二人の女
国王の昭宗の世に咲いた女たちが存在した。
彼女たちの名前は悠久の歴史という名に埋もれてしまった。
だが、彼女たちの「生きた証明」は、古の都に聳え立つ宮殿に残されており、喜びや、悲しみ、憎しみ、栄光がそこには未だに生きている。
昭宗には、深い愛情で互いを想い合える「伴侶」の王妃朴氏という女性が傍らにおり、彼の朝議がなければお互いに庭を散策しては王妃とたわいない話をしては笑い合う。
二人は自然のなかで煌びやかに咲く花を愛で、国王ではなく夫としての柔らかな表情で王妃朴氏に微笑みをみせ、また、王妃も妻としての表情で微笑みを交わす。
昭宗は王妃朴氏のために四季折々の花々や庭を整備していた。
王妃と言っても、宮殿、取り分けて後宮は贅沢が許される「天井がない鳥籠」。
王妃は妻としての扱いを享受することが自然に、何も特別なことをしなくとも許される。
ただ、女官になると話は別である。
後宮に上がると、一生を一人の男性の「所有物」として生きなくてはならない。
一人の男性とは「国王」のことだ。
後宮に入るということは、女性たちは皆が国王の「もの」と見なされ、国王に忠誠を尽くさなくてはいけない。
厳しい主従関係という絶対的な身分もあるが、女官は「王の女」でもある。
王が女官を気に入れば、愛妾や側室に昇格をすることもある。
実際は、遠い夢のような話である。
女官から側室に上がり、国の宝とも言える「世継ぎ」を産んだ強運な女性も過去には何名かいたが、それはまさに運の強さである。
そして、王妃は国王の正室としての地位や権力を持ち後宮の管理を任せられる。
国の教えである儒教を体に染み込ませ、「良妻賢母」として後宮の主として女官や側室たちの見本にならなくてはいけない。
だが、何よりも、王妃は「世継ぎ」となる、男子を産むことが最大の役目である。
正当な血統を繋がなくてはいけない――。
王妃は常に世継ぎを出産することが錘のように圧し掛かる。
昭宗は王妃の役目の重さに朴氏が押しつぶされないように、と、できる限りに気が穏やかに過ごせるようにと心を尽くす。
王の深い愛情により、王妃朴氏は二人の王子を産むことができた。
王妃も王の深い愛に応えられたこたが、金を掘り当てた以上に嬉しく、幼子の王子たちを見つめる度に昭宗に感謝の気持ちが沸き上がる




