―
「ねぇ、いったいどういうことなのよ!?」
「こんなの詐欺じゃん!返しなさいよ、お金!!」
2−5の出し物“吸血鬼の屋敷”の受付。
そこに、10人くらいの女生徒が物凄い形相で迫っていた。
「夏維君がメインなんて嘘じゃん。」
「吸血鬼姿の夏維君が見られるって聞いたから来たのに!」
なぜか彼女たちは、口々にそのようなことを言う。
どうやら夏維が現れなかったことに腹を立てているらしい、夏維目当ての客。
受付番だった2人の生徒は混乱する。
おろおろしているところに委員長が来た。
「なにしてるんだ?この忙しい時に……」
「あ〜、委員長、大変。緊急事態。」
棒読みで言う受付君1号。
全く焦りが感じられない。
ただ、1号君の頭は混乱中。
「…はぁ?なんだよ、緊急事態って……」
「なぁぁあああ…委員長、大変大変!!夏維が消えた!」
落ち着きのない言動なのは受付君2号。
委員長の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「ちょっと小柴君、夏維君がメインだなんて嘘つかないでよ!」
さらに追撃をかけるように女生徒が言った。
状況把握をしかねている頭を無理に働かせて呟いた。
「…嘘をついた覚えはないんだが……」
―――さて、いったいどういうことなんだ?
夏維が現れないというのは有り得ないはずだ。
ちゃんと位置につくのを見た。
こちら側としては嘘をついているつもりはもうとうない。
100%夏維をウリとしているのに、それをデマで言うなんてこともしようはずないし。
もし、有り得るとしたら……
女生徒たたが単に見たことに気付かなかったのか。
または、夏維がサボったのか。のどちらかだな。
前者の方は恐らく有り得ない。
メインである夏維はそれなりにわかりやすいだろうし、実際かなりわかりやすい位置に配している。
それに…彼女たちのこの怒り様からして、これは選択肢から除けてもいい。
ということは、後者の方となる。
これは100%有り得ないとは言えない……な。
何せ夏維は、自分がメインであることを嫌がっていたのだから。
もしかすると誰も見ていないうちに抜けたという可能性が………。―――
はぁ。小さく溜め息をついてから委員長は言った。
「とりあえず、来てくれている客には申し訳ないが、一時中断しよう。お前はこのことを宣伝係へ連絡して、お前はここで事情説明を頼む。俺は今入っている客が出てき次第なかで調べてみる。」
てきぱきと1号君、2号君に指示をだすと、そのまま待機組にもその旨を告げる。
最終組が出てきてから間もなく、理由が判明した。